中国での発生から5カ月が経過したものの、まだまだ新型コロナウイルスの正体はハッキリとわかってはいない。高熱など一般的に報じられている症状がない、いわゆる無症状感染者も多い。
抗体検査を受け、陽性だった30代の男性はこう明かす。
「風邪のような症状は一切ありませんでした。ただ、舌が痛い、舌の周りがピリピリするといった異変はありました。1週間で治りましたが、熱も出なかったのに感染していたので驚きました」
NPO法人・医療ガバナンス研究所の上昌広理事長は、症状の多様さについてこう語る。
「断定的なことは言えませんが、コロナウイルスが変異しており、ウイルスの型によって症状が異なる可能性もあります」
前出の筋野院長が、特に注意すべきポイントを教えてくれた。
「基礎疾患のある人だと、発症から2日目くらいで急に悪化することもありますが、基礎疾患のない人が10日目前後に急変するケースがあるのです」
実はこの現象は、最近の米紙『ワシントン・ポスト』でも、《発症10日前後に突然重篤化「2週目クラッシュ」の謎》として報じられている。筋野院長は続ける。
「重篤化の理由は正直、わかりませんが、いちばん多く見られるのは、急に肺炎が進むというケース。初期の診断では肺炎の症状はなかったのに、1~2日で肺炎が急激に進行していることがあります。たとえば、最初にレントゲンやCTを撮った際は、左肺の下側にわずかな影があっただけなのに、翌日には両肺に広がっていたということがあったんです。これは細菌性の肺炎ではあまりないこと。普通は片肺だけなのにコロナは両肺に一挙に広がってしまうから、いきなり悪化して重篤化してしまうことがあるんです」
熱の出方にも特徴があるという。
「最初から高熱が出る方もいますが、熱が一度下がって落ち着いた後、再び上がる人もいます。最初に38度で、3~4日で37度台に下がり、6~7日目に39度台まで上がった例が。これも理由はわかっていませんが、2度目の発熱のほうが高い傾向があります」
米国では川崎病に似た症状も見られ、血栓も症状に挙げられている。重篤になると退院するまで長期間かかると嘆くのは、コロナ感染者を受け入れる関西地方の大学病院の現役看護師だ。
「1~2カ月は間違いなく入院することになります。人工呼吸器をつけた方は、肺に多大なる負担がかかってしまいますから、PCR検査が陰性になってもしばらく呼吸器を外せないことも多いです。重篤患者さんは、やはり60歳以上の高齢者が多いですね。女性よりも男性が多く、糖尿病などの既往歴のある方が、どうしても重篤化しやすいです。とはいえ、何も疾患がない方でもいきなり重篤化するのが、コロナの怖いところです。
最近では、既往歴のない20代の女性が重篤化したケースがありました。人工呼吸器をつけて経過が良好となり、PCR検査も2回陰性で一般病棟へ移ったのですが、直後に容体が急変。再びICUに戻ってしまいました。
前出の筋野院長は、コロナに感染した軽症者で自宅療養する人に、必ずこう伝えているという。
「『最初の10日目くらいまでは特に注意してください』と念を押しています。10日目以降はそう悪化しないので、『それまで頑張りましょう』と励ましているんです」
前出の上理事長も、解除後こそ警戒すべきだと強調する。
「第2波を防ぐことは難しいでしょうね。いままでのように継続して個人個人が気をつける生活は大切です。検査数も徹底的に増やすことが今後、重要だと思います」
“コロナ前の日常”に戻りたい気持ちは皆同じだが、緩み切って感染爆発を引き起こさないよう、今こそ細心の注意を払いたい。
「女性自身」2020年6月2日号 掲載