しかし一年の穢れを祓う行為はいくつかあり、各々意味が違うのでおさらいしておきましょう。
■煤払い(すすはらい)は年神様を迎える準備
歳徳神『安部晴明簠簋内傳圖解』(Wikipediaより)
「煤払い(すすはらい)」は「煤掃き(すすはき)」ともいわれ、12月13日に家屋の内外を大掃除することをいいます。
じゃあ大掃除と同じことじゃんと言われそうですが、掃除する意味がちゃんとあり、年神様(歳徳神ともいわれる)を家に迎え奉るための宗教的な行事なのです。
年神様は五穀豊穣を約束してくれる神様、または家を守ってくれる祖先の霊といわれています。そのため、煤払いは家の掃除をするというよりも神棚や仏壇を掃除する日なのです。
12月13日になると、ニュースで神社や東大寺などの巨大な仏像の埃を払う様子が流れますよね。穢れを祓うという行為は神道由来の行事ですが、歳徳神は陰陽道由来の神なので寺でも「煤払い」が行われるようになったというわけです。
神棚や仏壇を終わらせてしまえば、家の他の部分は大晦日までに掃除すればいいため、近年では「大掃除は大晦日までにすればいい」と認識されるようになってしまいました。
現代では神棚や仏壇がない家も多いと思います。その場合、来年歳神様がやってくる方角を掃除するといいようです(今年南南東の方角)。ちなみに歳徳神がやってくる方角は「恵方」といいます。近年は恵方巻きで認知度が高まりましたね。
ちなみに江戸城大奥では「御煤納御祝儀」の行事が行われたことから、江戸では大名屋敷から長屋まで一斉に煤払い。
大奥では煤払い終了後、御留守居役が「万々歳」などと唱え、ご祝儀として手ぬぐいや反物が配られました。商家では若い衆がかり出されて、煤払い終了後は酒や食べ物が振る舞われました。儀式というより、町中お祭りのような雰囲気だったようです。
煤払い終了後は、大奥でも町民でも、なぜか若い男性が女性たちに胴上げされました。大相撲の神事で、神様の代わりとなる行司を天に返す意味で胴上げが行われますが、逆に「掃除も終わったので、神様きてくださーい」という意味で、神様を迎える行為として発展したのでしょうか?
その名も「神送りの儀式」!なんと行司さんを投げちゃう、大相撲中継では見られない特別な儀式
特に若く美しい男性が好まれたようで、女性たちが嬉々として追っかける様子が微笑ましい。

「冬の宿 嘉例のすゝはき」(三代歌川豊国 画)
煤払い終了後は門松や注連縄、鏡餅を飾ります。門松は歳神様がやってくる目安となる物、注連縄は天照大神の岩戸に由来し、岩戸に注連縄を巻いて入れないようにしたものです。今では神聖な場所に邪気が入らないようにという意味で、家の中を守ってくれます。鏡餅は神様が家に滞在する松の内の間、依り代となる物です。
いつも大晦日に慌てて大掃除していたかたは、今年は13日までに終わらせて歳神様を迎える準備をしてはいかがでしょう。
■大晦日は大祓の日
ちなみに大晦日は大祓の日です。大祓は宮中や神社で年に二度おこなわれ、六月の大祓を夏越(なごし)の祓と呼び、十二月の大祓は年越の祓とも呼ばれます。
「大祓」は神道儀式の1つで、宮中で行われる天下万民の罪穢を祓う行事です。ただの「祓」は宮中や神社で日常的に行われていますが、1年の6月と12月の晦日(最終日のこと。新暦では6月30日と12月31日)に行われるものを「大祓」といいます。
古事記や日本書紀に見られる伊弉諾尊の禊祓(みそぎはらい)が起源とされており、文献の初見は、『古事記』の仲哀天皇の段。
以前ご紹介した古代の罪「天つ罪」「国つ罪」を浄化するため、短文の祓詞(はらえことば)ではなく長文の大祓詞が奏上されました。
日本で最初に罰を受けたのは日の光を奪ったスサノオ?串刺、糞戸、死膚断…古代の罪を紹介
起きてしまった災厄をリセットし国の安寧祈願する意味の他、誇大では“禁忌を犯してはならない”という法を広く知らしめて遵守させる側面があったと考えられています。
■「夏越の祓」には「茅の輪くぐり」

6月の晦日は「夏越の祓」といいます。夏越の祓と聞いてピンとこなくても、「茅の輪くぐり」はご存知ですよね。大祓詞を唱え、人形(人の形に切った白紙)などを用いて、身についた半年間の穢れを祓います。
参道の鳥居や境内に注連縄で結界を作り、茅で編んだ直径数メートルほどの輪を立て、その輪の中を、「水無月の夏越の祓する人は千歳の命のぶというなり」と唱えながら左回りから右回りとへと8の字を描いて計3回くぐります。
ちなみに京都では夏越祓に「水無月」という和菓子を食べます。氷をイメージした三角形で、白のういろう生地に悪霊払いの意味がある小豆を乗せた和菓子です。京都の地域以外でも、販売している和菓子屋があります。
大祓は神社にて「大祓式」が行われていれば参加することが出来ます。年中の内に穢れを祓い、心身共にすっきりとした気持ちで初詣に行ってみてはいかがでしょうか。

参考サイト:神社本庁、江戸歳時記
日本の文化と「今」をつなぐ - Japaaan