「まずは親族や知人が日本にいる人々について受け入れることを想定している。それにとどまらず、人道的な観点から対応していく」
3月2日、岸田文雄首相(64)はロシアによる軍事侵攻でウクライナから第三国に逃れた避難民を受け入れると発表した。
また今月16日には「条約上は難民に当たらないが、人道的な見地から難民に準ずる形で受け入れるように」とし、岸田首相は「準難民制度」の創設を検討していると明かしていた。
政府の専用機で来日をしたり、就労可能な「特定活動」などの在留資格を付与する方針が示されたりとウクライナの避難民に対する扱いは手厚い。いっぽう、日本はこれまで難民を受け入れることに積極的ではなかった。’20年、日本での難民申請者は3,936人。しかし、認定されたのはわずか47人だ。
また難民と認定されず、入国管理局の外国人収容所に長期間収容されている人たちもいる。そして入管ではスリランカ人のウィシュマ・サンダマリさんが収容中、職員から心ない言葉を浴びせられた上に、適切な治療を受けることができず昨年3月に亡くなっている。難民申請の外国人に対する日本の姿勢が国内外で今なお問われている。
そのためネットでは、《モヤモヤするのはウクライナ「避難民」は法律の外でノービザ入国、生活費まで支給という厚遇に対して、他国「難民」は認定すら非常に厳しいという現状》《基本難民は受け入れないし、入管では死者さえ出してる状況ですけど、国内外へのパフォーマンスは抜かり無くってとこか》と違和感を覚える声が相次いでいる。
専門家は、こういった声をどう考えるだろうか? そこで本誌は移民研究を専門とする筑波大学の明石純一教授に話を聞いた。
「入管に収容されている方々は『難民ではない』という判断を下されたものの、母国に帰らない、あるいは帰れないという人たちです。
■大事なのは“これからどうするか”
明石教授はウクライナの避難民と比べるのなら、アフガニスタンでの紛争やシリアでの内戦、そしてミャンマーの軍事政権から逃れてきた人々などだという。
「例えばアフガニスタンで起こった紛争の影響で、日本に逃れてきたひとたちがいます。それでもウクライナの避難民のように瞬時に、そして手厚く入国させたわけではありません。扱いにかなりの落差があるといえます」
今回の受け入れに対して「パフォーマンスだ」とする声がある。それに対して、明石教授は「政府は国際世論を鑑みて判断したのでしょう。そして、パフォーマンスであることは決して悪いことではないと思います」といい、こう続ける。
「『手厚く受け入れるのは、なぜ今回が初めて?』という非難は理解できます。ウクライナ同様、戦争などを理由に自国から逃れたいと願う人たちはこれまでも存在していたわけですから。ただパフォーマンスでも人を救えるのなら、それを否定しなくてもよいのではないかと私は考えています。
大事なのは“これからどうするか”ではないでしょうか。
日本のあるべき姿について世論が形成され、多くの政治家がそれを共有することができれば変化が生まれるかもしれません」
そして明石教授は「日本は国際協調主義の国であり、これまでも国際的に人道支援をしてきました。時に『お金をばら撒いている』ともいわれます。いっぽう“受け入れ”に関しては確かに消極的でした」と語り、こう結ぶ。
「経済的な支援も避難民を招き入れるのも、どちらも間違いではありません。時には物資の提供や資金面での援助のほうが喜ばれることもあるでしょう。いっぽう『日本に入国したい』という方もいます。当事者の期待とニーズを見落とさないようにして、判断するべきだと思います」