40代以上の日本人のおよそ3人に1人、約2千800万人が悩まされているという腰痛。さまざまなタイプの腰痛があるが、まず腰が痛いと感じたら多くの人がお世話になるのが湿布薬だろう。
「腰痛のある高齢者の2人に1人は湿布を使用しているという報告もあります」
こう話すのは、広島市にあるシムラ病院の特別院長で整形外科医の藤林俊介先生だ。
腰痛はその症状や痛みの幅が広く、脊椎の下部にある腰椎や仙骨周辺の骨や関節による痛み、神経系の痛み、筋肉の痛み、内臓など、原因はさまざまある。
その中でも、骨・神経・内臓に起因する痛みは、痛みの程度がひどかったり、長引いたりする場合もある。重篤な病気が潜んでいることもあるため、急な症状は、ぜひ医療機関で診断を仰いでほしい。
とはいえ、とりあえずの痛み緩和には即効性のある湿布薬。慢性的な腰痛の場合、痛みで身動きがとれないと生活の質も下がり、筋肉が落ちて寝たきりを招いてしまう。根本的な治療が難しい場合は、湿布を日常的に使用して、痛みを緩和することも大切だ。
■“筋肉痛”のような痛みは血流改善で快方に向かう
特に湿布が使われるのが、筋肉や筋膜の張りやコリが原因となる「筋筋膜性腰痛」だ。
「筋筋膜性腰痛は、脊柱起立筋やその筋膜の炎症によって生じる急性の腰痛です。激しい運動や労働で筋肉を酷使したり、長時間同じ姿勢でいると、腰の筋肉に負荷がかかります。そうして筋肉が張ったり、凝ったりしますが、安静と局所の血流改善で治癒することが多いとされています」(藤林先生)
一方で、長い付き合いの「慢性腰痛」となる腰痛は、椎間板や神経組織などの損傷が原因となる場合が多い。その痛みは腰だけでなく、背中、お尻、脚に広がる場合や、しびれを伴う場合もある。
今回は、腰痛に悩む患者が多く来院するという、アスリートゴリラ鍼灸 接骨院の院長で柔道整復師の高林孝光さんに対処法を聞いた。
急性の痛みには患部を冷やす“冷湿布”を、慢性の痛みには“温湿布”を利用するのがよいという。
「冷湿布にはメンソール系の皮膚表面から筋肉を冷やす働き、温湿布にはカプサイシンで皮膚表面を温める働きがあります。筋肉が炎症を起こしているような急性の痛みは、冷湿布で鎮静させます。
慢性の痛みの原因の一つは血流が滞っていることなので、温湿布で血流を促進させます。温湿布は、痛みを緩和させるだけでなく、筋肉を緩めて可動域を広げるという働きもあります。この2つの働きを組み合わせることで、痛いところにだけ湿布を貼るよりも、より快適に動けるようになるんです」(高林さん、以下同)
今回は、読者世代に多い6タイプの腰痛について、湿布の貼り方を教えてもらった。
■足のしびれには太ももにも湿布を貼ると◎
タイプ(1)の筋性腰痛には痛いところに冷湿布を、それと連動して働く筋肉には温湿布を貼る。タイプ(2)の前屈腰痛は、負荷により痛みの方向が異なるのが特徴。
「背骨のところに冷湿布を1枚、慢性的な痛みならそのサイドに温湿布を。急性の痛みなら3枚すべてを冷湿布にしましょう」
そのうえで、コルセットなどで患部を安定させることを忘れずに。タイプ(3)のけ反り腰痛も、同じ貼り方で対処可能だ。
タイプ(4)のぎっくり腰は、突然筋肉の炎症が起こった状態。腰だけでなく、腹横筋のある脇腹も冷やすと痛みが和らぐ。タイプ(5)は、50代以上の女性に多くみられる。仙骨の上あたりと腰に1枚ずつ冷湿布を貼り、鼠径部には温湿布を貼ることで血流を促すと、脚の動きが楽になる。
タイプ(6)は、しびれを伴うやっかいな腰痛。硬くなっている太もも裏にも温湿布を貼ることで、筋肉を和らげて歩きやすくする。
ただし、湿布の種類や頻度には注意が必要だと藤林先生は言う。
「最近の湿布薬には、経皮吸収でも内服薬と同じ血中濃度に達するほど高濃度の鎮痛剤(NSAIDs)が含まれているものもあります。また、温湿布は長期間貼るとかぶれることも。使用説明書をよく読み、貼る回数や枚数は医師に相談することを推奨します」
症状が長引くことも多い腰痛。温・冷湿布を使いこなして症状を改善し、動ける体になろう!