石油元売り大手、ENEOSホールディングス(HD)の株価が2023年5月11日の東京株式市場で一時、前日終値比26円60銭(5.5%)高の507円まで上昇し、年初来高値を更新した。
11日午後1時に100%子会社のJX金属の株式を上場する準備を始めることを発表。
ENEOSHDにおけるJX金属の位置づけについて、確認しておこう。
日本の石油元売り業界はガソリン需要の減退に伴って再編に次ぐ再編の末、今ではENEOSHD、出光興産、コスモエネルギーホールディングス(HD)の3社に集約されている。
ENEOSHDは経営統合を繰り返して今の姿があるが、大元は「日石」として知られた日本石油だ。三菱石油を吸収して新日本石油(新日石)になったのち、2010年に新日鉱ホールディングス(HD)と経営統合して「JXホールディングス(HD)」となり、さらにその後、東燃ゼネラル石油も統合するなどして2020年にENEOSHDとなった。
新日石と統合した新日鉱HDの源流は日鉱金属(現JX金属)で、石油事業が主力のジャパンエナジーとが経営統合して2002年に新日鉱HDとなり、新日石と統合した。
日鉱金属は、1905年の日立鉱山開山に端を発する歴史ある企業だ。銅など非鉄金属資源と先端素材を供給してきた日本の産業史そのものとも言えるだろうか。
半導体回路の形成に使う「金属薄膜材料」に強みも、銅の市況で業績が変動ENEOSHD傘下のJX金属となった現在でも、銅鉱山開発や銅関連製品の生産を行う。そのほか、半導体回路の形成に使う金属薄膜材料は世界シェア6割を握るとされ、先端素材に強みを持つ。
ENEOSHDの2023年3月期連結決算において、JX金属は売上高の11%程度、営業利益は24%程度を占める。
ENEOSHDとしては、金属事業を生かして成長する道を探ってきた。
だが、銅価格の市況に業績が左右される金属事業を抱えたままでは、主力のエネルギー事業への投資も進めにくいと判断したとみられる。
JX金属を分離して上場するが、持ち分法適用会社への移行を目指す。上場で得た資金は再生可能エネルギーなどの育成・強化に振り向ける方針だ。
野村証券は一連の発表を受けたリポートで「事業の特性に合わせた自律型経営を行おうとしている。資本効率を高めようとしている意志がみられ、印象はポジティブである」と記した。(ジャーナリスト 済田経夫)

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