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四三はドイツで溌剌とスポーツを楽しむ女性たちを目の当たりにし、今までの考えを改め、「女子にもスポーツは必要だ」と考えるようになりました。
オリンピック終了時の意気消沈ぶりはどこへやら。帰国した四三はまたまた熊本に帰らず(今度はスヤを東京に留めて)、東京府立第二高等女学校(通称:竹早)に赴任して女子スポーツ教育に力を入れ始めます。
が、今までほとんど男子しかいない環境で過ごしてきた四三にとって、女子しかいない女学校、まさに櫻の園は、一筋縄ではいかないところでした。
新版引札見本帖 第1 国立国会図書館デジタルコレクション
■大正のJKたちの若者言葉でけなされ噂される四三
熱血教師然とした四三が、スポーツなどほとんどしない女子たちに受け入れられるはずもなく……
さんざん陰で噂され、笑われる始末。
「あぶさん(アブノーマルな人)」
「スコドン(少しどんくさい)」
「田紳(田舎紳士)」
「バウ(熱烈に愛し合う)」
現代では意味不明な略語や隠語のような流行言葉を使って笑う女子たち。
スコドンは同じく「のろい」という意味の愛媛方言なんかもありますが。
スポーツを勧める四三に対して、「ただでさえ“シャンナイ”と言われているのに、運動なんかしたらもっと馬鹿にされる」と言います。「シャンナイ」とは「シャン(美人)」が「ない」つまり「美人がいない」という意味だそう。彼女らもまた流行語を使ってけなされていたのです……。
■当時の若者言葉も下品だといわれた
このように飛び出した数々の流行語。放送中から話題になりました。
いつの時代も流行言葉や若者言葉はあるもので、明治・大正の時代ももちろん若い女子たちが好んで使う言葉がありました。それが「てよだわ言葉」です。
語尾に「~てよ」「~だわ」をつけるしゃべり方ですね。「よくってよ」とか「いやだわ」みたいに使います。「だわ」の方は今でも小説などの創作ではよく見かけますよね。
明治時代を舞台にした朝ドラ『あさが来た』でも、あさの娘・千代とその友人ののぶちゃんがちょっと使っていました。東京で流行ったものは関西でも流行っていたようです。
現代の感覚からするとお嬢様言葉。丁寧な言葉に聞こえますが、これが使われ始めた明治中期ごろは下品だ、と非難されていたそう。
■現代でも通じる当時の若者言葉・流行語
ドラマで登場した言葉は「なにそれ?」というものが多かったかもしれませんが、現代でも意味が通じる言葉もあります。
たとえば「駄弁る(だべる)」。これは「駄弁(くだらないおしゃべりの意)」を動詞化したもので、現代では使うことはあまりないかもしれませんが、通じますよね。
ほかに、「サボる」というのもこのころにできた言葉です。「サボタージュ」の動詞化です。これは今でも普通に使いますね。
また、「ハイカラ」というのは西洋風である、おしゃれである、という意味ですが、これの動詞化「ハイカる」なんて言葉もありました。ハイカラを気取る、ハイカラぶる、という意味。
ちなみに、ハイカラとはもともと「ハイカラ―(high collar)」で、丈の高い襟のことを言いました。カラーをつける、すなわち洋装の出で立ちの西洋帰り議員たちをからかって「ハイカラ―党」と呼んだのが始まりでした。
日本語のもともとあった言葉をつなげて省略する、日本語の名詞を動詞化させるほか、英語をもじったり日本語と組み合わせたりして新しい言葉を作る。現代人とあまり変わりませんね。
「ボリュームリッヒ」(英語のvolumeとドイツ語のlichを組み合わせて形容詞化した言葉)なんていう外来語同士組み合わせもありました。
ちなみに、昭和25年ごろになると「とんでもハップン」なんてルー語のような流行語も生まれます。「とんでもない」と英語の「ハップン(happen)」の組み合わせで、「とんでもない」よりも強く否定する感じで使われました。
さて、四三の努力、というより下手に出て頼み込んだことがきっかけで、女学生たちもスポーツの楽しさに気づきはじめた21話。来週からもまた新たな大正JK語が飛び出すのでしょうか?
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