そんな中、公務員の知人が「役所は元号が基本だから、書類の書き直しとか多くてめんどくさい!」と不満の声を上げていました。
「いっそ西暦で統一すれば楽でいいのに……」とも言っていましたが、いやいや、元号は今や日本だけが継承している文化であり、歴史的な意義や重みもありますから、蔑ろにしては先人たちに申し訳がたちません。
それでも利便性を追求するなら、いっそ「皇紀(こうき)」はいかがでしょうか。
■とってもカンタン!西暦に660年プラスするだけ!
皇紀とは「神武天皇即位紀元(じんむてんのうそくいきげん)」とも言われ、その名が示す通り神倭伊波礼毘古命(かむやまといはれびこのみこと。後の神武天皇)が大和国橿原宮(現:奈良県橿原市)で即位された「辛酉の年(紀元前660年)」を「我が国の始まり」とする紀年法(きねんぽう。年の数え方)です。
竹内省吾『国史画帳大和櫻』「神武天皇御東征之図」昭和十1935年
辛酉年春正月 庚辰朔 天皇即帝位於橿原宮これなら西暦からの換算も簡単で、そのまま「西暦+660年」ですから、今年は2019+660=2679年となります。
【意訳】辛酉(かのとのとり)年の新春正月、庚辰(かのえのたつ)の日である一日(朔)に、(神武)天皇が橿原宮において帝位に即(つ)かれました。
※『日本書紀』卷第三、神武紀より。
これなら「日本が存続する限り、ずっと変わることなく使える」から便利ですよね。
皇紀メインで元号も併記すれば、利便性と文化の伝承が両立できると思うのですが、いかがでしょう。
■西暦だけじゃない!世界の色んな暦や文化
……と言ったところ「この国際化のご時世に、そんなガラパゴス的なこと言ってんじゃないよ」「もうグローバル社会なんだから、世界中、西暦で統一すればいいじゃんね」というツッコミが入りましたが、別に世界中で西暦が採用されている訳ではありません。

まずお隣の中国では、かつて我が国でも採用されていた「太陰太陽暦(たいいんたいようれき)」が使われていますし、イスラム圏では独自の「ヒジュラ暦(イスラム暦)」を使っているなど、この世界には多種多様な文化が活き活きと広がっているのです。
何も白人文化圏だけが世界の中心ではないのですから、我が国は我が国で独自の文化を保ち続けたっていい筈です。(※そうすべき、とまでは言いませんが、可能性として考える分には自由です)
■日本の「歴史のはじめ」紀元節が「建国記念の日」に
さて、皇紀について紹介したので、せっかくだから2月11日の「建国記念日」についてもふれておきましょう。
かつて神武天皇が即位されたのは紀元前660年の旧暦(太陰太陽暦)で1月1日とされ、それが新暦(現在使われている太陽暦)の2月11日に当たるので、明治六1873年に「紀元節(きげんせつ)」という祝日に定められました。
「紀(しるす⇒歴史)の元(はじめ)」となった節目なのでそう呼ばれましたが、現代では「建国記念の日」として昭和四十一1966年に制定されています。
■まとめ
以上、あれこれ言ってはみましたが、まぁ西暦もすっかり私たちの暮らしに定着していますし、どっちの文化も無理なく共存していければいいのではないでしょうか。

今年の2月11日で、私たちの日本はお陰様で2679歳。
今後とも末永く、みんなが幸せに暮らしていける我が国であることを願っています。
日本の文化と「今」をつなぐ - Japaaan