ホルモンバランスの変化や最近はコロナの後遺症などで、薄毛の悩みを抱えた女性が年々増えています。何に気をつけたら食い止められる? 40代のとき、同じく薄毛に悩まれたフリーアナウンサー南美希子(66)さんの話をきっかけに、対策を考えます。
ーー南さんと頭髪治療の専門医・浜中聡子先生の出会いは2008年。南さんが薄毛で悩んでいたときに受診したのが浜中先生だった。更年期世代に入っていた南さんは、子育てと仕事の両立に多忙を極めていたある日、息子さんに指摘された何げない一言から、自分の髪の異変に気づいたという。
南:私、40歳で出産をして、2カ月ほどで仕事に復帰しました。育児をしていると、自分のことになんてかまっていられません。ある日、休みの日にポニーテールで料理をしていたら、当時小学生だった息子が「マミー、ハゲてる」って、私の生え際を指摘したんです。それでまじまじと鏡で見てみたら、確かにおでこの両サイドが薄くなっていることに気がついたんです。
浜中:実は、ご自身ではなかなか変化に気づかないもので、南さんのように他人に指摘されてから気になり始めたという方は多いです。ほかにもエレベーターのカメラで頭頂部を見たとか、人が撮った写真で自分の髪の状態を初めて客観的に見たとか。みなさん、意外なところから髪の変化に気づきます。
南:それで知り合いのドクターから、女性専門の頭髪クリニックをなさっている浜中先生をご紹介いただき、ミノキシジルを処方していただきました。
■治療薬は今、ピンポイントの箇所に塗って乾かすだけのものも!
浜中:ミノキシジルとは、発毛効果が認められている医薬品です。
南:そうです。実際とてもよく効いたのですが、鼻毛やら指毛やらすね毛やら全身の体毛まで濃くなってしまって……。当時、その悩ましい気持ちをエッセイに書いて、一冊の本にしました(笑)。
浜中:南さんの場合、お薬の反応がとてもよかったのです。ただ、飲み薬はどうしても全身に効いてしまうのが難点でした。現在は従来のものより高濃度で高浸透なものに改良され、化粧水のようにピンポイントの箇所に塗って乾かすだけでよいものも。
南:それは助かりますね。私は全身発毛が理由で治療を中断したのですが、薄毛を自覚したころは「これだけ医療が進歩しても、髪の毛だけはどうしようもないんじゃないか」と本当に悩んでいたので、先生の治療を知って「改善できるんだ!」と安心しました。
浜中:そうなんです。でも、南さんはシビアな症状ではありませんでした。更年期世代の女性としては平均的で、深刻な薄毛というわけでもなく、早めに治療を試してくださったのがよかったですね。
南:髪の毛が細くなってハリコシがなくなり、頭頂部のボリュームが減ってきたのは感じていました。
浜中:頭頂部は分け目からどうしても毛が少なくなるので、頻繁に分け目の位置を変え、分け目を決めてしまわないのがいいですね。
ーー薄毛が気になると、最初に考えるのはシャンプーやマッサージなどのヘアケアだと思いますが。
浜中:シャンプーやブラッシングの質問はよく受けますが、私は商品そのものより、地肌の汚れをしっかり落とす方法やシャンプーのすすぎ残しがないような洗い方、髪の乾かし方といった方法に注意が必要だと感じています。
南:私は、地肌にせっけん系のシャンプーを使い、毛先には普通のシャンプーといった使い分けをしています。トリートメントも地肌につけない。そして洗うときは爪をたてないで指の腹でマッサージをするようにして、とにかく地肌に刺激を与えないようにしています。
ーーお湯だけでシャンプーやせっけんを使わない“湯シャン”はおすすめですか?
浜中:湯シャンで髪が増えるとか健康になるという説もありますが、湯シャンの良しあしは体質によると思います。皮脂の分泌量や頭皮の状態も、人によって異なりますから。日本のような高温多湿で温暖化が進んでいる土地で湯シャンだけでは、皮脂によるニオイが気になるのではないでしょうか。そこは頭皮との相談が必要ですね。
南:頭皮のどんなところを気にすればよいのでしょうか?
浜中:シャンプーするのが夜だとして、〈1〉シャンプー後の洗いあがり、〈2〉翌朝、〈3〉翌夕の3点で、洗いあがりの状態から皮膚の状態、髪のボリューム感などを見て、自分の髪質と地肌のタイプを判断してみてください。
南:マッサージはどうですか?
浜中:適切な頭皮マッサージであれば血流は促進されるので止めはしませんが、低周波や治療による血行促進に比べるとやはり効果は段違い。リラクゼーション程度に楽しむ分にはいいと思います。
南:私、先生の書籍(『美人増毛計画』)を当時、バイブルのように読んでいました。その本に、タンパク質の大切さが説明されていて、以来、積極的にタンパク質をとるようにしています。小腹がすいたときにコンビニしかない場合でも、おにぎりやパンではなく、チーズやヨーグルトを選ぶようにするとか。
浜中:更年期あたりから女性ホルモンが減少し、それが髪にも影響するのですが、高タンパク低脂肪でしっかりタンパク質をとることが重要。ケラチンという髪を作る基本はタンパク質だからです。「髪に海藻がいい」と海苔やヒジキやワカメをせっせと食べる人がいますが、確かにミネラルも大切ですが、それは髪のツヤを出すもの。まずはタンパク質が土台だと、認識してほしいですね。
南:毎朝の野菜とフルーツで作るスムージーも、もう15年以上続けています。
浜中:抗酸化力抜群! それでお肌がツヤツヤされているのですね。南さんは髪に対する意識も高く、年齢に比べて髪質もボリュームもよいと思います。
■女性は、髪形がキマると気持ちも明るくなる!
南:先生の髪は毛量もしっかりされているし、ツヤがすばらしいです。髪のためにどのようなことをなさっているのですか?
浜中:特に何をしているわけでもないのですが、あえていえば、南さんと同様、毎朝のスムージーでしょうか。今朝はりんごとバナナとにんじんとセロリのスムージーを飲んできました。種も皮も全部一緒に入れてミキサーで混ぜるだけなので、簡単でおいしい抗酸化作用の高いドリンクだと思います。
ーー育毛剤についてですが、女性が夫の使っている男性用育毛剤を使うのはどうでしょうか?
浜中:男性用も女性用も共通成分としてミノキシジルが入っています。また男性用はメンソールが効いて清涼感のあるものが多いので、女性には刺激が強すぎる場合も。やはり男性は男性用、女性は女性用のものを使うのがいいですね。
ーーどれだけ髪に気を配っていても、どこかで加齢という変化に折り合いをつけるタイミングが必要だと感じています。南さんの場合はどう折り合いをつけましたか?
南:自分の髪をきれいに保つっていうのは大命題ではあるけれど、ウイッグを使うという手もあります。私は薄毛に関係なく、30代のころからファッション感覚でウイッグを使っているので、ウイッグに助けられている部分もあります。
浜中:ウイッグは変身願望をかなえてくれますから、冒険気分で使うのはとてもいいと思いますよ! ウイッグといえば、がん治療の患者さんというイメージがある方もいますが、たとえきっかけが病気でも、遊び感覚でいろいろ試してみられたらよいと思います。
南:私は長さ、ボリューム、スタイルなど、種類の違うものを15個くらい持っています。
【PROFILE】
浜中聡子
クレアージュ エイジングケアクリニック総院長。発毛治療を中心に女性の頭髪の悩みに向き合う
南美希子
テレビ朝日アナウンサーから独立後、コメンテーターなどで活躍。著書に『40歳からの子育て』(光文社)などがある