「バラムツ」は英名を「Oilfish(オイルフィッシュ)」と言い、この魚が大量の脂質を含んでいる事に由来しています。筋肉中の23パーセントが脂質で、これはトロに匹敵する比率です。つまり、全身トロの魚と言うことになります。インターネットで調べましたが、この魚を食べた人の感想で、「まずい」というものは一件も見つけられませんでした。「トロよりうまい」「売っていないので釣ってでも食べたい」など、絶賛の嵐です。
韓国では2007年まで「白マグロ」と銘打って流通しており、日本でも1970年に食品衛生法で禁止されるまでは練り物に混ぜて使っていました。中国でも「タラ」と偽称し、かなりの数が出回っているようです。
「毒物」だらけの世の中で、バラムツを口にすることは問題なのかしかし、実はこの魚の23パーセントの脂質のうち、9割以上が「ワックスエステル」という特殊な脂質なのです。
また、一部ではバラムツを多量に食べた人が昏睡状態になり、死亡した例もあるそうです。しかし、誤解を恐れずに言うと、どんなものでも大量に摂取すれば死亡することもあり得ます。
個人差はありますが、醤油もウイスキーも1リットルほど飲めば生命に危険を及ぼします。食塩もたった200グラムで致死量、コーヒーも70杯飲めば、カフェインで死亡する可能性が出てきます。こんな「毒物」だらけの世の中で、食べられている国もあるバラムツの小片を口にしたところで、問題があると言えるのでしょうか。
食品衛生課の指導で教育現場が委縮してしまうことへの危惧また、授業を行った講師はその道の専門家で、バラムツの危険性について詳しく生徒に話をした上、湯通しして油を抜き、親指の先ほどの大きさにしたものを任意で食べさせたと聞きます。この行為のどこに問題があるのか、私には理解できません。仮にこれが危険だと判断されるなら、他にも食べてはいけない物が無数にあります。
今回の騒動の発端は、この専門学校でのバラムツ試食授業の情報が、どういうわけか市食品衛生課に流れた、ということによるものです。
一方、この問題の影響でおそらく「バラムツ」のネット検索数はアップし、「いつかバラムツを口にしよう」と決心した人の数が相当数存在すると思われます。結果、「食品衛生課」の趣旨とは真逆の結果に向かうことになるかもしれません。
(北川 実/理科講師)