コロナ第8波とインフルエンザとの“同時流行”が懸念される今冬。街中の薬局では、こんな不安の声が上がっている。

新型コロナに感染した患者さんに医療機関で処方される解熱鎮痛剤『カロナール錠』は、第7波のときに供給が追いつかなくなり、製薬会社が出荷量を調整しました。第7波が落ち着いたときに少しずつ入荷するようになったのですが、11月に入って感染者が増えてくるとともに、また入手しづらくなってきましたね。今、うちの在庫は1箱しかない状態。入荷は未定なので、さらに感染拡大したらどうなるのか、今から心配です」

そう語るのは、日の丸薬局(東京都練馬区)の関口博通代表だ。コロナの波が押し寄せるたび、医療機関には患者が殺到。受診できず、自宅療養を余儀なくされるケースも少なくない。そこへ“薬の不足”が追い打ちをかけている。そんな状況下で、自宅療養を想定して薬剤師や医師らが呼びかけているのが、食料品とともに「市販薬」を備えておくことだ。

ひまわり医院(東京都江戸川区)の伊藤大介院長がいう。

「発熱外来の予約がすぐに取れないとき、受診までの“つなぎ”として頼りになるのが薬局やドラッグストアで売っている市販薬です。急な発熱などの体調不良に備えて、ピークが来る前に購入しておくことを勧めています。ただし、たくさんストックする必要はありません。

目安は3~4日分あればよいでしょう」(伊藤院長・以下同)

同時に、手軽に入手できる市販薬であっても、服用に際してはルールをきちんと確認することが大切であると伊藤院長は話す。ここでは、新型コロナ感染時の自宅療養に備える市販薬について、選び方と注意点を「発熱」「喉の痛み」「せき」の症状別に、伊藤院長に解説してもらった。家族や自分の“いざ”に備えて確認しておこう。

■せき止めは眠気を催すことがあるので要注意

まずは「発熱」の際に使う「解熱鎮痛剤」。種類がたくさんあるので、何を基準に選んだらいいのかわからないという人もいるだろう。

「医療機関で処方されるカロナールは市販されていませんが、主成分がカロナールと同じ『アセトアミノフェン』の市販薬はあります。薬によってアセトアミノフェンの含有量や対象年齢が異なりますので、説明書で確認しましょう。主成分がイブプロフェン、ロキソプロフェンナトリウム水和物でもかまいません。ロキソプロフェンナトリウム水和物のほうが高い解熱効果を得られますが、飲み続けると胃腸や腎臓にダメージを与えることもありますから、基礎疾患がある人などは薬剤師さんに相談することをおすすめします」

オミクロン株への置き換わりが進んで以降、「せきが出て喉が痛い」「急に声がかすれる」「たんがからむ」といった、喉の痛みやせき、たんなどの症状が出やすくなったといわれている。喉の炎症を抑え、痛みを緩和する成分としては「トラネキサム酸」が挙げられる。

「トラネキサム酸は粘膜の炎症を緩和し、喉の痛みを和らげる効果がありますが、もともと『止血剤』であるという点に注目すべき。心筋梗塞や脳血栓などの症状・既往症がある人は注意が必要で、服用できない人は漢方薬の桔梗湯を使う選択肢もあります。

また『せき止め』には麻薬性と非麻薬性の2通りあり、非麻薬性の『デキストロメトルファン臭化水素酸塩水和物』が主成分のタイプのほうが、副作用が比較的軽いです。ただし、せき止めは眠気を催すことがあるので、車の運転や大事な作業を行う前の服用は避けましょう」

そして、倦怠感があるときには、漢方薬がよいという。補中益気湯は、倦怠感や食欲不振、寝汗などの症状に効果的だという。比較的体力がある人は、頭痛や肩こりなどの関節痛、発熱などには葛根湯を使うとよいそうだ。服用した市販薬名はそのつど控えておき、医療機関にかかるときは医師に伝えられるようにしておきたい。また、薬局を訪れる際はお薬手帳を忘れないようにしよう。

迫りくるコロナ第8波の猛威を乗り切るために、市販薬も上手に活用したい。

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