歩くだけで疲労が消える──スタンフォード大学が解明した"疲れ...の画像はこちら >>

朝、デスクに座った瞬間から体が重い。昼を過ぎると頭がぼんやりし、会議では集中が続かない。
帰宅しても休んだ気がせず、翌朝また同じ疲れを抱えたまま出勤する。そんな日常に心当たりはありませんか。もし「気合が足りない」と自分を責めてきたのなら、その必要はありません。スタンフォード大学の最新研究が、疲労は気持ちの問題ではなく、体の奥で確かに起きている現象だと示したからです。

強い疲労感が長く続く人々の脳を詳しく調べたところ、炎症や神経の働きに異常が見られました。つまり「怠けているから疲れる」のではなく、脳や体の仕組みに基づいたサインなのです。これは、日々忙しく働くビジネスマンにとっても同じこと。疲労は意思で振り払えるものではなく、構造的に起こる現実です。

では、その疲労をどうほどけばいいのか。答えのひとつが「歩くこと」です。仕事で座りっぱなしの体を軽く動かすだけで、血流がよくなり、酸素がめぐり、頭の重さが抜けていきます。ハーバード大学の調査では、歩行が集中力を戻し、気分を前向きに整えることが確認されています。

会議続きで頭が回らなくなったとき、外に出て数分歩くだけで視界が晴れる──そんな経験をしたことがある人は多いはずです。

歩行は筋肉や関節にも作用します。一定のリズムで体を動かすことで硬さが取れ、全身に血がめぐります。これにより再びエネルギーが供給され、だるさが軽くなります。さらに歩行はストレスホルモンを減らし、気持ちの落ち込みをやわらげます。「疲れは体だけでなく心にも影響する」──その両方に同時に働きかけるのが歩くことなのです。

免疫力の面でも歩行は効果的です。1日2数分、週に5回以上歩いていた人は、風邪で休む回数が大幅に減り、かかっても軽く短期間で回復したと報告されています。疲労で落ちた防御力を底上げし、疲労を遠ざけるのも歩行の力です。「疲れているから動かない」ではなく、「疲労をほどくために歩く」ことが理にかなっています。

通勤で一駅分歩く、昼休みに外に出る、夜に少し散歩する──それだけで体は変わります。歩行は特別な道具もお金も要らず、日常に組み込むことができます。

小さな積み重ねが疲労をためない体につながるのです。

スタンフォード大学の研究は「疲労は気持ちの問題ではない」と証明しました。そしてハーバード大学の調査は「歩くことで疲労は回復する」と裏付けています。つまり、いま感じているその疲れも、心の弱さではなく体のサインです。そのサインに気づいたら、机にしがみつくのではなく、まず一歩外に踏み出してみる。その一歩が、あなた自身の疲労をほどいていくのです。

参考文献
Stanford Medicine: Research Participants Wanted(慢性疲労に関する研究)
Harvard Health Publishing: 5 surprising benefits of walking

(上野 由理/美脚専門家)

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