「5月の連休で実家に帰ったとき、75歳の父が『物忘れが激しいんだ』という話になったんです。その流れで、『だったら銀行の通帳の置き場所、教えておいてよ! もしものときに困るから』と私が言ったら、父は『なんだ、金の話に来たのか!』と激高して……。
「元気が出るお金の相談所」所長でマネーセラピストの安田まゆみさんは、次のように話す。
「自分の“老い”を自覚することが大きなストレスなのに、子の世代から単刀直入に切り出されたら、親世代は警戒して態度は硬化するばかり。逆効果でしかありません」
これまでに多くの「親子間の財産トラブル」を見てきた安田さんによると、トラブルになりがちな親子の典型があるのだという。
「ほとんどの場合、『親の状況を把握できていない』んです。その親の状況とは『財産、健康、気持ち』の3つです。そのうち、子の世代がいちばん見落としがちなのが親の『気持ち』。逆に言えば、『気持ち』を大切にしてあげれば、『財産』の話もずいぶんとしやすくなるはずです」
親と顔を合わせるチャンスのお盆に、「お金の話を、親を怒らせず、悲しませずに切り出すコツ」を、安田さんに教えてもらった。
■ほめることから話す
では、冒頭の50歳主婦の場合、どう話せばよかったのだろうか?
「まずは気持ちを和らげること。そこで、ほめることから会話を始めてみましょう。『でも、75歳になってもお母さんの誕生日プレゼントは忘れないし、素敵なお父さんだよ』というふうに、なにがどう素晴らしいのか、すごいのか、具体的に言ってあげると安心感を得られます」
つまり、子に「理解されている」ことで親の気持ちはほぐれ、お金の話も切り出しやすくなるという。
■質問形式にする
「冒頭の主婦の『通帳の置き場所、教えてよ!』という言い方は直接すぎます。でも、いざというときのために、通帳の置き場所くらいは把握しておきたいもの。
円滑なやり取りのため、質問する習慣を作っておくといい。
「『これだけはやっておきたいことってある?』『今度の休みに行きたいところは?』などQ&Aを習慣づけましょう」