今回はそんな状況の中でヒヤヒヤしてしまった女性のエピソードをご紹介しましょう。
プール通いがマイブームの30歳女性
宮本眞子さん(仮名・30歳/会社員)は、最近プールに行くのがマイブームです。「私が一人暮らしをしているマンションから自転車で15分くらいのところに、清掃工場の熱を利用した温水プールがあるんです。リーズナブルな値段で利用できるので、気楽な気持ちで通っているんですよね」
プールに泳ぎに行けた日は、心身ともに余裕があると感じられ、充実した気持ちになれることがとても気に入っていました。
「そして何よりリフレッシュできてストレス発散できますし、ダイエットにもなって夜はよく眠れるし、いいことばかりなんですよね」
スカートなのに……うっかりパンツを忘れた
その日も眞子さんは、自宅でテレワークを終えていつものようにプールに行くと疲れるまでしっかり泳いだそう。「心地よい疲労感に包まれながらシャワーを浴びて、着替えようとしたら……間違えてブラを2つ持ってきてしまったことに気がつきました。なんとパンツ……ショーツを忘れてしまったんですよ」
自宅からプールへ行く場合はいつも水着を服の下に着てくるため、来るときにはいてきたショーツもありません。
「その日はブルーのロングスカートをはいてきていたので、まぁ裏地も付いているし透けて見えるようなことはまずないだろうし、ちょっとスカスカするのが気になるけどそのままノーパンで帰ればいいやと思いました」
こんな日に限って、風が強い!
そして自転車に乗り家路を急ぐと、その日は風が強く、定期的にスカートがフワッと舞い上がってしまいかなり焦ったそう。「風でパンチラしてしまうのも相当嫌ですが、なんでノーパンの日に限って? と思わず舌打ちしてしまいました。両手はハンドルを握っているし、片手でスカートを押さえながら運転するとフラフラして危ないし、どうすればいいの? という感じでしたね」

「とにかく不安ではやく家に着きたい! と思い、風が弱まった瞬間にスピードを上げたら、今度は自転車のチェーンにスカートが巻き込まれてしまったんです」
急停車して転倒しそうになってしまい、なんとか持ちこたえたもののヒヤッとした眞子さん。「もしこのままノーパン丸出しで激しく転んでいたら……」と想像して震えたそう。
「しかもチェーンからスカートを外そうと引っ張ったらかなり破れてしまい、機械油で黒くベトベトに汚れて、悲しくなりました。このスカートはお気に入りで、まだ2回しかはいてないのに」
いいなと思っていた男性が目の前に現れた
ただでさえノーパンで心もとないのに、さらにスカートが破れ足があらわになってしまった眞子さんは「もしかして呪われている? それとも何かの罰ゲーム?」と自分のついていなさを何かのせいにしたくて仕方がない気持ちになりました。「なるべくスカートの破れた部分が後ろになるようにして、また巻き込まれないように気をつけつつ、強風が吹くと止まり、スカートを押さえながら走っていると……横断歩道の向かいに見覚えのある男性がいて、私に会釈してきたんですよ」
その男性は、よく眞子さんがコーヒー豆を買いに行っているコーヒー豆専門店を1人で切り盛りをしているオーナーの斉藤さん(仮名・30代後半)でした。
「斉藤さんは一重で塩顔のイケメンでずっとかっこいいなと思っていたけど、個人的な会話は全くしたことがなくて……。それにしても何でこんなノーパンでスカートがボロボロのタイミングでうっかり出会っちゃうの? もっと万全の時だったら嬉しかったのにという感じでした」
「偶然ですね」親しげに話しかけられたけど
近づいてきた斉藤さんは笑顔で「偶然ですね、実は僕あそこのマンションに住んでいるんですよ」などとフレンドリーに話しかけてきてくれましたが、眞子さんはとてもじゃないけど落ち着いて話を聞ける余裕がなかったそう。「ノーパンだと人ってこんなに自分に自信が持てなくなるんだなと思いました。そしてまた強風が吹いてきてスカートがまくり上がりはじめ、怖くなった私はつい話を切り上げて、逃げるように自転車を漕いで自宅に駆け込み、まっすぐクローゼットに向かいました」
そしてやっとショーツがはけた安心感は、なにものにも変えがたいものでした。
「それ以来、斉藤さんの店にコーヒー豆を買いに行っても、あの日みたいに個人的な話をしてくれる気配はまるでなくて……。私の挙動不審な振る舞いにきっとドン引きしちゃったんでしょうね」とため息をつく眞子さんなのでした。
<文・イラスト/鈴木詩子>
【鈴木詩子】
漫画家。『アックス』や奥様向け実話漫画誌を中心に活動中。好きなプロレスラーは棚橋弘至。著書『女ヒエラルキー底辺少女』(青林工藝舎)が映画化。Twitter:@skippop