「普通預金金利が200倍に!」
そう驚いた人も多かっただろう。三菱UFJ銀行が’25年3月以降、普通預金金利を0.2%に上げると発表したときのことだ。
「金利上昇は、大手銀行以上にネット銀行や地方の銀行で加速しています。なかでも地方の銀行や信用金庫などが注目するのはシニア世代。定期預金の金利などを優遇し、シニア世代の資金を囲い込もうとしています」
そう話すのは、ファイナンシャルプランナーで『お金の増やし方』(主婦の友社)の著者、西山美紀さんだ。
団塊の世代を含むシニアは人口が多い。しかも60歳以上が日本の個人金融資産の6割超を保有する“お金持ち世代”だ。そのため、シニア限定のお得な銀行預金が多いのだという。
「特に、自行で公的年金を受け取る人を優遇する銀行が多く見られます」(西山さん、以下同)
年金受取口座は、給付振込口座と同様、メインバンクの扱いだ。特に年金受給者は現在もキャッシュレス決済より現金ユーザーが多く、年金支給日には銀行に出向くという人が多い。
「銀行として接点を持ちやすい顧客です。平均寿命を考えると60代からでも20~30年間。
特典として、定期預金の各銀行が基準とする「店頭金利」に、金利を上乗せすることで特別な金利を提供する。たとえば島根銀行は、店頭金利の0.21%に0.6%を上乗せする。合わせると優遇金利は0.81%となり、店頭金利の約4倍だ。
ほかにも、退職金の入金や自動車免許の返納などを条件として優遇金利を設けるものが多いが、SBI新生銀行は特徴的だ。
「SBI新生銀行にはもともと資産残高や取引回数などによる顧客のステージがありますが、60歳以上なら無条件で最上位ステージの特典をつけています。普通預金金利は大手銀行の2倍ですし、ATM利用やネット振り込みの手数料の無料回数も多いのが特徴です」
現金派にとって、ATM利用手数料の無料化はありがたい。特に、窓口で他行宛ての振り込み手数料は990円という銀行もある。月10回まで無料はメリットが大きい。
いっぽう最近は、ネット銀行を中心に1年定期の利率が上昇している。オリックス銀行だと1.2%、東京スター銀行は1.11%など1%超も増えている。
「ネットの扱いに慣れている人にはとてもいい選択肢だと思います。ただ高齢で実店舗のある銀行がいいという人は、無理しなくてもいいのでは。
しかし、「シニア限定」をうたっているものでも注意すべき預金があると西山さんは指摘する。
「気をつけたいポイントは4つ。
1つ目は、定期預金が投資信託や外貨預金などのリスク商品とセットになっていないか、です」
定期預金が高利率でも、投資信託などの手数料が高いために、利益が目減りするものもあるそう。
「2つ目は定期預金の期間です。いくら高利率でも『3カ月定期』などはよく考えてほしいです」
金利は1年分、年利で表す。年利2%と高利回りをうたっても、3カ月定期なら2%×(3カ月/12カ月)=0.5%となるのだ。
「3つ目は定期預金の満期後の利率です。優遇金利は初回の満期まで、というケースが多いのです」
満期後は店頭金利で定期預金を継続するものや、自動解約され普通預金に入金されるものもある。満期はいつかをチェックし、その後どうするかも考えておこう。
4つ目は預入限度額だ。高利回りでも、じつは上限が50万円という場合もあるから要注意。
「銀行はたとえ破綻しても、元本1千万円とその利息までは預金保険制度の対象で保護されます。
また、1千万円以下でも、いくらずつ定期預金にするかをよく考えてほしいと西山さんは言う。
「定期預金の解約は多くの場合、全額が一度に解約されます。使う目的や時期などによって分けて定期預金にしておくといいでしょう」
今回紹介したお得な口座はほんの一部。お住まいの近くにも優遇金利はあるかも。探してみよう。