シリーズ連載中の「俯瞰して見る日本」。最後となる第7回は、医療関連を取り上げる。
まずは、平均余命。2015年度の男性トップは滋賀県の81.78歳。女性は長野県と岡山県の87.67歳。全国平均は男性80.75歳、女性86.99歳だから、男女ともにトップは全国平均を1歳程度上回っている。
全国平均を上回っているのは、男性では23位の島根県から上位、女性では27位の三重県から上位なので、男女とも全国平均はほぼ中央値といえそうだ。ただ、男女とも最下位の青森県は男性が唯一78歳台、女性が唯一85歳台と突出して年齢が低くなっている。
上位10には滋賀県、長野県、京都府、福井県、熊本県、広島県の6府県が、下位10には青森県、秋田県、和歌山県、栃木県、福島県、大阪府の6府県が男女ともに入っており、長寿県と非長寿県がはっきりと表れている。(表1、2)
それでは、医療体制はどうだろうか。
2020年度の人口10万人あたりの一般病院数を見ると、高知県が16.1カ所でトップ。最下位は神奈川県の3.1カ所となっている。上位10では6位の佐賀県までが10を上回っており、全国平均の5.7の約2倍の病院数があることになる。
病院数の多さは病床数の多さにもつながっている。
2020年度の人口10万人当たりの一般病院の病床数を見ると、トップは高知県の2052.6床。最下位は神奈川県の676.9床となっており、一般病院数と同じだ。高知県は全国平均の1130.8床の倍近い病床があることになる。
病院数と病床数の関係を見ると、上位には高知県、徳島県、鹿児島県、佐賀県、熊本県、北海道、長崎県の7道県が両方の上位10に入っている。一方、下位には神奈川県、滋賀県、静岡県、埼玉県、千葉県、東京都、岐阜県、栃木県の9都県が両方に入っており、病院数と病床数には強い関連性がある。(表4)
特徴的なのは、上位に入っているのが九州・四国地方が多いこと。九州・四国地方は過疎化の進んでいる県が多い。一方、下位に入っているのは、東京都と近県、愛知県など大都市を抱え、人口数の多い都県が多いことだ。
医師&看護師は「奇妙な逆転現象」...医師数のトップは神奈川県、最下位は山口県 看護師数のトップは栃木県、最下位は高知県さて、病院数と病床数が多ければ、医師、看護師といった医療関係者も多いと思うところだが、ここで奇妙な逆転現象が起こる。
2020年度の100病床当たりの一般病院常勤医師数を見ると、トップは神奈川県の20.1人。
2020年度の100病床当たりの一般病院正・准看護師数では、トップは栃木県の87.0人となっている。栃木県は唯一全国で20人を超えている。最下位は高知県の62.3人だ。全国平均は70.8人で、平均を超えているのは22位の京都府までだ。特に病院数と病床数でトップだった高知県が医師数では下位6位、看護師数では下位1位となっている。(表6)
医師数と看護師数では、上位10に神奈川県、愛知県、栃木県、滋賀県、沖縄県、島根県の5県が両方に入っている。下位10には山口県、北海道、鹿児島県、岩手県、高知県、福島県の6道県が両方に入っている。
つまり、病院数、病床数の上位は、医師数、看護師数では下位に入るという逆転現象が起きているのだ。
そこで、病院数と医師数の関係を見ると、病院数で上位10に入りながら、医師数では下位10に入っているのは、鹿児島県、大分県、宮崎県、佐賀県、熊本兼、北海道の6道県に上る。
この現象を人口数の多い都県の病院・病床不足と捉えるのか、地方の医師・看護師不足と捉えるのが正解なのかは判然としない。
◆連載で取り上げた35項目のランキング...東京都はトップが15項目、秋田県は最下位が5項目
さて、これまで7回にわたる連載「俯瞰して見る日本」で、日本の姿を見てきた。
35項目のランキングを取り上げたが、そのうち15項目で東京都が1位に入っていた。最も最下位が多かったのは秋田県の5項目だった。
日本は東京都を中心とした大都市への人口集中と地方における過疎化の進展が、さまざまな問題を引き起こしている。この連載が、今回取り上げた基本的な項目だけではなく、居住する都道府県・地域の現状と抱える問題に関心を持つきっかけになればと願っている。

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