「飲食店で感染しやすい最大の理由は、ほかの場所と違ってマスクを外さないといけない環境だからです。しかも、緊急事態宣言が解除され、飲食店の営業時間が延ばされました。

マスクなしで過ごす時間が延びれば、感染リスクも当然、高まります」

そう警鐘を鳴らすのは、感染症専門医の「のぞみクリニック」筋野恵介院長だ。自粛解除で専門家が憂慮するのは、なんといっても「飲食店でのクラスター」。

実際、日本全国で飲食店での感染報告が相次いでいる。ファストフード店やカフェチェーン店、居酒屋、パブなど合計46店舗にのぼる。

「大多数は従業員が感染したと報告したもので客の集団感染が起こったのは宮城県内のパブでした。ただ、飲食店が正式に報告する以外に、飲食店で友人・知人との飲食を通じての感染事例は相当数あります」(全国紙記者)

日本フードサービス協会は5月14日、「外食業の事業継続のためのガイドライン」を作成している。常務理事・石井滋氏はこう語る。

「政府からの要請で、われわれと一般社団法人全国生活衛生同業組合中央会が共同で作成しました。個人経営の店などでも実践できるガイドラインを目指していますが、強制力はなく、各店が可能な限り創意工夫をして感染予防をするということになります」

ガイドラインには数々の具体策が提案されている。たとえば――。

《テーブルは、飛沫感染予防のためにパーティションで区切るか、できるだけ2m(最低1m)以上の間隔を空けて横並びで座れるように配置を工夫し、カウンター席は密着しないように適度なスペースを空ける》
《卓上には原則として調味料・冷水ポット等を置かないようにするが、撤去が難しい場合は、お客様が入れ替わる都度、アルコール消毒薬等で清掃や用具の交換を行う》
《ビュッフェやサラダバー及びドリンクバーは利用者の飛沫がかからないように食品・ドリンクを保護する(カバーを設置するまたは従業員があらかじめ又はその場で小分けする、客席と料理提供空間が近い場合は適度に仕切る)。トング等は頻繁に消毒もしくは交換するか、または手袋の着用を促す》

このガイドラインと、専門家による提言を「命を守る」外食ルールとして10項目にまとめた。

【1】食事中以外はマスクを着用

ガイドラインには店が利用客に《店舗入口及び店内に、食事中以外はマスクの着用をお願いする旨掲示する》と記されている。

「お客さんにお願いしたいのは、健康管理していただきたいということ。発熱があったり、体調が悪いときは無理して来店しないでいただきたいです。来店後は、設置されている除菌スプレーをしたり、手洗いをしてください」(石井さん)

【2】なるべく近寄らないで座る
【3】同じ皿を箸でつつかない
【4】グラスやおちょこの回し飲みは控える

前出・筋野院長は言う。

「家族連れの場合は他人との距離を保ち、他人が触る箇所への接触に注意すれば、そこまで感染の心配をする必要はありません。ただし、家族以外のグループで行く場合は、他人と密に接するので注意が必要です。テーブルに座る際も極力離れて座りましょう。料理を取り分ける場合でも取り箸を使うなど、直箸で皿をつつき合わないようにしてください。同様に、グラスの回し飲みなども避けてください」

【5】店員の手袋使用で安全だと過信しない

帝京大学大学院公衆衛生学研究科の高橋謙造教授はこう語る。

「従業員は、手袋を装着しただけで安心感や気のゆるみが生まれかねません。お客さんにとっては、感染リスクもあるいろんなものを触った手袋ですから、過度に信用しないほうがよいでしょう」

この指摘に石井さんもうなずく。

「これはガイドラインに明記していませんが、コロナに限らず食中毒の問題もあるので手袋を1時間置きに替えるとか、こまめに消毒するなど衛生管理はすべきです」

【6】トングやビュッフェのフタなどを触るときは要注意

「感染対策としてのフタでも、不特定多数の人が触っている場合、リスクが高いです。

直接、触らなければいいので、足で踏んでフタが開くなどの仕組みがあればいいですね」(筋野院長)

【7】バーカウンターに集まらない

「カウンターでドリンクを注文するような店では、一斉に集まったりしないよう気をつける必要もあると思います」(筋野院長)

【8】肩をたたくなどの接触を回避
【9】顔の正面で大声で話さない

「グループで同席する場合、盛り上がって肩をたたいたり、近寄ってお酌をするなど、身体的な接触をしないように。相手に面と向かって大声で話さないなどの注意も必要です」(筋野院長)

【10】トイレは極力、使わない

筋野院長はこう力説する。

「不特定多数が使うトイレは極力使わない。ただ、努力ではどうしようもない場合もあるので、理想は店側に使用の度に消毒していただきたいです。待てるならば、前のお客さんが使用後に5分換気してから使うようにしたらなおいいです」

最後に、筋野院長はこう語る。

「自粛ムードも解けてきて、お店側もお客さんに来てほしいし、皆さんも外食を楽しみたいですよね。だから、双方ができる範囲でできることをやっていくしかない。長期戦と考え、長く続けられることをやらないと意味がないんです」

家族や仲間との外食を楽しく過ごすため、飲食店も利用客も新たな“外食ルール”に基づいた日常を共有するようにしたい――。

「女性自身」2020年6月16日号 掲載

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