2月3日、防衛費増額の財源を確保するための特別措置法案が閣議決定された。法案では財源を税外収入や歳出改革で捻出したとしつつも、不足分に関しては増税に含みをもたせているため、国民の不信につながっているという見方もある。

「ウクライナ情勢、台湾有事リスクなどを鑑み、岸田首相は財源がある・ないにかかわらず、防衛費を現在のGDP(国内総生産)の2%に達するよう予算措置を講じることを決めました。増額分の一部に関しては“国民に負担をお願いする”という岸田首相の発言があった後、“防衛増税”という言葉が一人歩きを続けていて、国民の不安をあおる形になっています」

こう語るのは、自民党税制調査会の幹事でもある、西田昌司参議院議員(64)だ。自民党総裁である岸田首相から増税の検討を指示された同党の税制調査会の会合は大いに紛糾したと西田議員は明かす。議論の結果、防衛費増額で不足する1兆円超の財源を賄う増税策として“法人税”“所得税”“たばこ税”の3つの税目を組み合わせる案を了承。しかし、具体的な実施時期等についての議論は先送りとなっている。

「財源については、これから法制化するまでに細かい設計の議論をします。法人税は、課税額に対してさらに一定の税率(4~4.5%)を課す『付加税』となります。対象は主に大企業で、中小企業はほとんど該当しません」

今回の防衛費増額の財源で、野党から猛反発を受けているのが所得税だ。これは’13年から課税されている東日本大震災の“復興特別所得税”(所得税額の2.1%)の税率を1%引き下げて、新たに1%の付加税として上乗せするというもの。“復興のための予算を防衛費に転嫁するのか”という批判の声もあるが―。

「復興の財源は、国が“復興債”という国債を発行して充てています。復興税は、その国債を償還する費用のための税金です。

復興予算は毎年度確保されているので“復興費用を防衛費に充てる”ということはありません」

たばこ税は、1本3円相当の引き上げを、’24年以降、適切な時期に段階的に実施していくという。

「こうした“防衛増税”の中身について、岸田首相は詳しく国民に説明すべきですね」

国会では防衛増税の問題に加え、岸田内閣の最重要課題の1つである、少子化対策の財源についても、与野党間で激しいバトルが繰り広げられている。その伏線は1カ月前。岸田首相が年頭会見で“異次元の少子化対策に挑戦”と述べた翌日、テレビ出演した自民党の重鎮・甘利明前幹事長の次のような発言が大きな波紋を呼んだのだ。

「子育ては全国民に関わり、幅広く支えていく体制を取らなければならず、将来の消費税も含めて少し地に足をつけた議論をしなければならない」

消費税率の引き上げも検討対象であるとの認識を明らかにしたのだ。この“消費税増税”をにおわせることもミスリードであると西田議員は指摘する。

「今年や来年に個人の税負担が増えるようなことはありません。自民党内でも、そういう議論はまったくしておりません。少子化対策も、防衛予算の追加も、国債を発行すればいいのです。税金だけで予算を組むということは、政府は通貨供給をいっさいしていないことになります。いっぽう、国債を財源として予算を組むことによって、国債発行に際して民間に通貨が供給されることにつながるのです」

しかし、国債発行は将来的な財政破綻につながるのでは、という声もある。

「国は中央銀行(日銀)を通して通貨を発行できるため、国債の発行をしすぎて財政破綻することはありません。

国債発行が国民の借金であるというイメージを植え付けているのは財務省にほかならない。それをうのみにしている政治家や経済学者は、勉強不足だと言わざるをえません」

国債発行のほかに、西田議員がテコ入れすべきと強く主張するのが、防衛費増加分の財源でもある法人税だ。

「法人税に関しては大企業を中心に、この5年間で100兆円を超える内部留保が積み上がっており、全体で500兆円を超えている状況。私は、企業が内部留保をためずに、お金を積極的に循環させるような税の仕組みを考えるべきだとずっと提言してきました。法人税の引き上げにより、企業が内部留保をためるよりも、従業員の賃金アップや新たな設備投資に積極的になる環境を作ることが大切。それが経済を回し、民間・個人にお金が循環していくことにつながると考えます」

西田議員は、このことを今後も自民党内に強く訴えかけていく意向だという。

「岸田首相には、国民を置き去りにすることなく、強いリーダーシップを取っていただきたい」

党内からの声に、首相の“聞く力”は発揮されるのか――。

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