「何もかもが値上がりしているいまこそ、お金の使い方を見直す必要があります。
そこでおすすめなのが、意識的に“お金を使わない日”をつくること。
そう提案するのは、約25年にわたりファイナンシャルプランナーとして家計の相談に乗ってきた黒田尚子さん。
「当然ですが、お金は使えば減ります。なので、まずは月1回『支出ゼロ円デー』を決め、買い物に行くのをやめることです。これまで多くの家計を見てきて感じることは、お金が貯まらない人は無計画に買い物しがちで、なんとなく消費しているものが多いんです」(黒田さん、以下同)
実は、特売品を求めて毎日スーパーに行く、ドラッグストアに寄り道する、散歩帰りに商店街をのぞく、スマホの契約を5年以上見直していない……そんな習慣が、ムダを生んでいる。
「お金を使う回数を絞ると、行かなくてもよかった買い物に気づいたり、安いからと手にしていた総菜を買う頻度が低くなったりして、お金の使い方にメリハリが出てきます。ふだんどんなことにお金を使っているのかを意識することで、何を買うべきかという目的が明確になりお金への意識が高まります」
ゼロ円デーでとくに節約できるのが「ラテ・マネー」だという。カフェラテ1杯分程度の見過ごされがちな浪費のことで、知らず知らずのうちに回数が重なり多額の出費になっているお金のことだ。上図のように“ちりも積もれば山”となる。
「お金が貯まらない人は、ラテ・マネーに消えている恐れがあります。半額シールにつられて買う特売品や、なんとなく寄るコンビニでの消費などは、ゼロ円デーを設けることで、確実に減らすことができるでしょう」
さらに、やりくりする力や計画性も養われる。
「ゼロ円デーにドレッシングがなくなっても、家にあるオリーブオイルと酢、はちみつなどで手作りできますし、冷蔵庫の中身を計画的に使いきる、出かけるときには弁当や水筒を準備するなど、工夫してやりくりするクセがつきます。
また、食材や日用品のストックを切らさないように意識することで、安い日を狙って必要な分だけ上手に買い物ができるようになるなど、節約のテクニックが自然と身につくのです」
慣れたら、ゼロ円デーを増やしてみよう。
さっそく、ゼロ円デーのやり方を見ていこう。
「ゼロ円デーは、お金を使うことが少ない日を選びます。たとえば、週末に買い出しに行く家庭であれば土日は難しいので、“3週目の月曜日”など平日に設定すると成功しやすくなります。
また、定年前なら給料日前、年金生活者なら年金支給日の前日と奇数月の15日など、意識してやりくりする必要がある日を設定するのもおすすめです」
「ただし、厳しくやりすぎると、別の日に浪費してしまったり、長く続かなかったりするため、まずは月1回程度で成功体験を楽しんでから、買い物の頻度に合わせて、少しずつ増やし、週1回から3回程度に設定してください」
長く続けるコツはあるのだろうか。
「特売品につられがちなのでチラシを見ないこと。その商品は安く手に入れられるかもしれませんが、一緒にムダ買いしてしまうのであれば、チラシは見ないほうが家計全体で見ると節約できます。
ゼロ円デーを達成できた日は、カレンダーや家計簿に印をつけるなどして『見える化』しましょう。頑張った達成感を味わいやすくなり、次のモチベーションにつながります。何日お金を使わない日があったのか、ゲーム感覚で行うくらいでOKです」
最近、お金を使わない日を設けて節約することを“ノーマネーデー”と呼び、SNSを中心に話題になっている。その背景にキャッシュレス決済の普及があると黒田さんは分析する。
「これまでは財布にお金がなければ買うのを諦めていましたが、今はスマホで決済できたり、チャージして買い物ができたりします。
キャッシュレス化が進んだことで、お金が足りないから買えないという場面がなくなってしまったのです。
今の時代に合ったゼロ円デー。楽しみながら老後資金を貯めてみてはどうだろうか。