「『国宝』には、梨園で絶賛の声が相次いでいます。とくに主演の吉沢さんの熱演に感動し、“改めて自分の演技について考え直した”と語る歌舞伎役者までいたようです」(歌舞伎関係者)

俳優の吉沢亮(31)が主演する映画『国宝』が、全国各地で爆発的な人気を集め続けている。

同作は、8月までに興行収入124億円を突破。これまでの邦画実写作品でも『踊る大捜査線 THE MOVIE 2 レインボーブリッジを閉鎖せよ!』(’03年)に次ぐ歴代第2位となった。

「’26年の初めには、アメリカでの公開も決定しており、同年3月に開催される『第98回米国アカデミー賞国際長編映画賞』の日本代表作品にも選出されています。まさに社会現象と化していて、名実ともに“令和を代表する映画の一本”になったといっても過言ではないでしょう」(映画業界関係者)

吉沢は本作で、任侠の一門に生まれながら、歌舞伎役者の家に引き取られた主人公・立花喜久雄を演じている。映画にも出演している四代目中村鴈治郎(66)が歌舞伎の演技指導を担当した。

8月下旬に都内で行われたトークイベントで、鴈治郎は吉沢が稽古を始めた当初、その出来の悪さを見て「これはダメだ」と思ったと明かしている。

だが、吉沢の取り組みには鬼気迫るものがあったという。

「吉沢さんは’23年1月から歌舞伎の稽古に入ったそうで、まずは3カ月ほど基本的なトレーニングに励んだといいます。その後に踊りの稽古に進み、全て合わせて1年半の稽古を積んだそうです。

その後、撮影を京都で行いましたが、その3カ月間はほとんど撮影現場とホテルの往復のみ。心身ともにギリギリの状態で撮影を行っていたようです」(前出・映画業界関係者)

吉沢自身も、稽古や撮影を振り返って以下のように語っている。

《演じていてすごく苦しかったです。

自分で自分をとことん追い込んだし、毎日「つらいな」と思っていたのですが、そこまでやって、ようやく表現できる世界みたいなものは撮れたと思っています》(「好書好日」6月6日配信)

■「発声や表情が素晴らしい」と太鼓判

そんな血の滲むような努力の甲斐もあり、『国宝』には、多くの歌舞伎役者たちも称賛の声を送っているのだ。

「人間国宝の片岡仁左衛門さん(81)を父に持つ片岡孝太郎さん(57)も、自身のブログで《歌舞伎座の楽屋では、映画『国宝』の話題でいっぱいです》と綴っているほか、市川團十郎さん(47)は、自身のYouTubeチャンネルで、『この映画をきっかけに歌舞伎に興味を持つ方が増えてくれたら嬉しい』と絶賛しています」(前出・歌舞伎関係者)

8月の会見でも團十郎は「舞台に立っていても、客席の雰囲気がいつもと違う」と語っており、『国宝』のヒットは実際の舞台にも影響を与えているという。

こうした背景もあって、現在、梨園では、ある“期待の声”が湧き上がっているというのだ。

別の歌舞伎関係者が続ける。

「吉沢さんが劇中で見せた『二人藤娘』や『曽根崎心中』、『鷺娘』での演技は、本職の歌舞伎役者からも高く評価されています。

そのため“吉沢さんを実際の歌舞伎の舞台に出してみたい”という声が梨園で方々から上がっているのです。

梨園は、長らく観客の減少に苦しんできました。そんな状況下で『国宝』が人気を集めたこともあり、集客を期待できるのでは、という狙いもあるようです。さらにそれ以上に“ぜひ吉沢さんと一緒に舞台に立ちたい”と、共演を熱望する声も上がっています」

歌舞伎の公演を手掛けている松竹にも、そうした声は届いているという。

「『国宝』の配給は東宝が行っています。当初は松竹で配給するという話もあったそうですが、公開できる映画館数が東宝には及ばず、東宝による配給になったと聞いています。長らく歌舞伎公演に携わってきただけに、松竹関係者は忸怩たる思いでいるようです。

ある人間国宝の一家も映画館に足を運んだそうで、“もっと彼の歌舞伎が見たい”“彼の存在は歌舞伎界の刺激になる”などと、周囲に熱弁しているそうです。

演技を1年半で習得したという吸収力はもちろん、とりわけ発声の仕方や女形特有の表情の見せ方が素晴らしいと太鼓判を押していたとか。

松竹としても吉沢さんの起用を前向きに検討していると聞いています」(前出・別の歌舞伎関係者)

歌舞伎役者以外の俳優が出演した例としては、滝沢秀明(43)が手掛けていた『滝沢歌舞伎』のほか、佐々木蔵之介(57)の『スーパー歌舞伎II 空ヲ刻ム者』(’14年)への出演などがある。

吉沢が本物の歌舞伎の舞台に立つとすれば、どのようなものになるのだろうか。

「『国宝』のファンとしては、歌舞伎の本拠地である銀座・歌舞伎座の舞台に上がることを期待すると思います。とはいえ、劇中で吉沢さんが演じた演目のほとんどが主役のため、歌舞伎座でのいきなりの主役起用はあまり現実的とは言えないでしょう。

しかし新橋演舞場などは『滝沢歌舞伎』や『スーパー歌舞伎』の公演会場となったこともあり、今後そうした場所で吉沢さんが劇中の演目に出演することは、十分にありえるのではないでしょうか」(前出・別の歌舞伎関係者)

実際の舞台で、“国宝級”の演技を見ることができる日は――。

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