「食後にいつも眠くなる」というアナタは、高血糖の疑いあり! 低カロリーと思って安心して食べていると、実は血糖値が爆上がりしている食品があるんです!!

「健康にいいからと、朝食をオートミールや果物入りスムージーにしていませんか? 実はどちらも食後の血糖値を急上昇させます」

そう指摘するのは、やさしい内科クリニック院長で、糖尿病が専門の山村聡医師だ。

現在、糖尿病で治療を受けている患者は、579万1千人。

その予備群は2千万人(令和2年 厚生労働省「患者調査の概況」より)。

「食材への誤解があり、血糖値をコントロールできずに症状が悪化する糖尿病や生活習慣病の患者さんを診てきました」(山村医師、以下同)

山村医師は、血糖値について正しく知ることが糖尿病予防の第一歩であると痛感したという。そこで、自らさまざまな食品を食べて血糖値を測り、YouTubeやSNSで情報発信を続けた。測定法は、Free Styleリブレという計測器で、血糖値と近似値のグルコース濃度を食前と食後に計測する。

「ちまたで“健康にいい”といわれる食材でも、血糖値が急上昇するものも多い。ヘルシーだと過信してつい食べすぎると、さらに血糖値が上がってしまうんです」

また、ヘルシーさの指針の一つである「GI値(グリセミックインデックス)」も、古い概念だと指摘する。

「これは食後の血糖値が上昇する速度を示す数値ですが、1980年代という、きちんと血糖値を測れない時代の指標。さまざまな要因で数値が変動するため注意が必要です」

■インスリンの分泌力が弱まる50代以降で高血糖のリスクがグンと高まる

そもそも、血糖値とは、血液1dLに溶けているブドウ糖の数値のこと。この濃度が基準値よりも高くなり血液中に余った糖が停滞する状態が「高血糖」だ。

「基準値は、空腹時の血糖値が110mg/dL未満。食後2時間が140mg/dL未満です。これを超える高血糖が続くと、血管がボロボロになり糖尿病や動脈硬化、脳梗塞をはじめ全身に支障をきたす糖尿病合併症も発症します。

原因は、食べすぎや肥満などの生活習慣の乱れだけでなく、加齢もあります。50代以降では、食事の内容や量が、それまでと同じでも、血糖値を下げるホルモンであるインスリンの分泌力が弱まります。それによって、スムーズに糖が処理できず、高血糖の状態が引き起こされるのです」

さらに、血糖値が乱高下する「血糖値スパイク」も、動脈硬化の原因になるので、要注意だという。

食後、血糖値が140mg/dLを超える、また、30分で60mg/dL以上の上昇幅があると血糖値スパイクの目安。そこで、左のオートミールを食べたときの血糖値の上昇の変化を表したグラフを見てほしい。食前の105mg/dLから、食後60分で基準値を大きく超える181mg/dLと血糖値が急上昇している。

「食後20分を境に、急激に血糖値が上がり60分後にピークを迎えて下がっていく形が、とがったスパイクのようです。ヘルシーといわれるオートミールですが、糖質量が多く血糖値スパイクが起きていると考えられます」

■ベジファーストよりも効果的な食べる順番

山村医師の実測をもとに、どんな食べ物が血糖値を急上昇させるのかを知っておきたい。

低GI食の代表格であるそばだが、食後50分後には172mg/dLまで血糖値が上昇。また、デトックス効果が期待されるバナナやキウイ入りのスムージーは、161mg/dLまで上昇する。

一方、すしだと177mg/dLまで血糖値が上がるが、刺身だけだと食後もほぼ上がらない。

「注意すべきは炭水化物の糖質量。

ご飯、パン、パスタ、うどん、そば、いも、果物、フルーツジュースが血糖値を引き上げます」

次に食べる順番に気をつけよう。

「野菜を先に食べるベジファーストよりも、炭水化物の主食を最後に食べる『カーボラスト』が血糖値の上昇を緩やかにしてくれます。前菜などから食事を始めて、最低10~15分たってから炭水化物を取るようにしましょう。また、かみ応えのあるナッツを食前に食べる『ナッツファースト』や、タンパク質(プロテイン)を先に取る『プロテインファースト』も満腹中枢を満たしてくれるので食べすぎを防ぎます。さらに、乳脂肪は糖質の消化と吸収を遅らせる働きがあるので、糖質の多い食品は牛乳を飲みながら食べると急な血糖値の上昇を防ぐことができます」

■食後に眠くなったら、高血糖のサインかも!!

測定器がない私たちにもわかる血糖値スパイクのサインがある。

「食後に眠気を感じるのは、急上昇した血糖値を下げようと体内でインスリンが大量に分泌されていることが原因。食後2時間ほどで『おなかがすく』のも血糖値の急降下が起きています。そのような場合はご飯など炭水化物の量を減らしましょう」

更年期を迎え、基礎代謝も落ちる50代は、食の見直しタイミング。よかれと思った食材がアダとなることのないよう注意したい。

■意外と血糖値が爆あがりする食品

【1】オートミール

食物繊維が多くヘルシー食品として人気だが、血糖値はぐんぐん上昇し60分後には181mg/dLに。上昇幅は76mg/dL。含有される糖質量が多く、米や小麦と同じ穀類と考えるべし。

【2】そば

健康志向から、うどんより低GI食品のそばを選ぶ人も多いが、大きな誤解。つなぎで小麦を使っているそばでは、うどんと同等の100mg/dLと高い上昇幅に。十割や二八そばが◎

【3】玄米

白米より栄養が豊富で血糖値抑制効果があるといわれるが、血糖値は白米に負けないくらい上昇し、その幅は103mg/dL。白米は116mg/dL。やはり玄米も米は米。

【4】スムージー

毒出し効果を期待して朝食をスムージーにする人もいるが、果物が多いとご飯1杯分並みの血糖値の上昇幅に。ちなみにすいかは驚異の上昇幅126mg/dL。野菜を多めにしよう。

【5】キムチ

食物繊維や乳酸菌が多く含まれ腸活になると人気の発酵食品だが、甘味のあるキムチは糖質が高く、血糖値は急上昇。焼き肉のおともにするなら、もやしナムルがベター。

■意外と血糖値が上がらない食品

【1】唐揚げ

小腹がすいたとき、コンビニのレジ横にある肉まんよりは唐揚げを選ぼう。糖質も多くなく、衣も少ない。

さらに、油は吸収されにくいので血糖値の上昇スピードが穏やか。

【2】刺身

ほぼタンパク質と脂質で、極めて糖質が少ない刺身では、血糖値はほとんど上昇しない。だがシャリにのせてすしにした途端、上昇幅は82mg/dLと爆上がり。

【3】ステーキ

肉は部位にかかわらず、タンパク質より脂質が多く糖質の消化吸収も緩やか。しかし、ハンバーグのように、つなぎにパン粉などの炭水化物が使われていると血糖値は上昇。

【4】ケーキ

砂糖と乳脂肪の組み合わせのケーキは、吸収スピードが遅いため意外にも血糖値の上昇は緩やか。一方で、砂糖たっぷりのあんこが詰まったどら焼きは血糖値スパイクのもと。

【5】ビール

中性脂肪が気になるビールだが、実際は糖質量が少なく、サワーほど血糖値は上昇しない。甘くてジュースのようにガブガブ飲んでしまうサワーのほうがよっぽど危険。

【教えていただいたのは】

山村聡先生

やさしい内科クリニック院長。著書に『糖尿病専門ドクターが検証! 血糖値を下げる食事法について、実際に試してみた』(KADOKAWA)、YouTubeチャンネル「やさしい内科医のY’s TV」も人気

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