顔から汗が噴き出したり、猛烈に悲しい気分になったり。「これが更年期か」とすぐ気づく人はまれで、多くの場合苦しさを1人で抱えこみがち。

そんな中、女優や文化人の皆さんが、自分のつらさや対処法を伝え始めてくれています。本誌では、女優の有森也実さん(54)が更年期のさなかを振り返ってくれましたーー。

「47歳のころ、体温調節がうまくいかなくなり、汗が噴き出したのが最初でした。女優の仕事は暑いときに冬の撮影をしたり、逆もあります。それまでコントロールできていたことができないことがつらく、気持ちも落ち込みました」(有森さん・以下同)

ほかにも顔面のけいれんや首のリンパの腫れ、頭痛が半年~1年ほど続いたという。

「脳外科でMRIを撮っても異常なし。耳鼻咽喉科も、首のリンパの腫れで何度も受診して。そこで『女性特有の40~50代のものの可能性があります』と指摘されたことで、更年期なのかと理解し、気持ちが落ち着きました」

50歳前後は、生理の周期が不安定になり、閉経へと向かう時期。

「心身に次々と起こる1つ1つがまるでパズルのピースのよう。すべてハマったときに、“これが更年期なんだ。誰もが通り過ぎる流れの中に私はいるんだ”と気づけました。いつ終わるかはわからないけれど、必ず症状は治まり、人それぞれ経験することがあるんだと」

有森さんは1つの決断を下す。

「投薬などの治療をせずに、症状があっても自然のこととして受け止めてしっかり経験しよう」と腹をくくったのだ。

「女優として、女性の体の変化を感じたいと思いました。つらかったら病院へ行こうと決めて」

■同時期に最愛の母を自宅で介護し、看取る

「親の介護は、私1人で連絡も手配もすべてしなければならない。そんな中、地域包括支援センターの方や周りの方のありがたみを感じることが多くて。1人で抱えこまずに『私、もうここまでです』と人に頼っていいと、初めての経験でした。更年期もそう。『私、今こんな状況でつらい』と、素直に周りに頼るチャンスだったんです」

有森さんは長年の趣味のバレエの先輩に「大好きなバレエに来られないほどつらい」と打ち明けた。

「先輩は、『大丈夫よ。更年期なんてね、通り過ぎちゃうもんだから。いつかは楽になるから大丈夫』と、軽やかに受け止めてくれて。好きな先輩の言葉で、すごく楽になりました。同級生とも話しましたよ。

症状がない人も、市販薬を飲んでいる人もいて、みんな捉え方も違う。何より人と話をすることで、自分の更年期を自覚できました。それからは筋トレやストレッチを続け、体にいい食事を心がけましたね。大変でしたが、人生で背負ってきた荷物を下ろし、少しずつ自分を楽にしてあげる方法を学べた気がします」

■更年期=障害ではない。過去も未来も見直す節目の時期

「更年期は、誰にも強制的にやってきますが、経験者でも互いのつらさを“共有”はできません。それでも“理解”してもらえることは救い。それぞれの解決法や答えは自分の中にあり、自分のことは自分がわかってあげるのが一番の救いになると思います。今は更年期を抜けて、軽やか。大好きなバレエも復活。なぜ更年期の時期だけバレエが嫌になったのか、今も理解不能な謎です(笑)」

有森さんの笑みがはじけた。

【PROFILE】

有森也実

’67年、神奈川県生まれ。中学生でモデルデビュー。

『キネマの天地』(’86年)、『東京ラブストーリー』(’91年)など女優として活躍。昨年19年ぶりに写真集『prayer』を発売

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