「高齢者施設探しはいわば情報戦。単にお金をたくさん持っている人より、良質な情報を得られる人に有利なのです」
そう話すのは新聞・雑誌、ウェブなどに多数の連載を持つ、ファイナンシャルプランナーの畠中雅子さんだ。
なかでも「国民年金で入れるところを」という相談者に畠中さんがおすすめしているのが「ケアハウス(軽費老人ホームC型)」だ。
畠中さんによれば、よいケアハウスと出合うことができれば断然お得に老後の生活を送れる、という。地方自治体や社会福祉法人が運営するケアハウスは、整備の補助金が出るので利用者の家賃相当が安くなり、予算に不安がある人にとっても、手が届きやすい施設。
そんなケアハウスを日本全国から厳選して紹介する。
【ケアハウス アーベイン八幡平】岩手県八幡平
風光明媚な景色のなかに立つこちらの施設には、ケアハウス研究の第一人者でありシニアライフ情報センター代表を長年務めてきた池田敏史子さんも「有料老人ホーム以上」と太鼓判を押す。岩手山が望める部屋は全室南向きで、個室は32平方メートルとかなり広めだ。
だが、充実した設備もさることながら、こちらの最大の長所は、おもてなしの心が随所にあふれていることだろう。正月にはおせち料理が振る舞われるだけでなく、ひな祭りには新鮮な魚介丼、端午の節句には竹の葉に包んだちまきなど、四季折々の歳時にちなんだ料理が提供されている。
「高齢になると食べることが最大の楽しみにもなるので、飽きのこないよう専属シェフが腕をふるっています」
こう話す職員の田代さんがつづるブログには数多くの行事が紹介され、小道具一つをとって見てもスタッフの心遣いがうかがえる。
さらに施設内では、クラシックコンサートや三味線などの演奏会も催されるが、入居した親がこうした行事を楽しんでいる姿が見られることも、家族にとっては大きな安心材料だ。
ちなみにこちらは、自立から要介護5までが暮らす「混合型」で、“終のすみか”として過ごすこともできるのだ。
「ご本人の希望があれば、最期まで居室で暮らしていただいています」(田代さん)
【ケアハウス ゴジカラ村 雑木林館】愛知県長久手市
社会福祉法人たいようの杜が運営する「ゴジカラ村」は、愛知県長久手市の1万坪に及ぶ雑木林のなかにたたずんでおり、地域木材をはじめ自然素材を中心とした建築となっている。玄関は高い天井と開放感あふれる間取りとなっており、木の香りが漂う2階テラスでは、館内にいながら森林浴を楽しむこともできる。
こちらの最大の特徴は敷地内に幼稚園や専門学校、散歩道などがあること。絶えず子どもたちの笑い声が響き、近隣住民とのふれあいも多いという。さらに「特別養護老人ホーム」も同一敷地内にあり、「次世代型福祉複合施設」として全国的に注目を集めているのだ。
「館内には食堂、喫茶もあり、学生さんや子ども連れのお母さんたちも気軽にいらっしゃいます。身近に若い人たちがいることで入居者の方々も自然と元気になってきますし、若い人たちにとっても、いい刺激になっているようです」
こうした世代を超えた交流は、“居場所と役割”を意識したこちらの施設ならでは。
「当館では入居者の方が子どものお世話や見守りをするだけでなく、イベントの作品作りや手伝い、畑やお花の手入れなど、それぞれが居場所と役割を持っていただけるように心がけています」(館長の石原さん)
【さくらハイツ西五反田/ケアホーム西五反田】東京都品川区
「ケアハウスに入居する、と伝えたときに心配していた息子たちも、いまでは『自分も年を取ったらここに入れるといいな』と言ってくれています」
JR山手線・五反田駅から徒歩9分のこちらで暮らすAさん(78)は穏やかにこう話す。
一人部屋1DKの住まいは整頓され、「最近、介護予防に料理を始めました」というキッチンも奇麗に磨き抜かれており、まさに都市型ケアハウスの快適な暮らしといった風情。三度の食事が用意されるが、自分で作ろうと思えば、事前にキャンセルも可能だ。
Aさんは日々、読書や料理を楽しみながら、電車で社交ダンスにも通っているという。
もちろんAさんのように個人的な趣味が満喫できるだけではない。
こうした施設の充実は、品川区と社会福祉法人さくら会、そしてミサワホームグループの株式会社マザアスとの三者協力運営のなせる業だが、もう一つ忘れてはならないのが技能実習生の存在だ。
「私の名前はフェラニダです。ジョグジャカルタから来ました」
広々とした共用スペースでのリハビリでは、一人の高齢者に複数の介護職による手厚い付き添いがあるが、なかでも元気に入居者の車いすを押す彼女の笑顔は、ひときわ空気を和ませてくれる。
施設長の橋本盾彦さんがジャカルタで面接をし、来日した技能実習生3人が、ここではムードメーカー的な役割を担っているのだ。そして、入居者もまた彼女たちをあたたかく見守っているという。
「うまく理解できない言葉もあるけれど、わからないことは上司だけではなく、入居者さんも教えてくれます。日本に来ることができてよかったです」
【ラポーレ駿河】静岡県静岡市葵区
こちらは豪華ケアハウスの代表格。平成8年の開業ながら古さを感じさせない館内は洗練された印象で、天井の高い食堂は重厚な色調のじゅうたん敷き。管理栄養士監修のもとで提供される食事は、高齢者の栄養バランスに配慮されているだけでなく、朝昼夜の各食が、指定の1時間半の時間内であれば自由に食べられるシステムとなっており、入居者には好評だという。
さらに大浴場は温泉を思わせるしつらえで毎日12~22時まで入浴が楽しめる。
「入浴も食事も自由度の高い運用となっています」(職員の佐野さん)
居室は全室南向きで日当たり良好、無料Wi-Fiも完備。間近にあるバス停からは40分ほどで繁華街へのアクセスも可能で、周辺には関連の介護施設や病院もあるなど将来の安心度も高い。
「自然豊かな環境で日々の喧騒から逃れ、ゆったりした暮らしを送っていただくことができます」(同)
【ケアハウスすずらん苑】埼玉県蓮田市
最後に紹介するのは、自分流のスタイルで暮らしたい人に好評という、埼玉県蓮田市のこちら。
エントランスには「困りごとがあればご相談ください」と提示されており、入居者の不安や心配事には即対応してくれる。そんな安心感があるからこそ、入居者はアクティブな生活をすることが可能なのだ。
敷地内には駐車場が完備されており、マイカーを運転して出かけることも可能なほか、市内を巡回する専用のバスもあるので、外出する入居者や来客者の足回りには不自由がなさそうだ。
実際にバスを利用していた入居者たちからも「私はそろそろ免許更新なの」「買い物や映画へ行くならバスも楽よ」「子どもの家に行くときは運転していくのが便利」など、その利便性の高さは好評だ。
館内に入り居室を見せてもらうとウオークインクローゼットがあり、2人部屋はなんと65平方メートル。夫婦での入居でも気詰まりにならない広さだ。
さらに春には敷地内から桜並木が眺められ、レストランからは富士山を望むこともできるなど、暮らしに潤いをもたらしてくれる要素が満載。アクティブ派からインドア派まで、まさに幅広いニーズに応じた施設となっている。
「ケアハウスは福祉事業ですから運営する方の情熱がなくては成り立ちません。理事長さんは志の高い方なので安心して生活できると思います」(畠中さん)
「女性自身」2021年5月4日号 掲載