「パン、パスタなどの7月からの値上げが発表されました。いずれも、今年に入って2度目の値上がりとなります」

こう話すのは、流通事情に詳しい経済評論家の加谷珪一さんだ。

山崎製パンは食パンの「超芳醇」をはじめ、141品目の出荷価格を7月1日の出荷分から平均で7.1%値上げする。フジパンと敷島製パンも最大9%の値上げを発表した。

また、ニップンと昭和産業は7月に小麦粉やミックスなどを、8月にはパスタや乾麺などをそれぞれ値上げすることを決定している。

「小麦粉製品は値上げのサイクルが速く、他ジャンルの食品の値上げの先例になるといえます」

6月はカップ麺、アイス、7月は香辛料、食用油、10月にはビールと、今後値上げが予定されている食品は枚挙にいとまがない。

「そういった商品も、小麦粉製品と同様にさらなる値上げが発表される可能性は否定できません」

私たちが家庭で消費するモノの価格動向を示す「消費者物価指数」は、東京都区部の最新統計(4月分)で前年同月比プラス2.5%。

「総務省が発表している『家計調査』によれば、昨年の2人以上世帯の平均消費支出は月額で『27万9024円』。これに『プラス2.5%』ですから、6月以降は月額で『6976円』も出費が増える計算になります」

じつに毎月「7000円」の出費増! あらゆる品目が値上げされるなか、私たちはどのような手を打つべきなのか――。加谷さんと、生活経済ジャーナリストの柏木理佳さんに最新の節約習慣を教わった。

■まとめ買い・定期便を活用する

値上げ実施前に買っておくまとめ買いには、「商品ごとに向き不向きがある」と話すのは柏木さんだ。

「まとめ買いが有効な品物の原則は『消費期限が長い』ものや『かさばらない』もの。ビールなどの箱買いは、製造日から時間がたつと鮮度が落ちることがあります」

ビールのほか、トイレットペーパーなど場所を取るものは「定期便」を利用するのがよいそうだ。

「アマゾン、楽天などのECサイトの定期便や、各メーカー独自の定期お届けサービスもあります。

私は化粧品も定期便で購入していますが、使い切るスパンで配達されるのが理想。1カ月で使い切るのか、3カ月なのか、自分のペースをきちんと把握しましょう」

■還元より割引を重視する

お店が掲げる「50ポイント付与(還元)」と「50円値引き(割引)」では、その価値が大きく異なる。

「『50円値引き』はその時点で現金50円分の得になりますが、『50ポイント付与』は次回購入時に初めて使えるサービス。『値引き』品を買うほうが『ポイント付与』より価値は高いです」(加谷さん)

「ポイント付与は、リピーターを増やすというお店側のメリット。買う側は必ずまた行くお店でないと意味がないのです」(柏木さん)

■日用品をスーパーのPB商品に 

イオン「トップバリュ」、イトーヨーカドー「セブンプレミアム」、西友「みなさまのお墨付き」などのPB商品(プライベートブランド)は、食料品からティッシュ、洗剤まで数千品目あるといわれ、一般メーカー品より2~3割安い。

「さらに、イオンと西友では現時点でまだ値上げされていません。『6月30日まで据え置き』と発表しました」(柏木さん)

品質もメーカー品と遜色ないため、日用品をPBに切り替えるメリットは大きいという。だが、そもそもPBが安く提供される理由は? 加谷さんが解説する。

「PB商品のほとんどは、メーカーが製造した品物に、スーパーが自社のラベルを貼って直接販売しています。メーカーとスーパーのパワーバランスは昨今、スーパーに傾いています。そこでスーパーが『安くて品質がいい』PB商品を多く出すようになりました」

メーカー側には、自社製品と合わせた大量生産で製造コストを抑えられるというメリットがある。

■ふるさと納税で生活必需品を

寄付金額から2000円を引いた額が住民税・所得税から控除・還付されるため、実質2000円の負担で返礼品が受け取れると人気のふるさと納税。

返礼品では、スイーツをはじめとする特産品に人気が集まるが、カップ麺やトイレットペーパーなど生活必需品を返礼品としている自治体もあるので、要チェックだ。

「例年、11~12月は駆け込み需要のため品薄になったり、返礼品もお歳暮用の割高なものが多くなりがち。余裕のあるうちに、家計の助けになるものを選んでおくのが得策です」(柏木さん)

■保険料・NHKは年払い

住民税、国民年金や、民間の保険の保険料、NHK受信料などは、1年分を一括で払うことで、割引が受けられる。

「年払いにする優先順位をつけるべき」と話すのは柏木さんだ。

「一般の保険会社の個人年金保険は、途中解約した場合、返戻金は掛金の9割程度しか戻ってこないものが多い。保険料を払いそこね、結局止めてしまうことを防ぐためにも、ボーナス時などに一括で支払う『年払い対象』にしたほうがよいでしょう」

■サブスクの使用状況を点検

「動画配信サービスは1つずつの料金が安いからと、つい月の支払い額がかさんでいる人も多い」

と指摘する加谷さんの提案は、一度“すべて解約”してみること。

「全部やめることで、本当に見たかったコンテンツが浮き彫りになります。そのぶんだけ再契約すれば、大幅な支出カットになるはず」

■小売店の「下取り」を利用する

「洋服の青山では、着なくなったスーツなどを持ち込むと、下取りとして10%オフのクーポン券がもらえます。紳士服のコナカでも、持ち込むアイテムごとに下取りの額や購入品の割引率が異なるサービスがあります」(柏木さん)

衣料品のほか、家電量販店でも商品によって下取りの対象になるものがあるという。

値上げのトンネルの出口が見えないなか、節約も“長く続けられるもの”であることが求められる。

最後に加谷さんが語る。

「日ごろからスマホなどで価格をよく調べる習慣がつけば、結果的に“息が詰まらない節約”が達成できるはずです」

できることから1つずつ習慣にし、家計負担増の波を乗り切ろう。

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