コロナ禍が落ち着き、インバウンド需要の急速な回復などを受け、宿泊費の高騰が続いています。東京商工リサーチによると、2024年10~12月の平均客室単価は、コロナ禍でもっとも値下がりした2021年より7割上昇しました。
特にビジネスホテルでは、2021年に6千794円という最安値を記録しましたが、2024年は1万3千986円と2倍以上の高騰です(2025年4月)。旅行をあきらめる人もいるのではないでしょうか。
そんななか、働きながら旅をする「おてつたび」が話題です。おてつたびとは、参加者が行きたい場所を訪れ、一定時間働いて収入を得ます。当然、最低賃金をクリアした給料で、短時間に絞ったスポットワーク的な働き方が中心です。そして、仕事以外の時間はその地域を楽しむというものです。
費用面では、旅先までの交通費は参加者が負担しますが、宿泊場所は原則、仕事先が用意するので無料です。宿泊費高騰の影響を受けずリーズナブルに、さらにお小遣いを稼ぎながら旅ができます。
仕事は宿泊施設やレストラン、農家のお手伝いなどと多種多彩です。たとえば秘湯の温泉旅館で料理の配膳や客室の清掃、奄美大島の老舗レストランで接客業務、自然豊かな地方でさつま芋の収穫作業など。参加者に無料の温泉チケットを配布したり、昼食はまかない料理を提供するなど、特典を用意する仕事先もたくさんあります。
仕事期間は1週間程度から1カ月単位のものなどさまざまです。
■おてつたびは50代以上にも増えて約3割を占めている
2025年5月には、宿泊施設でのおてつたび導入が1千件を超えたといいます。また、参加者の登録数は約7万8千人。参加者の約半数は10~20代の若い人ですが、50代以上も2021年の8%か2025年には27%と増加しています。
参加者へのアンケートでは、約9割の人が「今後のキャリアや人生に影響を与える旅だ」と回答しています。これまで経験していないことが実はたくさんあって、それを何歳になっても体験できる新鮮さが、おてつたびの魅力だと思います。
おてつたびのほかにも、緑豊かな地方に滞在し農業や漁業などを体験する「グリーンツーリズム」や、一般の農家に宿泊させてもらう「農家民泊」など、費用を抑えながら自然を味わう方法があります。物価高騰で家計は厳しいと思いますが、疲れた心を癒す旅行をあきらめず、これらの仕組みを活用してはいかがでしょう。
また、最近は観光地が混雑を極める「オーバーツーリズム」も問題です。わざわざ人ごみに出かけたくないという人もいるでしょう。ですが、有名観光地をはずす、時期をずらすなどの“ずらし旅”ならゆったりした旅も可能でしょう。
少し暑さが落ち着く秋に向けて、私も旅行計画を練ってみたいと思います。