9月6日に放送された『有吉の夏休み2025 密着77時間in Hawaii』(フジテレビ系)での、タレントの野呂佳代(41)に対する“体型いじり”が波紋を呼んでいる。

今年で放送13回目を迎える毎年恒例の同番組は、有吉弘行(51)が気心の知れた仲間たちと夏休みを過ごすという企画。

今年は新メンバーに、有吉と同じ所属事務所の野呂が抜擢された。

近年は女優としても大活躍している野呂だが、親しみやすいキャラクターを活かしたバラエティ力の高さにも定評がある。そのため、自身の体型を“自虐ネタ”にすることも多いのだが、番組内では有吉がことあるごとに、野呂に対して「(もっと)食べられるだろ?」「ゾウ語喋るなよ」などと、 “体型いじり”をしていた。そのことに、不快感を覚えた視聴者もいたようで、Xでは批判も目立った。

《初めてこの番組観たけど野呂さんに体型や年齢いじりしつこくやってて不快過ぎた。テレビってまだこんなの放送するんだ。有吉無理になった》
《有吉の夏休み、野呂佳代ちゃんの体型いじりマジでしつこい。 うまくかわしてるから番組が成り立ってるだけで老害すぎるー》
《有吉の夏休み。好きな番組なんだけどさ、野呂ちゃんの体型いじりすぎ。バラエティーだし、野呂ちゃんが上手く笑いにしてくれてるんだろうけど、ちょっとしつこい》
《この番組の何が面白いわけ?容姿いじりでしか笑いを取れない天狗の有吉。時代に合ってない》

‘90年代後半に『進め!電波少年』(日本テレビ系)で大ブレイクし、その後仕事がほぼなくなるも、’00年後半から“毒舌”を武器に再び返り咲いた有吉。しかし、ここ数年は今回のように、トレードマークである“毒舌”に拒否感を抱く人も増えてきている。

その理由について、お笑い評論家のラリー遠田氏はまず「時代の変化」をあげる。

「女性の見た目を笑いのネタにすることは、一昔前までは珍しいものではなかったわけですが、だんだんと“見ていて気分が良くない”と思う人が増えてきました。実際、最近のテレビではほとんど見られなくなっていると思います。

一方で、例えば、アンガールズ田中卓志さんやクロちゃんといった男性の芸人に対しては“気持ち悪い”などの容姿いじりが許容される風潮が残っています。それも本来なら許されないことであるはずですが、対男性だと批判されにくく、野呂さんのような若い女性だと叩かれやすい現状はあると思います」

令和のコンプライアンス感覚からすれば当然の反応である一方、同番組のコンセプトが“リゾートではしゃぐ身内の悪ノリ”といった設定であることに加え、出演者同士の関係性などの背景にも留意すべき点があると指摘する。

「野呂さんは、有吉さんと同じ事務所の年の離れた後輩であり、本人はすごくバラエティへの意識が高いわけです。見た目をいじられることも含めて、“何でもやります”という姿勢で臨んでいるプロのバラエティタレントなんです。

それを全部分かった上で、有吉さんが親しみを込めて、あえて容姿いじりをしてるというのが今回の構図です。しかし、そんな2人の関係性を知らずに番組を見ただけの人がひどいと感じるのも無理はないと思います。ただ、その辺を全部わかってる人にとっては、そこまで騒ぐほどのことではない、ということになります」

ネット上では、共演者の“みちょぱ”こと池田美優(26)が有吉の“野呂いじり”を非難せず、一緒に笑っていたことについても“性格が悪い”などと批判する意見も散見されたが――。

「そこで、みちょぱさんが急に真面目になって『有吉さん、野呂さんの見た目をいじるなんてかわいそうじゃないですか。野呂さんも傷ついてるんだからやめてくださいよ』などと正論を言ったら、それこそかわいそうです。

たぶん野呂さんの立場としては『ちょっとみちょぱさん、水を差さないでくださいよ』ってなると思うんですよ。

そもそも、“容姿いじりされてかわいそう”とか、“野呂さんも傷ついたはずだ”などという視聴者の反応に対して、野呂さんが実際にどう思うかというと、たぶん自分の意図とは違う形で受け取られたことを残念だと思うはずなんですよね。自分が有吉さんと楽しくワイワイやっていて、そこで笑いが生まれたのなら、視聴者には“面白かった”と思ってほしかったわけじゃないですか。批判をする側の人は、そういう視点も持ってほしいなとも思います」

そもそもバラエティは「一種のフィクション」だとラリー氏は指摘する。

「バラエティ番組では、出演者が番組を成立させるために、それぞれの役割を演じてる部分が少なからずあります。ドラマの中でいじめのシーンがあっても、役者に対して怒ったり同情したりする人はほとんどいないでしょう。バラエティの中の“いじり”も本質は同じなんです。もちろん、だからといって何をしてもいいわけではなく、最低限の配慮は必要だと思いますけどね。

結局、現実社会で容姿いじりに傷ついている人がいる以上、それを連想させるから、たとえフィクションでも不愉快だと感じる人はいるでしょう。

そう思うこと自体は自然なことですし、その立場からバラエティで現実の容姿いじりを連想させるような表現について“良くないんじゃないか”という議論はできます。そこに関してはテレビの制作者や出演者も日々考えているはずです。ただ、だからといって、少しでも不快に思う人がいたらただちにその表現をやめるべきかというと、そこまでは言い切れないと思います」

とはいえ、有吉の“毒舌”が世間の支持を得づらくなってきている現実も確かにあると指摘する。

「同じ発言でも立場によって見え方は変わります。有吉さんが毒舌キャラで再ブレイクした頃であれば、売れていないマイナーな芸人がテレビに出ているメジャーなタレントに無理やり噛みつくところに下克上的な面白さがありました。それが、今では有吉さん自身が大御所になってしまったことで、上の人が下の人をいじめているみたいに見えてしまうのかもしれないですね。

ただ、有吉さん自身も当然そのことはわかっていて、徐々に自分のキャラを変えてきているとは思います。出てきた当初のように何にでも噛みつくようなことはなくなっていますし、毒舌っぽいことを言うときにもだいぶ配慮した言い方をしているような印象があります」

有吉に限らず、時代の変化とともにアップデートが求められているという。

「バラエティでやってることは社会の現実を反映しているだけなんです。世の中で本当に許されないとされていることは、バラエティでやっても面白くないので誰もやりません。だから、世の中の空気が変われば、バラエティでの笑いも自然に変わるわけです。今回のような反応も踏まえて、細かくチューニングして番組は作られていると思います。

結局、バラエティの作り手や出演者はみんな、ただ笑ってほしい、楽しんでほしいと思っているだけなので、見てる人の大半が“こういうのは楽しくないです”と思うなら、そういうことは自然にやらなくなるんですよね。当たり前の話ですが、見ている人が本気で不愉快に思って嫌がっているのに、“それでも俺たちは女性の容姿をいじりたいんだ!”などと思っている人はいないですからね。結局すべてはエンターテイメントとしてやっていることだというのは理解しておいた方がいいでしょう」

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