昨年11月、女性皇族に「皇女」という呼称で、皇籍離脱後も公務を続けてもらう案が政府内で出ていると報じられた。

「皇女」案とは、皇族減少に伴い公務の担い手不足を打開するために、女性皇族が結婚して皇籍を離脱したあとも特別職の公務員として公務を担ってもらうというもの。

皇女という制度が実現すれば、愛子さまや佳子さま、そして小室圭さんとの結婚を控える眞子さまも対象になるとみられる。皇族数の減少が深刻な問題となっているなかで、女性皇族に求められる役割も変化していくことになる。

英国王室をはじめとする欧州の王室では、女性の王族がどういった役割を担っているのか、近現代イギリス政治外交史が専門で『立憲君主制の現在―日本人は「象徴天皇」を維持できるか―』の著者・君塚直隆さん(関東学院大学教授)に聞いた。

「英国王室では、王族として生まれた女性たちが活躍しています。エリザベス女王の長女・アン王女(70)は、結婚後も王室の一員として英国オリンピック協会の総裁をはじめ320以上もの団体のパトロン(後援者)であり、年間の公務も600件を超える多忙さです。これだけの数でありながら、お飾りの名誉職ではなく、実際に団体のために尽力しているので、実に多忙な生活となっています。

またエリザベス女王のいとこにあたるアレキサンドラ王女(84)も、110もの団体のパトロンであり、王族としての義務を果たし続けており、女王からの信頼も厚いです。英国国民は、王室が国民に何をしてくれているかに注視しているので、王族としての義務を果たしているアン王女やアレキサンドラ王女は高く評価されます。エリザベス女王や王室そのものは国民から尊敬を集めていますが、彼女たちはそのことに大きく貢献しているのです」

王室全体では、女王をはじめ成人している王族20人で3,000以上に及ぶ各種団体のパトロンを務め、年間3,000件以上の公務も分担しているという。

宮内庁のウェブサイトを確認すると、秋篠宮さまは14の団体の総裁もしくは名誉総裁を務めている。眞子さまは日本工芸会の総裁と、日本テニス協会の名誉総裁の2つ。イギリス王室と比べるとかなり少ない水準といえる。

「王室と皇室の違いから単純に比較することはできませんが、今後も皇室を残していくのであれば、もっといろいろな団体に関わって公務を増やし、国民の理解を深めていく必要があります。現在の皇室が大多数の国民から支持されている理由も、男系男子による継承ということだけではないことは明らかです。皇室がより国民と関わっていく方向に進むのであれば、皇女制度のような皇室を離れた“非常勤職員”では難しく、男女関係なく宮家を作っていくべきです」(君塚さん)

自民党内の保守系グループからは「女性・女系天皇を認める布石になる」との声が上がるなど、女性宮家に否定的な意見が根強い。しかし君塚さんは、欧州王室では公務の分担だけでなく王位継承についても男女の性差は問われないと語る。

「英国王室では男女関係なく公務を担っていますが、王位継承についても同様に、男女の性差は問われません。エリザベス女王ほど尊敬されている人は英国にはいません。王ではなく女王だから軽んじられているのかというと、そんなことはまったくありません。それは女王として立派に王室を率い、国民に対する義務を果たしているからにほかなりません。

ベルギーの王位継承順位1位のエリザベート王女(18)は、去年には王立士官学校でライフルの射撃訓練などに参加しました。これは男女関係なく行われるベルギー王室の伝統で、次期女王となるための義務といえるでしょう。スペインの王位継承順位1位のレオノール王女(15)は、14歳で『アストゥリアス皇太子賞』の授賞式でスピーチをこなし、国民からも高く評価されました。ほかにもオランダのカタリナ・アマリア王女(17)、ノルウェーのイングリッド・アレクサンドラ王女(16)と、ヨーロッパは女王の時代を迎えます。

日本の皇室でも大正時代から側室制度は廃止されており、一夫一婦制で男系男子のみによる継承は成り立たなくなっています。それならば、ヨーロッパの多くの王室のように男女問わず第一子が継承すること、つまり愛子さまが天皇になることは自然なことです」

各メディアの世論調査では、女性天皇容認への賛成は8割前後となっている。菅政権は皇位継承問題に関する有識者会議を発足させる予定だが、新型コロナウイルスへの対応に追われるなかで見通しは立っていない。

今年12月には愛子さまも20歳を迎えられ、これから数年の間に結婚され、皇籍を離脱される可能性もある。菅政権には、皇族数の減少、そして皇位継承問題について一刻も早く取り組むことが求められている。

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