「“お達者な100歳”を増やすため、介護業界を盛り上げていきます」
こう語るのは“シニアのための体操のお兄さん”として活動する簗瀬寛さん(40)。介護の「ご」と予防の「ぼう」が由来の「ごぼう先生」の愛称で知られている。
「寝たきり・認知症予防の体操を考え、デイサービスで体操ボランティアを始めました。当初は、僕の動きを正しく真似してもらうことに必死でした」
しかし、なかなか真似してもらえなかったり、うまく体が動かずやる気を失ってしまう高齢者も多かったという。
「試行錯誤の末、目指したのが教育TVの体操のお兄さん。体操を『正しく』ではなく『楽しく』やってもらう空気作りが大切だ! と考え、人を引き込むパフォーマンスを研究。出来不出来にかかわらず“笑顔になってもらう”ことを心がけるようになったのです」
実際にごぼう先生の指導スタイルは、表情豊かで、動きもコミカル。ちょっとした漫談も交えた体操プログラムは、各地で爆笑の嵐だという。
■「ごぼう体操」はどんな人も置き去りにしない
さらに体操は、簡単な動作から、頭と体を同時に動かす、脳にも効くものまでさまざま。「身体レベルによって差が出ないよう」ごぼう先生によって試行錯誤されている。思いどおりに体が動かなくても、ネガティブになることなく、むしろ笑みがこぼれる──。
そんな活動は口コミで広がり、全国各地の施設から体操指導や講演の依頼が届くように。
「今は体操よりもみなさんの思い出作りが目的です。ふだんDVDを使っている施設を訪問したとき、『よく来てくれた』と涙を流してくれる人もいます。ファンの方には、一緒に記念撮影したり、握手したりして応えています。『次にごぼう先生に会うときまで、体操を頑張って長生きする』と再会を心待ちにしてくれるおじいちゃん、おばあちゃんたちに“いつまでもお気楽にお達者で”いてほしいと思っています」
さらに最近はTikTokやYouTubeで“本音の介護士”として介護現場の現実を発信。介護士の日々の事件簿、利用者やその家族とのトラブルなどの「介護あるある」を込めた動画が大バズリしている。内容はとてもリアルなのに、持ち前のコミカルな演技でデフォルメされていて、思わず笑ってしまう。全国の介護業界で働く人の共感はもちろん、介護とは程遠い若い世代にも刺さっているようだ。
「介護の仕事は、将来的には『希望、期待、救世主』の“3K”になる可能性があります。これからますます需要の高まる介護の分野で仕事ができることは、僕にとっては可能性しかありません。僕の活動を通じて、介護界のイメージがよくなればうれしいです」