6月6日、東京・豊島岡墓地で「寬仁親王例祭 墓所祭」が行われ、寛仁親王の長女・彬子さま、次女・瑶子さまらが拝礼された。

“ひげの殿下”として親しまれた寛仁さまが薨去してからすでに13年。

だが、その“遺言”はいまも令和皇室に影響を及ぼしているという――。

「宮内庁としてはコメントすべき立場にないが、皇族方の減少は大きな課題であり、それを踏まえた議論はしっかりと進めていただきたい」

宮内庁の西村泰彦長官は、6月12日の記者会見でそう語った。皇室担当記者によれば、

「安定的な皇位継承に向けた皇族数確保策の与野党協議が難航していることについて、西村長官が苦言を呈した形です。

与野党は、(1)女性皇族が結婚後も皇族の身分を保持する、(2)旧宮家出身の男系男子を養子縁組で皇族とする――この2案を軸に協議を進めてきました。

衆参両院の正副議長は、今国会中に成案の取りまとめを目指していましたが、夏の参院選以降に見送られる公算となり、“年内に結論が得られるかどうかも不透明”見方すら浮上しているのです」

立憲民主党の野田佳彦代表によれば、自民党とは“女性皇族が結婚後も皇族の身分を保持する案”を先行して合意することになっていたという。

「しかし自民党の麻生太郎最高顧問は、野田代表との“合意”の事実を否定しており、『多くの党が支持している養子縁組案を棚に上げ、取りまとめが行われることは不自然で、まかりならない』と、強く訴えているのです。

身分保持の問題は、女性皇族方の結婚など人生設計に関わることであり、宮内庁内でも早期の取りまとめを期待する声が上がっていました。野田代表も『ちゃぶ台返しであり、極めて遺憾だ』と、厳しく批判しています」(前出・皇室担当記者)

自民党の「安定的な皇位継承の確保に関する懇談会」の会長を務めている麻生氏。その強硬な姿勢について、静岡福祉大学名誉教授の小田部雄次さんはこう語る。

「そもそも皇室制度という国家全体にかかわる問題が、一部の政治家たちの密室政治によって進められていること自体好ましくありません。

また与野党の協議は女性皇族の身分保持と旧宮家の男系男子の養子縁組という2案に限定されており、皇位の長子継承や、女系天皇の容認について協議を避けていることにも危惧しています。

さらに言えば、皇室の方々やその姻戚も、政治的発言を極力慎むことは暗黙の前提であるにもかかわらず、信子妃の実兄である麻生氏が、皇室典範改正に関わる懇談会の会長を務めていることには強い違和感を覚えます。

ただ寛仁親王が生前に唱えられていた“男系男子論”も、義兄にあたる麻生氏の主張のよりどころになっているのは間違いないでしょう。また親王と義理の兄弟であることも、保守派からの支持を集めている理由の1つと思われます」

“もの言う皇族”として知られていた寛仁さま。生前には、福祉団体の会報にエッセイを執筆されており、’22年には『ひげの殿下日記』(小学館)として出版された。そのなかには男系男子による養子論についての明確な記載もある。

《(2)現在の女性皇族(内親王)に養子を元皇族(男系)から取る事が出来る様に定め、その方に皇位継承権を与える(中略)(3)元皇族に、廃絶になった宮家(例=秩父宮・高松宮)の祭祀を継承して戴き、再興する(将来の常陸宮家・三笠宮家もこの範疇に入る)》

■「女性天皇と女系天皇の違いさえ知らない」と呆れられた

前出の皇室担当記者はこう語る。

「実は寛仁さまは、歴史上存在した一代限りの女性天皇については認められていました。しかし多くの男系維持派は、“女性天皇誕生は女系天皇(母方のみ天皇の血筋を引く天皇)につながる”として、認めていません。

寛仁さまの妃・信子さまは、以前から愛子さまをとても敬愛されているそうです。それにもかかわらず、夫の生前の主張が、愛子さまの天皇への道を阻み、また実兄の“ちゃぶ台返し”が、愛子さまの将来を不透明なものにしていることに複雑な胸中でいらっしゃるのではないでしょうか」

男系維持派の旗頭となっている麻生氏だが、寛仁さまを知る宮内庁関係者は、次のように話す。

「ちょうど小泉内閣が、有識者会議を作って皇室典範改正を検討していたころ、寛仁さまが麻生氏についてこう語っていたのです。

『あいつは、女性天皇と女系天皇の違いさえ知らないんだぜぇ』

少なくとも当時の麻生氏は、皇室についてほとんど知見を持っていなかったと伝わっています。自民党の宗教系支持団体のなかでも最大規模で、国政・地方選挙でも数十万の票を動かせるという『神道政治連盟』も男系男子による皇位継承を主張しています。

そうした保守的な団体の支持をつなぎとめる存在であることで、麻生氏は党内での影響力を保ち続けているのです」

はたして麻生氏が男系維持にこだわり続ける真意とは……。皇室の未来が、政治家たちの打算に左右されてはならない。

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