連日、肌が痛くなるほどの強い日差しが照りつけている今夏。

そのせいか、「体がだるい」「疲れがとれない」など、不調や猛暑によるストレスを感じている人も少なくないだろう。

なかでも多いお悩みが“夏の便秘”だ。

■猛暑のせいで6割近い人が便秘に!

池田糖化工業が、全国の20~50代の男女オフィスワーカー400人を対象に実施した「夏の冷え・便秘に関する調査」(’24年6月)によると、「夏に便秘になりやすい」と答えた人は、なんと55%にものぼっている。

「夏の便秘の原因は、“自律神経の乱れ”にある場合が多いです。

近年の異常な猛暑と、室内と室外の寒暖差によって自律神経の働きが乱れることで、腸の動きが悪くなるからです」

そう解説するのは、東京都市大学教授で温泉療法専門医の早坂信哉医師。

自律神経には、人がリラックスしているときに働く「副交感神経」と、活動しているときに働く「交感神経」の2種類があることは、よく知られている。

「胃腸の働きをつかさどるのは、リラックス時に働く副交感神経です。しかし、今夏のような猛暑が続くと、人間の体は、“非常事態”と判断して、心拍数や血圧などを上げる交感神経のスイッチが入りっぱなしになります。

その結果、適切なタイミングで副交感神経が働かなくなり、胃腸の働きが鈍ることで、便秘になるのです」(早坂医師、以下同)

■自律神経の乱れとクーラーによる寒暖差が便秘の原因

つまり、この酷暑の状況を、体は「のんびり胃腸を働かせている場合ではない」と判断しているというわけだ。

加えて、室内と室外の“寒暖差”も、自律神経を乱す原因になっている。

「クーラーが効いている室内は、およそ25~26度。ですから、35度を超える猛暑の場合、屋外との気温差は10度以上になっています。

夏場は、冬のように防寒具を着ることで体感温度の調整ができないため、室内と屋外の極端な寒暖差は体にとってストレスとなり、常に交感神経が優位になってしまうのです」

加えて、クーラーによる“冷え”も、自律神経を乱し、夏の便秘を重症化させてしまうという。

「自律神経は、体温や内臓の代謝といった体全体の機能を調整しています。血流も自律神経がコントロールしているもののひとつですが、交感神経が優位な状態が続くと、血管が収縮して血流が悪くなります。

そこに、クーラーによる“体の冷え”が加わると、いっそう、自律神経のバランスが乱れ、夏便秘になりやすいという悪循環に陥ってしまうのです」

早坂医師が言うように、冒頭に示した調査結果でも、「冷えを感じる環境下で便秘になりやすいと感じたことがありますか?」との問いに対し、約半数が「よくある・ある・たまにある」と回答している。

■お湯と冷水に交互に入る“温冷交代浴”でリセットできる

つまり、夏の便秘を解消するためには、自律神経の乱れをリセットする必要があるのだ。

「自律神経の乱れを整える、ということは、交感神経と副交感神経が正しいタイミングで切り替わるようにするということです」

そのために効果的なのが、早坂医師が推奨する、お湯と冷水(ぬるま湯)に交互に入る “温冷交代浴”だ。

この温冷交代浴は、もともと、ヨーロッパの温泉療法として取り入れられていたものだという。

「お湯で体を温めると血管が拡張し、冷水に入ると血管が収縮します。これを繰り返し行うことで、血行がよくなり、交感神経と副交感神経が正しいタイミングで働くようになるのです」

やり方は、次のとおりだ。

「まず、40度くらいのお湯に約3分間、肩までつかります。湯船を出たら、30度くらいのぬるま湯のシャワーを手足に30秒ほどかけましょう。必ずしも水風呂に入る必要はなく、夏なら30度のシャワーを手足にかけるだけで血管が収縮します」

これを3回繰り返すだけで血流が促され、自律神経の働きが整ってくるという。

■便秘だけでなく夏バテにも効果あり

「湯船に胸までつかるのを『暑い』と感じるようであれば、半身浴でもかまいません。

浴室から出る間際に、仕上げとしてぬるま湯のシャワーを手足にかけると、暑い夏でも湯上がりがスッキリします」

「体にテンポよく温度差を感じさせることが大事」なので、体や髪を洗うのは、温冷交代浴を行う前にすませておこう。

「ぬるめのシャワーを手足にかけるのは冷たくて抵抗がある場合は、38度くらいのぬるいお湯に炭酸系の入浴剤を入れ、約20分間ゆっくりつかる方法でもかまいません。

炭酸ガスが血管から吸収されて血管が拡張し、血行を促進してくれます」

血行が促進され、自律神経が整ってくると、自然に便秘も解消されていく。一度の入浴でも自律神経は整うが、習慣化することでより効果は期待できる。しかも、冬に比べお湯と水の温度差が小さいため、初心者でも挑戦しやすい。

加えて、温冷交代浴には、次のような効果も期待できるという。

「いわゆる夏バテの症状である、夏のだるさや疲れ、筋肉疲労なども解消されていきます。また、血行がよくなることで、足のむくみなども軽減されます」

こうした夏の疲れは、夏のうちにとっておきたい。

「夏の不調を解消しないまま秋を迎えてしまうと、“秋バテ”として不調がだらだらと続いてしまう」と早坂医師。

「秋になると、今度はクーラーによる寒暖差ではなく、季節の変わり目による寒暖差で交感神経が刺激されてしまい、便秘や体のだるさの原因となってしまうのです」

こうした不調を慢性化させないためにも、酷暑の夏は“温冷交代浴”で夏便秘を解消し、スッキリした気分で秋を迎えよう!

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