人生100年時代を生きる女性にとって、70歳はまだまだ遅くない“人生の転換点”。それまで家事や仕事や子育てに追われ、夫婦関係に悩んできた人が「自分のために生きる」道を選ぶチャンスでもあります。
ひとり暮らし歴が26年になる小柳ルミ子さん(71)は、「変な言い方ですが、せっかくひとりになったんですから、この時間をエンジョイしない手はないですよね」と話す。
芸能界屈指のサッカー好きでもある小柳さんの1日のスケジュールは、サッカーを観戦する時間から逆算することが多い。
「ヨーロッパの試合だと日本時間では深夜に当たるため、仕事を終えて帰宅後、朝までライブで観戦します。たとえば今日のスケジュールだと、観戦後に3時間ほど寝て、愛犬のルルにご飯をあげて、ボイストレーニングをして、取材を受けて、帰宅。ルルにご飯をあげて、自分もご飯を食べて、またサッカーを……そんな毎日です(笑)」
仕事をしながらも大切な趣味の時間を捻出すべく、まず削っているのは睡眠時間だという。そして料理をすることもやめた。
「結婚していたころはバランスのいいものを作りたいと、料理本が染みだらけになるまで読み込んで、時間のある限り9品目作っていたんです。ところがある日、集中しすぎて貧血を起こして、包丁を持ったまま倒れてしまって。私は何事も全力を出してしまう性格で、中途半端が苦手。自分のためにそこまでする必要がないなと、料理はまったくしなくなりました」
仕事帰りにコンビニや成城石井に立ち寄って好きな総菜を選ぶ時間を満喫していると続ける。
「芸能界でずっと働きづめで走ってきたから、これからは人生を思い切り楽しみたいと思っていて。自分の意識を変えないと出かけることも少なくなっていきがちなので、休みの日にはあえて自分から声をかけて、自分で車を運転して、友人たちに会いに行く。そういう時間を率先して作っています」
人生を楽しむためにやめたことは、「気を使って」「義理があるから」という誘い方。「好きな人と何を食べるか」を自分でしっかり選ぶことで、より豊かな時間を過ごせるようになったという。
■豊富な経験があるからより人生を楽しめる
世の中では断捨離ブームのなか、小柳さんは「昔買ったもの」に再び光を当てている。
「ずっと眠っていたシャネルの装飾品を引っ張り出して身に着けています。40~50年前のものが多いのですが、人の目に触れることによって価値を再確認できるというか。自分が汗水垂らして稼いだお金で買ったものなので、私の歴史に新しい命が宿るような新鮮な気持ちです」
オシャレをして出かけ、自分の時間もしっかり確保。いいメリハリでひとり暮らしを謳歌している。
「時間を自由に使えて、食べたいものを食べられる。
もともと、物事の「先が読める」タイプだったというが、年齢を重ねていくなかで、精度が上がり、より「読みやすく」なったという。
「私は、なかなか味わえないような成功体験も、地獄のような苦しみも、両極端に経験してきたと思っています。その経験が自分の身を助けてくれているというか、『このくらいの苦しみで終わるな』とか『ここまでは上り詰めないな』とか、なんとなくわかるので、生きるのが楽になりました」
どんなふうに人生を楽しんでいきたいか尋ねると、「『美しく、かっこよく、健康に年を重ねる』というイメージに向かって、楽しみながらも日々の努力を重ねていきたいです」と凜々しく答えてくれた。
(取材・文:金子弥生)