「2024年から始まる新NISAは、お金のプロから見ても、文句のつけどころがない、個人の資産を増やせる制度です。ただ、来年を待たず、今すぐNISAを始めたほうが、お得になりますよ」

そう語るのは、家計再生コンサルタントの横山光昭さん。

2万6000件以上の家計相談に乗り、『はじめての人のための3000円投資生活』(アスコム)シリーズは累計100万部を超えるベストセラーとなっている。そもそも“NISA”とは何だろう?

「正式名称は『少額投資非課税制度』です。通常、個人で投資をして運用益が出ると約2割の税金を取られますが、NISAでは少額・長期で一定の金額までの投資は、運用益が非課税です」

また、現行の制度では一般NISA、つみたてNISAの併用はできない。

「これが、来年からの新しいNISAでは一本化されます。期間は無期限で毎月の積み立ての『つみたて投資枠』と、投信信託、個別株などを扱う『成長投資枠』を併用できるうえ、合わせて1800万円まで非課税になります。必要なときには、購入したものを売却できます」

6月21日には、投資信託協会が、「成長投資枠」で購入できる約1千本の投信を発表したばかり。人生100年時代、50代や60代でも、NISAを始めるのは、決して遅くないと横山さんは言う。

「50代でも、80~90代までを視野に入れてぜひ始めてほしい。夫婦2人なら3600万円まで無期限で非課税です。新NISAでの投資は、お金が増えて税金がかからない貯金のようなもの。“老後資金2千万円問題”の不安の解決にもなります」

少額でも、長期間コツコツ積み立てを続けていれば、大きな資産を形成できる可能性がある。

「もし、毎月3万円をつみたてNISAで投資し、年利6%で運用できた場合、最初はそれほど収益はありませんが、10年後には元金360万円、運用益約131万円に。

20年後には元金720万円、運用益約666万円。30年後には元金1080万円、運用益約1933万円となります。時間をかけて積み立てたものは、一生成長する『金の卵』です」

本誌記者も、横山さんへの取材をきっかけに5年前に「つみたてNISA」を始めている。年間40万円を積み立ててきたところ、現在の時価は293万6000円に。なんと手数料をのぞいた運用益は80万円を超えているのだ。

「ぜひ、まだNISAをやっていない方には、できるだけ早く、現行のつみたてNISAから、スタートしてほしいですね」

■新NISAになっても旧NISAの非課税枠は残る

“来年1月の新NISAを待ってもいいのでは?”と尋ねると、「一日でも早いほうがいい」と横山さん。5つの理由があるという。

「まず、積み立ては『長期』で、一日でも投資期間が長いほうがいい。次に、今始めると、今年購入したぶんは2042年まで非課税で運用できるうえ、それとは別に来年から新NISAの非課税枠1800万円が与えられます。運用できる非課税枠が増えて得ですよね」

3つ目の理由は、来年の新NISAに向けていい練習になること。

「何も知らずにいきなり始めるよりも、ネット証券の手続きや積み立ての投資の方法など、経験を積めますし、どんな商品があるのか情報収集もできます」

4つ目の理由が物価高時代に「資産寿命の延命」にもなること。

「物の値段が高騰するインフレ、円安もあり、今お金の価値が落ちていることに気づいていますか? 今の100万円は以前の96万~97万円の価値しかありません。

置いておいても価値が下がっていくのであれば、運用して価値をあげたほうがいいですよね。そして最後に、現在は夏のボーナスを資金に始めやすいタイミングです」

■買うべき商品はふたつだけ

実際に始めるなら、手数料の安い「ネット証券」でNISA口座を開設しよう。

「手数料が安くて使い勝手もいい『楽天証券』や『SBI証券』がいいでしょう。今はスマホでも開設できます。証券会社のサイトで『口座開設』のページを開きます。メールアドレスを送信すると、申し込みのURLが送られてきます。難しい場合は家族に手伝ってもらうのもいい。ただし、“やってもらって”はダメ。自分で、失敗しながらも、あきらめずに口座を開設しましょう」

口座の種別は、NISAがメインであれば「特定口座・源泉徴収なし」を選んでおくといい。そして必ず「積み立て」でスタ―ト。

「買うべき商品は、楽天証券でもSBI証券でも、この2つだけ! 『全世界株式インデックスファンド』『全米株式インデックスファンド』。いずれもリスクが比較的低く、長期的には安定的に成長が望める投資信託です」

そして、新NISAの受付けが始まれば、今年の投資分はそのまま残して申し込もう。

買うべき商品は変わらない。

「投資では、一時的に損が出ることもあります。しかし、焦って売ったりしないこと。過去の例を見ると、20年スパンでは収益があがっています。待つことが大事。また、慣れてきて投資額を増やしたいと思っても、何かあったときのために、すぐにおろせる預金として月給の7.5カ月分は残したほうがいい。無理はせずに楽しんでコツコツと積み立てましょう。今、NISAをやる人、やらない人では、今後、人生に雲泥の差ができる時代になりますよ」

重い腰を上げて、この夏こそ、NISAを始めませんか?

編集部おすすめ