「できる限り2月下旬の(医療従事者を対象とした)接種開始を目指して準備したい」
1月22日の会見で、新型コロナウイルスのワクチンについて語った河野太郎“ワクチン担当相”。
日本で真っ先に接種が始まるのは、米ファイザー社と独ビオンテック社が共同開発したワクチンだが、1月中旬には、世界の医療関係者が注目した報道があった。
「ノルウェーで両社のワクチンを接種した約4万2千人のうち33人が、発熱や吐き気などの副反応を示し、接種後数日以内に亡くなったと報じられました。大半は80歳以上の高齢者だったそうです」(医療ジャーナリスト)
ファイザー株式会社の広報担当者は、本誌の取材に対し、次のような見解を示した。
《(亡くなった方の)ご冥福をお祈りするとともに、ご家族の皆様にお見舞いを申し上げます。
ノルウェー当局は老人ホームの入居者等に対するワクチンの接種を優先していますが、その多くは非常に高齢で基礎疾患を有しており、中には終末期の方もいます。
ノルウェー医薬品局は、医学的にリスクの高い人に対する本剤の接種と死亡の関連性は完全には否定できないものの、ワクチン接種との直接的な因果関係を示すエビデンスは得られていないと表明しています。
今回の件を受けて、ノルウェー保健局は重度のフレイル患者(例えば、Clinical Frailty Scale 8以上)、および終末期患者に対するワクチン接種のガイダンスを改訂し、ワクチン接種によって得られるベネフィットとリスクを慎重に評価するよう求めています。》
■「追跡調査の期間が足りない」と指摘する専門家も
この件について、日本の専門家はどう見ているのだろうか。大阪大学免疫学フロンティア研究センター招へい教授の宮坂昌之さんは、
「ノルウェーは日本と同じように高齢者が多い国ですし、その状況は今後も注視すべきだと思います。しかし、いっぽうで“ワクチン接種は危険なのではないか”というイメージだけが独り歩きしてしまうことを心配しています。ファイザーや米国のモデルナが開発したのは“mRNAワクチン”という種類のものです。ファイザーのワクチンは有効性が95%、モデルナは約94%と、非常に優秀です」
だが軽重はともかくとして、あらゆるワクチンに“副反応”はつきものだという。
「基本的には打った部分が腫れる、接種後に発熱する、関節痛のような痛みが生じる、といった症状です」(『ワクチン診療入門』の著書もある、ナビタスクリニック川崎の医師・谷本哲也さん)
新潟大学名誉教授の岡田正彦さんはこう語る。
「mRNAワクチンには、たんぱく質などを安定化させるポリエチレングリコール(PEG)が使用されていることが判明しています。“PEGによるアレルギー反応は不明”という論文もあり、その点について私は懸念を抱いています」
PEGについて、前出の宮坂さんは、
「薬品や化粧品などにも添加されている物質ですが、調査によればPEGによりアレルギー反応を引き起こされる人も多いのです。だから医師仲間の間では、『ワクチン接種後に、PEGによるアナフィラキシー(アレルギーの原因物質が体内に入ることによって、一つの臓器にとどまらず複数の臓器に強い症状が現れる過剰反応)が発生する可能性もあるのでは』という話はしていました。しかし幸い、アナフィラキシーに関して言えば、注射後の15?30分で反応が出ますので、医療機関の付近にいれば救命措置をとることもできます」
“ワクチン反対派ではない”という岡田さんだが、接種後すぐに判明する副反応よりも、将来の不安を感じているという。
「特に英国のアストラゼネカが開発したウイルスベクターワクチンで、すでに日本で治験が始まっています。人工合成したDNA遺伝子そのものを、無毒化したアデノウイルス(風邪のウイルスの一種)に組み込んで注射します。
いままで人類が経験したことのない新型ワクチンですので、本来であれば、発がん性の有無などを確認するために、5年以上は追跡調査すべきだったと思います。長期的な安全が証明されていないわけですから、私自身は打つことを考えていません」
『AERA』(1月25日号)には医療関係者1726人への調査結果も掲載されている。『ワクチンを接種しますか』という設問に対しては、「する」が31.4%、「種類による」が27.3%、「しない」が11.8%、「わからない」が29.5%と、意見も割れているようだ。
■「若い人も高齢者も副反応は同じ」
今回取材した専門家たちに、“接種を控えるべき条件”について聞いてみた。
「ワクチン接種によりコロナ感染を防ぐというメリットと、接種による副反応というデメリットのバランスを、個別に判断していくことが必要となります。
その際に、一つの尺度となるのが、“病気の重篤度”です。
現在は、医療従事者についで、高齢者が優先的に接種できるという方針が示されている。1月25日に厚生労働省は、65歳以上の高齢者への接種券を3月中旬以降に発送するといったスケジュールを明らかにした。
だが、岡田さんは違和感を覚えているという。
「ワクチンを製造している会社の論文を読むと、若い人も高齢者も副反応は同じ、とありますが、たとえばインフルエンザワクチンも私の経験では高齢者のほうが副反応は強いです」
また、深刻なアレルギーを持つ人も注意が必要だという。
「イギリスでは医薬品や食品、あるいはワクチンに対して重大なアレルギー反応が現れたことのある人には接種しないように呼びかけています」(宮坂さん)
「アナフィラキシーを起こしたことがある方は避けたほうがいいと考えています」(谷本さん)
最後に宮坂さんは、こんなアドバイスをしてくれた。
「一般の人に接種の順番が回ってくるまで、あと数カ月は必要になるでしょう。その間に、世界のワクチンに関するデータは積み上がっていきます。そのデータを見て、自分は打つべきかどうか最終的に判断してはどうでしょうか」
自分や家族の身を守るために、感染状況だけではなく、ワクチンの影響にまつわるニュースも注視していく必要があるのだ。
「女性自身」2021年2月9日号 掲載