7月22日、東京都で確認された新型コロナウイルスの新規感染者は3万4千995人と2日連続で過去最多を記録。全国では同日19万5千137人となり、こちらは3日連続で過去最多となった。

名古屋工業大学の平田晃正教授の試算では、都内では9月中旬ごろまで1日1万人以上のレベルで高止まりすると見込まれている。

医療現場はここ数日の“第7波”急拡大に大混乱の状態だ。

「すでに、コロナ禍で最悪のひっ迫状況です。発熱外来に来た方が猛暑のなか、当院の外周を200m以上の長蛇の列をなして待っていました。受付けまで3時間以上を要し、駐車場も常に満車状態で、約1kmの渋滞が発生してしまうほどの混雑具合です。3連休最終日の7月18日、当院では約1千300人が発熱外来を受診され、うち770人がコロナ陽性に。陽性率は約60%に上りました」

と語るのは、ふじみの救急病院(埼玉県入間郡)院長の鹿野晃先生だ。

同院では、オミクロン株流行の第6波のときで、1日あたりの最多陽性者数は約500人、陽性率は約40%だったという。

「陽性者数も陽性率も、第6波と比べて約1.5倍となっている状況です。第6波より現在の第7波のほうが、圧倒的に恐ろしいといえるでしょう」(鹿野先生)

そしてこの“第7波感染爆発”をもたらしているとされるのが「BA.5」への置き換わりだ。 BA.5とは、オミクロン株の一種で「従来のオミクロン株より感染力が強く、感染スピードも速いと考えられています」と鹿野先生は話す。

英国保険当局は、BA.5はBA.2より「1.35倍」速く感染が広まる、と発表。

症状に関しては、フランス公衆衛生局の集計によると、倦怠感が約76%と最多で、咳や発熱、頭痛、鼻水がそれぞれ50%以上となっている。

さらに、症状が続いた期間は、BA.2が約4日だったのに比べて、BA.5は約7日と、3日ほど長引くとも報告されている。

「患者さんの症状が強く、長引いている印象があるのは事実。第6波のときは、発熱した患者さんの平均体温は37度程度だったのに対して、いまは40度近い高熱の方が大半を占めています」(鹿野先生)

厚生労働省によると、7月3週目の時点で、すでに90%以上がBA.5に置き換わっており、「8月の1週目にはすべての株がBA.5に置き換わる」という予測が示されている。

■高齢者は長引く咳で死に至る場合も

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そんななか、最も懸念されるのが、高齢者や基礎疾患のある人が感染した場合だ。

「『BA.2よりも肺で増殖しやすい』という実験結果も報告されており、私も警戒しています。BA.5に感染すれば、体力のないお年寄りや基礎疾患のある方は肺炎で亡くなってしまうケースがある。死者数が第6波より増えてしまう恐れがあるのです。また、高齢者は長引く咳で体力を消耗。強い咳で肋骨が折れる『咳骨折』を引き起こす危険性も。加えて、高齢者は咳でウイルスを体外に吐き出す力が弱いため、気管支で増殖したウイルスが肺まで入り込んで増え、肺炎を引き起こして、最悪の場合は死に至ることも懸念されるのです」(鹿野先生)

BA.5の重症化率は、BA.2と同等と考えられているものの「感染者数が増えれば重症者数も比例して増えます」と鹿野先生は危惧する。

「現状、医療スタッフが足りない状態なので、病床使用率に余裕があったとしても、院内スタッフは新型コロナの対応で手いっぱいに。

すると新型コロナ以外の、たとえば熱中症や交通事故などの救急対応に影響が出てしまう。今日(7月19日)もすでに、救急車の受け入れを4回断らざるをえませんでした……」(鹿野先生)

つまりコロナ感染者や高齢者、基礎疾患のある人はもちろん、それ以外の「いまは健康な人」が急病や大ケガを負ったとき、救急車を呼べなくなったり、入院できなくなったりする恐れがあるのだ。

止まらない感染爆発を前に、BA.5への対策として私たちができることにはなにがあるのか。

「まず、ワクチンの3回目接種を行うことが最も有効な感染対策。人にうつすリスクや、たとえ感染しても重症化するリスクを減らすことができるのです」

と話すのは医療ガバナンス研究所理事長の上昌広先生。

また感染経路に関しては、「飛沫感染」以上に「空気感染」に気をつけるべきだという。

「とくに重要なのは『換気』です。理想は30分ごとに換気したいところ。また、フィルター付き空気清浄機を使うことで、空気感染のリスクはかなり軽減できます。そして『窓がない』など空気の入れ替えがしにくい場所に長時間いる機会も減らすべき。イメージは『二酸化炭素がたまる空間に長くいない』ことです。雑居ビルやカラオケボックスなどは、非常に二酸化炭素がたまりやすい環境なので、長時間の滞在は避けたほうがよいでしょう」(上先生) 会食やイベント前には抗原検査で陰性確認を お盆で実家の親や親戚と顔を合わせる予定がある人も多いなか、「帰省前には、なるべくPCR検査で陰性を確認するべきです」と上先生はアドバイスする。

結果がその場でわかるタイプの「検査キット」の活用も有効だという。

「会食やイベント前には、事前に全員が抗原検査キット(市販品もあり)で陰性確認することが、手軽で効果的な感染対策だと思います」(鹿野先生)

「コロナは風邪」と軽視している人も多いが、高齢者や基礎疾患のある人にとっては感染が命取りになる。

身の回りの大切な人を守り、感染爆発を少しでも早く食い止めるカギは、私たち一人ひとりの感染対策にほかならないのだ。

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