現在、江口のりこさんとW主演を務めた映画『あまろっく』が公開中の中条さんに話を聞きました。
本作は、兵庫県尼崎市を舞台に描かれる家族のドラマ。中条さんは、町工場を営む竜太郎(笑福亭鶴瓶)が突然連れてきた、二十歳の再婚相手・早希を演じています。江口さん演じる年上の義娘に臆することなく接していく早希ですが、中条さんいわく「おせっかい」なところが自分と似ているとか。
日が暮れるまでに家に帰らないとダメだった
――本作のタイトルは、尼崎市にある、海抜0メートル地帯に海水が流れ込むのを防くロックゲートの愛称“尼ロック”から取られていて、寝ているだけに見えて、実は一家を守っている父を示しています。中条さんが、知らないうちに守られていたなと感じる存在はいますか?中条あやみさん(以下、中条)「やっぱり両親です。私、今でも横断歩道を渡るときには、青信号でも、車が来ていないかどうか絶対に確認するんです。小さなころから“信号を信用するな”と教わっていたので、体に染みついていて。
中条「すごく思ってました。日が暮れると家に帰らないとダメだったんですけど、冬なんて18時とかもっと前に暮れますよね。遅れるとめっちゃ怒られていたので、“怖い!”“厳しい!”と思ってました。子どもだとどうしても叱られていると感じてしまうんですよね。でもそれって守られてたんだなと感じます」
新しく家族になることは、チームになって力をあわせられること
――『あまろっく』は家族の物語ですが、物語を通じて改めて気づいたことはありますか?中条「私が育った家族もそうですし、この物語の家族もそうですが、家族であってもひとりひとり性格が違うし、違う人が一緒にいるってすごく難しいことだと思うんです。
でも違うからこそ、新しい価値観を取り入れられるというメリットもあるし、新しく家族になることは、チームになって力をあわせられることでもあると思います。そして人と人がひとつの家で暮らすからこそ、豊かになれるのだろうと思います。
あと、第三者の存在は大きいと感じます」
中条「家族以外にもご近所さんだったり、自分を知ってる誰かが、第三者として意見を言ってくれたり見守ってくれていたりする。この作品でいえば工場の人たちとか、鮎川さん(駿河太郎)とか、南雲さん(中林大樹)になるのかな。
“あなたの意見も分かるけど、こういう見方もあるよね”とか言ってくれる人がいると、自分や家族を冷静に見られる。そのことは、自分の私生活でも、この作品を通しても感じるので、第三者の存在ってすごく重要だと思います」
私もおせっかい。人と人をくっつけようとしたり
――早希ちゃんは、竜太郎の再婚相手として近松家にやってきます。つまり江口さん演じる優子にとっては義母という立場ですが、早希ちゃんはガンガン接していきますね。ただキャラクター的には自分と共感する部分はすごくあります。私自身、おせっかいなところがすごくあって、人と人をくっつけようとしたりもしますし(笑)、家族のなかで誰かがケンカしていたら仲良くさせようとします。みんなで旅行に行こうと提案したりするのも、私かお母さんです。おせっかいなところは似てると思いますね」
中条「たぶん今までで一番、素だと思います。関西弁の役は以前にもやりましたが、家族の物語ということもあって、素が出ています。私自身、もちろん家族といるときは関西弁ですし、この撮影でも本当の自分の家族といるように過ごしていました。
今回、実家から撮影に通っていたのですが、寝て起きて、そのまま現場に行く感じでしたし、本読みもお母さんに付き合ってもらってました。
江口さんは、現場でいつもぼやいていました(笑)
――W主演を務めた江口さんの印象も教えてください。中条「江口さんとはCMでお会いしたことがありました。作品でもご一緒できたらいいなと思っていた矢先だったので、すごくびっくりしました」
中条「人としてもちろん素晴らしい方なんですけど、ちょっと不器用なところがあったりして、現場でぼやいていることが多くて(笑)、すごく可愛らしいなと思いました。どんどん愛おしい存在に見えてきて、本当に娘のように思える瞬間がありました」
「いいものが撮れた」と監督とふたりで泣いた
――最後に、完成した作品をご覧になったときのことと、読者にメッセージをひと言お願いします。優しさって目に見えなかったり、あとで知ったりしますが、“私、あの人に守られてたんだな、思ってもらってたんだな”といったことを再確認できる物語かなと思います」
【望月ふみ】
70年代生まれのライター。ケーブルテレビガイド誌の編集を経てフリーランスに。映画系を軸にエンタメネタを執筆。現在はインタビューを中心に活動中。@mochi_fumi