ダスキンは、9月15日の「敬老の日」にちなんで、20代~50代1000人を対象に、介護と仕事の両立に関する実態調査を行い、その結果を2025年8月25日に発表した。

あわせて、介護に対するイメージや備えの状況を定点的に把握するため、60代~80代の親世代1000人および20代~50代の子世代1000人を対象とする調査も実施し、その結果の発表もあった。

いずれの調査結果も、「ダスキン ヘルスレント『介護白書2025』」としてまとめられた。

仕事と介護の「両立で悩んだこと」、「精神的に追い詰められる」が48.3%

経済産業省によると、「日本は高齢化の進行に伴い、仕事をしながら家族の介護に従事する数が増加。介護離職者は毎年約10万人で、2030年には家族介護者のうち約4割(約318万人)が仕事をしながら介護をする見込み」と報告されている(経済産業省 ヘルスケア産業課「経済産業省における介護分野の取組について」より)。

そうしたなか今回の調査では、介護未経験者に、「将来家族の介護が必要になった場合、仕事との両立について」を聞いたところ、「両立できるか不安に感じる」が85.8%(男性80.3%、女性91.5%)、「社会にもっと支援や理解が必要だと感じる」が85.1%(男性80.5%、女性89.9%)、「働き方を変えざるを得ないと思う」が83.7%(男性79.8%、女性87.7%)といった結果となり、男性よりも女性の方が不安に感じる割合が高かった。

「仕事と介護が両立できるか不安に感じる」と答えた721人に理由を聞くと、「仕事とのバランスの取り方にイメージが持てない」52.0%、「介護にどれくらいの時間・負担がかかるか想像しづらい」50.2%が多く、次いで「介護制度や支援の情報がまだ十分に理解できていない」38.4%、「家族と介護をどのように分担するか話し合えていない」35.1%、「介護に関する備えや計画を始められていない」35.0%が挙がった。

一方、仕事と介護の両立をしたことがないという799人に、両立すると仮定して「仕事と介護、両立するときの不安の割合」を聞いたところ、「仕事に不安」を感じる人は45.5%、「介護に不安」を感じる人は54.5%となり、仕事よりも介護に対する不安の方が多い傾向となった。

仕事と介護の両立を経験した151人に、「仕事と介護の両立で悩んだこと」を聞くと、最多は「精神的に追い詰められることがある」で48.3%。次いで、「介護と仕事の両立が時間的に難しい」「自分の休息や趣味の時間が取れない」がともに45.0%で上位に挙がった。

アンガーマネジメント、柔軟性、タイムマネジメントもポイントに

また、仕事と介護の両立を経験した130人に、仕事で役立つスキルは仕事と介護の両立に役立つかと聞くと、72.3%が役立つ(「とてもそう思う」と「そう思う」の合計)と回答した。

介護経験のある160人に、仕事で役立つスキル、介護で役立つスキルについて16の選択肢の中から、それぞれ5つ選んでもらった。その結果、仕事で役立つスキルは「状況に応じて臨機応変に対応する力(柔軟性)」40.0%や、「限られた時間の中でのやりくりする力(タイムマネジメント)」31.3%が上位に。一方、介護で役立つスキルは「状況に応じた言い方・伝え方(コミュニケーション力)」28.8%や、「相手の気持ちをくみ取る力(共感力)」28.1%が上位に挙がった。

それぞれのトップ10を見比べると、「コミュニケーション力」(仕事4位/介護1位)や「共感力」(仕事5位/介護2位)は、仕事と介護の両方に役立つスキルといえそうだ。

NPO法人となりのかいご・代表理事の川内潤さんは「介護のスキルというと、身体的なケアへのスキルが求められると思われがちですが、そうではなく、皆さんがすでにお持ちの、普段の仕事で使っているコミュニケーション力や共感力、そういうものが役に立ちます」と説明する。

さらに川内さんは、普段の仕事と照らし合わせ、「介護も仕事と同様、いろいろな人たちとチームになって推進していくわけですが、ケアマネジャーさんや介護士さんなど介護のプロの方々とどうコミュニケーションをとり、どう共感していくかが重要」だという。そのうえで、次のようなアドバイスもおくった。

「仕事と介護の両立に役立つスキルを挙げるとしたら、私は、感情をコントロールするアンガーマネジメント、臨機応変に対応する柔軟性、限られた時間の中でやりくりするタイムマネジメントは重要だと思います」

調査は2025年6月12日と13日にインターネットで行われた。20代~50代の有職者で男女1000人を対象とした。なお、同時に行われた定点調査では、親世代=自身の年齢が60代~80代で別居の子どもがいる男女1000人(介護経験あり500人・なし500人)/子世代=自身の年齢が20代~50代で60代~80代の別居する親がいる男女1000人(介護経験あり500人・なし500人)を対象とした。

編集部おすすめ