「岩倉めぐみに扮する永作さんが今作の演技でもっとも悩んだパートが、2週にわたって描かれた“夫を失っためぐみがどう新社長として会社を立ち直せるか”だったそうです」(制作関係者)
現在放送中のNHK連続テレビ小説『舞いあがれ!』に出演中の永作博美(52)。めぐみは「IWAKURA」社長で夫の浩太(高橋克典)が急死し、悩み抜いた末、新社長に就任。
「リーマン・ショックの直撃を受け、倒産寸前の会社を引き継いだめぐみは、慎重にして大胆なリストラの断行や、取引先に赴いて、先方の社長相手に一歩も引かない金銭交渉をしてみせるなど、工場を徐々に再興していきます。
4年後、会社は危機を乗り越えパイロットの内定を辞退した舞は営業部のエースに成長。めぐみと共に亡き父の“飛行機の部品となるネジ作り”という夢を追っていきます」(テレビ誌ライター)
家業のピンチを乗り切る永作の“キャラ変”新社長役の評判は上々のようだ。
「ネット上でも《有能なやり手社長爆誕》《スカッとさせてくれてありがとう!!》など、多くの共感の声が上がっています」(前出・テレビ誌ライター)
前出の制作関係者は言う。
「永作さんが、めぐみを説得力あるキャラクターへと昇華できたのは、実は彼女自身も家業のピンチを救っていたことが影響しているのだと思います」
■東日本大震災から半年、行方市をPRする「なめがた大使」に
永作は4世帯が同居する茨城県内のイチゴ栽培農家に生まれた。
「祖父母の代で農園を広げ、地元では有数の規模だと聞いています。幼少期から家の手伝いをして家業の大変さは身に染みるほど知っているはずです。彼女は専門学校に通うため上京し、19歳のときにアイドルとしてデビューしました。テレビ番組で両親の家業を聞かれると『イチゴ農園』とは言わずに『ストロベリーファーム』と呼ぶなど家業へのこだわりがあったといいます」
そんな実家を襲った悲劇――。それが、’11年3月の東日本大震災だった。本誌も当時、永作の実家のピンチを報じている。
「被災地に近いというだけで農作物が放射性物質に汚染されているという風評被害に遭ったんです。その影響で売り上げは激減。イチゴ狩りも中止になりました。永作さんの実家は70メートルの巨大ハウスが並ぶような広大農園ですから、当時の被害額は莫大なものでした」(地元紙記者)
実家および地元の窮地を受け、実は永作は立ち上がっていた。東日本大震災から半年、出身地である行方市をPRする「なめがた大使」に選ばれ、多忙な女優業の傍ら、地元の広報活動に注力していったのだ。
「永作さんは“実家のために自分に何ができるだろう”と大いに悩んだそうです。大使になった永作さんは直後に広報紙に登場して行方市の市長と対談したのです」(前出・地元紙記者)
地元の広報紙で、永作は風評被害に苦しむ地域住民に対して、こうメッセージを送っていた。
《災害に関しては起きてしまったことなので、心が折れないように踏ん張っていくしかないのかなと思っています。ことが大きすぎてわたしがなにか言うのもおこがましい気がするのですが、ほんとうに自分を強く持って頑張ってほしいと思います》(『市報なめがた』’11年10月号)
もちろん、実家への強い思いも込められていたはずだ。永作は’14年にも広報紙に登場して、
《茨城県産(の食材)をいっぱい食べています。スーパーに行って産地名を確認するようになりました。茨城産や行方産は結構多いですよ》(『市報なめがた』’14年10月号)
と、地元への愛情を熱く訴えていた。
■撮影現場にも実家のイチゴを差し入れして……
さらに’15年10月には同市内に農と食の大型複合施設「なめがたファーマーズヴィレッジ」がオープンした。同所の広報担当者は本誌の取材にこう語る。
「なめがたファーマーズヴィレッジはそうした風評被害を払拭するためにも、地元の方々と一緒に作っているヴィレッジです。竣工式には永作さんに来ていただきました。永作さんは当施設のマスコットキャラクターである『焼き右衛門』の声を担当してくださっています」
そんな永作の地道な“草の根活動”は、撮影現場でもたびたび見られたという。
「当時のドラマや映画の撮影現場では、永作さんが差し入れとしてよくご実家のイチゴを持ってきてくださいました。出演者からもスタッフからも大好評でしたね。永作さんはご実家から送られてくる新鮮なイチゴを自ら煮詰めてジャムにしているそうです。あの若々しさもそういった健康的な生活のおかげなのかもしれません。
調理師免許を持っていることもあり、イチゴをサラダにトッピングするなど、仲のよいスタッフの方々と“こういうの作ったよ”と写真を見せて盛り上がってる姿を見たことがあります。“地元の農作物がいかにみずみずしくておいしいか”を共演者の方々やスタッフの皆さんに笑顔で話されていた記憶がありますね。永作さんの後方支援もあり、ご実家の売り上げも回復したそうです」(前出・制作関係者)
家業を続ける厳しさをよく熟知しているからこそ、彼女なりの“営業活動”を行っていたのだろう。
「高橋克典さん演じる夫が病院で亡くなるシーンの撮影は、朝から主演の福原さんの涙がずっと止まらなくて大変だったんです。撮影終了後も号泣する福原さんを永作さんはハグしてずっと介抱していました。その姿に、スタッフたちも涙が止まらなかったんです」(前出・制作関係者)
主演の福原も絶大な信頼を寄せる“強い母”“折れない社長”を体現する永作こそ、“リアルめぐみ”だった――。