若草色の振り袖をお召しになった愛子さまが、居並ぶ招待者に晴れやかなご表情で挨拶されている。8月22日、天皇皇后両陛下は「TICAD(アフリカ開発会議)」に出席した各国の首脳夫妻らを招いた茶会を催され、愛子さまも出席されていた。

「このTICADには、アフリカから33人の首脳級を含む49カ国の代表が参加しており、宮中茶会に招かれる賓客も多数に上りました。そうした事情もあり、秋篠宮ご一家のほか、常陸宮妃華子さまや三笠宮家の信子さま、彬子さまと瑶子さま、高円宮妃久子さまも参加され、皇族が多数集まるにぎやかなひと時となりました。

15日には愛子さまも両陛下とご一緒に、御所で外務省中東アフリカ局の担当者からご進講を受けていました。ご準備もあって、各国首脳夫妻と懇談される愛子さまのご様子は実に堂々としたもので、ご公務に臨むスタイルを着実に確立されてきているとお見受けしています」(宮内庁関係者)

そして愛子さまは、“生涯をかけ臨む”ご公務の分野も築き上げられようとしている。

宮中茶会の同日、愛子さまが9月6日から新潟県を訪れ、「防災推進国民大会2025」に出席されることを宮内庁が発表したのだ。皇室担当記者は、

「同大会は“防災の国体”、『ぼうさいこくたい』として、内閣府が2016年から主催している防災に関する日本最大級のイベントです。行政や民間企業、教育機関などで防災活動に関係する人々が一堂に会します。

講義型セッションや来場者向けの体験型ワークショップを通じた国民の防災意識の向上や、防災関係機関の連携を深めることなども開催の趣旨となっています。また愛子さまのご勤務先である日本赤十字社(以下、日赤)も参加しています。

第10回となる今回は新潟県で開催され、皇族のご参加は初めてのこと。愛子さまは大会で、能登半島地震の福祉支援についてのセッションなどを聴講される予定です。さらには、2004年の新潟県中越地震で全村避難を経験した山古志村(現・長岡市)などにも足を運び、復興した地域の人々との交流も行われるそうです」

■生涯をかけて臨まれるご公務に

新潟での「ぼうさいこくたい」ご臨席が決まった意義について、長年皇室番組に携わる放送作家のつげのり子さんはこう話す。

「日赤の社員として愛子さまは、日常的に災害を意識する機会が多い環境におられます。 国民一人一人がどのように災害に備え、そして災害が起きればどのように助け合い、関係機関それぞれが手を差し伸べることができるのか、こうしたことを常に考えていらっしゃるのでしょう。

今後とも若い世代と、防災について語り合い、ともに助け合えることの大切さを広く知らしめていただきたいと思っています」

毎年「ぼうさいこくたい」は、全国の都道府県の持ち回りで開催されている。こうした一面も、今後愛子さまが生涯をかけて携わるライフワークとしてこの行事を定められていくのではないかと、前出の宮内庁関係者は明かす。

「第10回大会のみならず、毎年全国の開催県に足を運ぶことを望まれていると聞きます。

日赤でのお仕事で、愛子さまは災害ボランティアの支援や育成に関わられてきました。そうしたなかで今後、皇族として災害が発生した際の救助や救援、その後の被災地の復旧・復興にどのように関わっていくべきか、日を増すごとに思いを募らせ、お考えを深められていったと伺っています。

特に今回第10回大会が開かれる新潟県は、21年前の中越地震で大きな被害が出ています。当時愛子さまは3歳になられる前でしたが、最大震度7を記録し、関連死を含めて68人の犠牲者が出た災害は、その後愛子さまが災害に関心を抱くきっかけの一つとなったと……。このような背景もあり、新潟県での『ぼうさいこくたい』への参加は、愛子さまも熱望されていたようなのです」

2024年1月、愛子さまの日赤へのご就職が発表されたが、折しもこの直前、能登半島地震が発生している。これも愛子さまの転機の一つだったのだろう。

元宮内庁職員で皇室解説者の山下晋司さんはこう語る。

「能登半島地震発生の翌2月に行われた気象庁長官と防災担当の内閣府政策統括官の天皇皇后両陛下へのご進講に、大学卒業前の愛子内親王殿下が同席されています。今回お成りが決まった防災推進国民大会は、嘱託職員となられた日赤でのお仕事と重なる部分も多いといえます。

愛子内親王殿下がお出ましになれば大きく報じられることになり、国民がより防災意識を高めていくきっかけにもなります。また日赤のお仕事とも重なる部分があれば、将来的にご結婚し皇室を離れることになっても、この行事に関わっていかれる可能性はあると思っています」

■徹底され続ける“被災地に寄り添う”使命

両陛下はじめ皇族方の定例のご公務は、さまざまな要素を加味して慎重に選ばれている。

今回の決定には、愛子さまご本人と侍従職の奮闘もあったという。

「皇室の方々のご公務は、それぞれの行事日程が重ならないようにするなど、配慮のうえで進められています。かつ内容が国民的な関心や時代性に即したものであり、さらには両陛下がその意義を認められるものでなければなりません。

以前から侍従職の側近たちは、“皇女にふさわしい生涯のご公務の実現を”と、5月に臨まれた世界災害救急医学会をはじめ、愛子さまの問題意識にも沿った趣意がある行事を探し続けてきたのです。

また愛子さまも、水の問題を通じて治水にお詳しい天皇陛下、国交省出身の幹部たちとも、『ぼうさいこくたい』について相談を重ねられていたようでした。今回ようやく定期的に参加される行事が決まり、宮内庁幹部も一様に安堵していました」(前出・皇室担当記者)

愛子さまは2022年の成年に際しての記者会見で、

「国民と苦楽を共にしながら務めを果たす、ということが基本であり、最も大切にすべき精神であると、私は認識しております。『国民と苦楽を共にする』ということの一つには、皇室の皆様の御活動を拝見しておりますと、『被災地に心を寄せ続ける』ということであるように思われます」

と述べられている。

大地震や津波、各地での豪雨による土砂災害や水害という日本で頻発する自然災害。

その猛威に直面し苦しむ人々が生まれないようにすること、不幸にも被災した人々がいれば、心を寄せ、救いの手を差し伸べていくこと……そうしたなさりようを、愛子さまは上皇ご夫妻、両陛下から受け継ぎ、育まれてきたのだ。前出の宮内庁関係者はこう続ける。

「毎年9月1日の『防災の日』には、宮内庁は全庁を挙げて防災訓練を行います。御所では両陛下も加わられ、避難訓練も実施されています。“災害の発生を防ぐことは難しくとも、人々の努力で被害を減らすことはできる”というお考えを、上皇ご夫妻はことあるごとに訴えておられました。こうしたご姿勢が受け継がれているからこそ、愛子さまの一貫した行動指針が育まれたのです。

新潟での『ぼうさいこくたい』を端緒とし、命を守る行動の大切さ、災害の経験や教訓、被災時に支え合う取り組み……国民に強く広く呼びかけていくことが生涯の使命であると、いま愛子さまは覚悟を固められているのでしょう」

国民の生命を守るため……使命に覚醒した愛子さまのお声は、闇に包まれる被災者の心に、希望の光を灯すことだろう。

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