《私の英国留学や英国訪問に際しても、様々な機会に温かく接していただき、幾多の御配慮をいただいたことに重ねて深く感謝したいと思います》

9月9日、天皇陛下は英国のエリザベス女王(享年96)の逝去を受けて、すぐに弔意を表された。

陛下は’83年から約2年間、イギリスで留学生活を送られている。

’84年にはエリザベス女王の招待を受け、北部スコットランドのバルモラル城に数日間ご滞在。

女王自らが台所に入り、夫のエディンバラ公がバーベキューの肉を焼くという団らんの時間をご一緒されたという。

「帰国後に天皇陛下は、『エリザベス女王をはじめ英王室からは家族の一員のようなもてなしを受けました』と、感謝のお言葉を述べられたのです」(皇室担当記者)

エリザベス女王と皇室の交流は、69年前にさかのぼる。’53年6月2日、上皇さまが昭和天皇のご名代として、エリザベス女王の戴冠式に参列されたのだ。

当時、上皇さまは19歳。また第二次世界大戦が終結してから8年ということもあり、イギリス国内での対日感情はかなり悪かった。

「しかしエリザベス女王は、“東洋からやってきた若き皇太子”を心から歓待してくれました。戴冠式後は、いっしょに競馬を観戦するなど、親交を深めたのです」(前出・皇室担当記者)

上皇さまにとって、このご旅行は生涯忘れられないものとなった。当時の思い出や感激を何度も、美智子さまにもお話しされたという。美智子さまはのちに、次のような御歌を詠まれている。

《わたつみに船出をせむと宣(の)りましし 君が十九の御夢(おんゆめ)思ふ》

宮内庁関係者は次のように語る。

「戴冠式で25歳のエリザベス女王は、こうスピーチしています。

『命ある限り、私はこの身を捧げて、あなた方の信頼に応えられるように努めます』

このスピーチは、若き日の上皇さまのお心を打っただけではなく、美智子さまの道しるべともなりました。女王と皇太子妃・皇后と、お立場は異なりますが、“国民の母でありたい”というお志は同じなのではないでしょうか。

エリザベス女王が生涯、公務や福祉に情熱を傾け続けたように、美智子さまも“常に国民のために尽くす”という姿勢でお務めに臨まれ続けたのです」

ご成婚以来63年、エリザベス女王に私淑してこられた美智子さま。女王の背中を追うようにして実現されていったのは公務や福祉に全力で努めることばかりではなかった。

前出の宮内庁関係者が続ける。

「“家族の絆を国民に示す”ということです。エリザベス女王は国民からの共感と支持が、王室の基盤であることを熟知していました。そして美智子さまが目指された“開かれた皇室”も、ご家族との姿を国民に開示していくことが柱の1つだったのです」

’75年に美智子さまはエリザベス女王と“初対面”された。皇室ジャーナリストの渡邉みどりさんは、

「エリザベス女王が来日したときに、東宮御所を訪問したのです。当時、皇太子ご夫妻でいらした上皇さまと美智子さまが、3人のお子さまといっしょに接遇されました。当時6歳だった黒田清子さんが、右ひざを曲げておじぎをする『カーテシー』で挨拶していたのがかわいらしかったですね」

当時の報道によれば、ご一家が女王に贈った小箱には、天皇陛下が撮影されたごきょうだいの写真、秋篠宮さまが手作りされた英国旗、清子さんが見つけた四つ葉のクローバーなどが入っていたという。

まさに女王をお手本とした“家族の絆”がつまったおもてなしだったのだ。

「女王にとっても日本での日々は印象的だったようです。三重県のミキモト真珠島を訪れた際にプレゼントされた真珠のネックレスを長年愛用していました」(前出・渡邉さん)

来日から37年後の’12年、上皇ご夫妻は、女王の即位60周年祝賀行事のために訪英された。

「上皇さまはその3カ月前に心臓手術を受けられたばかりでしたが、訪英を強く希望されたのです。

女王夫妻主催の昼食会には、多くの王族が出席しました。上皇さまには女王の左隣の席が、そして美智子さまには女王の右側2人隣の席が用意され、これは女王による格別な配慮でした」(前出・皇室担当記者)

エリザベス女王の国葬は、9月19日に執り行われると発表された。

前出の宮内庁関係者によれば、

「コロナ禍のために延期になってしまいましたが、エリザベス女王からのご招待があり、’20年5月に天皇皇后両陛下が訪英される予定でした。

天皇陛下の外国王室や元首の葬儀ご出席は異例とされています。しかし、女王の生前のご厚意にお応えしたいというお気持ちがあるのでしょう。天皇陛下が、ロンドンのウェストミンスター寺院で行われる国葬に出席される方向で調整に入っており、雅子さまも出席のお気持ちを持たれているそうです」

エリザベス女王が愛した真珠のように、皇室と英国王室の絆は永遠の輝きを放ちながら続いていくに違いない。

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