では、無免許教員の事例において、どのような刑罰が用意されているのでしょうか。このような事例では、教職員免許法違反での罰則と、公文書偽造罪の罰則の適用が問題となります。
まず、教職員免許法違反での罰則について見ていきます。同法第3条1項には、「教育職員は、この法律により授与する各相当の免許状を有する者でなければならない」と規定されています。同法第22条1項では、「第3条の規定に違反して、相当の免許状を有しない者を教育職員に任命し、または雇用した場合には、その違反行為をした者は、30万円以下の罰金に処する」として、無免許教員を故意で教育職員に任命雇用した者に罰金刑が予定されています。また、同法22条2項では、「第3条の規定に違反して、相当の免許状を有しないにもかかわらず教育職員となった者も前項と同様とする」として、無免許教員に対して30万円以下の罰金刑が予定されています。
本事例では、無免許教員は15年の長きにあたり、無免許で教育職員となっていたという、悪質かつ影響の大きいものなので、無免許教員に対し同法22条2項の刑罰を受けるべき事案であるといえます。なお、任命した者の刑罰については、無免許であると知っていて任命雇用を行った場合には、同法22条1項の問題になりますが、過失であった場合には、同法では処罰されません。
本事例では、有印公文書偽造罪と偽造公文書行使罪の可能性も次に、公文書偽造罪の点について見ていきます。本事例では、有印公文書偽造罪(刑法155条1項)と偽造公文書行使罪(刑法158条1項)が問題となります。有印公文書偽造罪は、行使の目的で、公務所・公務員の印章や署名を使用し(または偽造した公務所・公務員の印章や署名を使用して)、公務員または公務所の作成すべき文書を偽造した場合に適用される罪で、1年以上10年以下の懲役刑が定められています。
未発達の段階の生徒に対する教育の重大性を考えると、事件が与える影響は大きいものです。厳正な捜査および司法での対応が望まれるところです。