誰しも一度や二度はコンプレックスに悩まされて苦しんだ経験があるのではないでしょうか。

なんで?! 乳首に“アレ”を貼っていた彼氏。その「悲しすぎる...の画像はこちら >>
今回は、ひょんなことから恋人のコンプレックスと向き合うことになった女性のエピソードをご紹介しましょう。


まだ素じゃないの? なかなか自分を出さない彼

笠原希美さん(仮名・32歳/契約社員)は、マッチングアプリで知り合った隆介さん(仮名・33歳/会社員)とお付き合いを始めました。

「初めてのデートの時には、隆介とあまり会話が弾まず心配になったんです。でもその後、慣れていくにつれて話は面白くなるし、弾けるような笑顔も飛び出しはじめて、安心したのを覚えています」

そんな隆介さんの、シャイで最初から自分の良さを出せない不器用なところに「この人には嘘がなくて信用できそうだな」と好感を持った希美さん。積極的に隆介さんをデートに誘い、コミュニケーションを重ねました。

「私が押しきる形でお付き合いがスタートしたんですが……。せっかく私の部屋に泊まりに来ているのに、まだリラックスしてもらえていないなと感じる瞬間があって。……まぁまだ知り合って3ヶ月ぐらいしか経っていないので仕方がないことなのかもしれない、と思っていました」

ランチに向かう途中、子どもに水をかけられてしまう

そんなある日、隆介さんが隠れ家的な穴場のイタリアンにランチの予約を入れてくれたそう。

「そのお店は住宅地にあり、分かりにくかったので地図アプリを見ながら2人でさまよっていたんですよ」

するとその日はとても暑かったため、ある一軒家のガレージで数人の子どもが、水着姿でビニールプールで遊んでいました。

なんで?! 乳首に“アレ”を貼っていた彼氏。その「悲しすぎる理由」に共感が止まらない…
プール
「『すごい夏って感じ! 気持ち良さそうだな』と微笑ましい気持ちで子どもたちを見ていました。そしたら1人の男の子と目が合った途端に、その子が持っていたホースの先をすぼめて水流を強くして、いきなり私に向かって放水してきたんですよ

すると、隆介さんがサッと前に出て、身をていして希美さんを守ってくれたそう。

「おかげで隆介の頭と白いTシャツがずぶ濡れになってしまって。その男の子に『こんなことしたらダメだよ!』と声をかけてその場を立ち去ったんですが、その時にちょうど、着替えを持ってきていることに気がついたんです」

実はその数日前、希美さんの友人がオーナーをしているアパレルブランドに遊びに行った際に、『よかったらこれ、彼氏とお揃いで着てよ』とTシャツを2枚もらっていたのです。その日に偶然、隆介さんの分を持ってきていました。

「ちょうど近くに小さな公園があったので『あの物陰で着替えてお店に急ごうよ! 予約の時間が迫ってるし』と、隆介のTシャツを脱がそうとして、裾を持って顔の方へ引っ張り上げたんですよ」

なんと、彼の乳首には「アレ」が!

すると、なんと隆介さんのあらわになった乳首……があるはずの部分には、ニップレスが貼られていてました

「その瞬間、隆介が『キャー!』と叫んで後ろを向いてしゃがみ込み、そのあまりにも大きな声に驚いて私は思わず後ずさりしてしまいました」

なんで?! 乳首に“アレ”を貼っていた彼氏。その「悲しすぎる理由」に共感が止まらない…
ニップレス
しばらく妙な沈黙の時間がありましたが、隆介さんが覚悟を決めたのか新しいTシャツに着替えると「ごめんね、理由はランチを食べながらゆっくり話すから」と希美さんの手を引っ張り、無事に時間通りお店に到着することができたそう。


コンプレックスを隠すために貼っていた

「そして話を聞いてみたら、以前同僚と一緒にサウナに行った時に“乳首が大きい”とイジられたことがきっかけで、それ以来TシャツやYシャツを着た時の透けが気になるようになりニップレスを貼るようになったそうなんですよ」

それまで誰からも乳首の大きさについて指摘されたことのなかった隆介さんは、その言葉に傷ついてしまったのです。「もしかしたら、今まで付き合ってきた歴代の彼女も優しさから口には出さなかっただけで、みんな心の中では俺の乳首を変だと思っていたのかもしれない」とどんどんコンプレックスが大きくなっていったということでした。

「その話を聞いて、『あ、だから今まで私に心を開いていないような瞬間があったんだな』と腑に落ちたんですよ。私に極力乳首を見せないように気を張って過ごしているんだから、一緒に家にいてもリラックスできるはずないですよね」

「その同僚の感覚がおかしい」と伝える

そんなコンプレックスのために女性から遠のいていた隆介さんは「このままじゃいけない」と意を決してマッチングアプリを始め、運良く希美さんとお付き合いができるようになりました。幸せを感じていましたが、その一方で「でもこの乳首を見たら幻滅されてしまうかもしれない」という怖さも感じていたそう。

「実は私も、初めて付き合った彼氏にすっぴんを見られた時に『眉毛ほとんどないじゃん! 怖いんだけど』と笑われたことが本当にショックで、それ以来誰かの前では絶対にすっぴんの時でも眉を描くようになってしまったので……隆介の気持ちが分かるなと思いました」

そして希美さんは「隆介の乳首は全然変じゃないし、その同僚の感覚がおかしいだけで今までの彼女たちもそんな風に思っているはずないよ。だからもうそんなことは気にしないで、私の前では肩の力を抜いて過ごしてほしいな」と声をかけました。

「そしたら隆介はすごく喜んで『ホッとしたらやっと味がしてきた! ここの料理美味しいね』と、とろけそうな笑顔で舌鼓を打っていて私もホッとすることができたんですよ」

わだかまりがなくなった2人の“その後”

そうやってわだかまりがなくなった2人は、より仲良くなることができたそう。

「それ以来、隆介は私に『このシャツはニップレスした方がいいかな?』と聞いてくるようになり、臨機応変に対応するようになりました。いくら普通の乳首でもあんまりに透けているのは、かっこいいものではないので」と微笑む希美さんなのでした。

<文・イラスト/鈴木詩子>

【鈴木詩子】
漫画家。『アックス』や奥様向け実話漫画誌を中心に活動中。好きなプロレスラーは棚橋弘至。
著書『女ヒエラルキー底辺少女』(青林工藝舎)が映画化。Twitter:@skippop
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