いや、それどころじゃなかった模様。“跳ねるクジラ”を大胆に描いたランドセルを背負う男の子が話題になっています。
現在は中1になったこの子のママ・Uplanetさん(@uplanet5)は、2024年6月にTikTokアカウントを開設。息子さんが絵を描く動画を主に発信しており、なかでも“跳ねるクジラ”が描き込まれたランドセルは大きな反響を呼びました。
なぜ、ランドセルに“跳ねるクジラ”を描き込んだのか? このランドセルで通学した気分は? 学校でどんな反応があった? ……など、気になる点をこの親子に聞いてみました。
気がついたら描いていた
――息子さんの作品を投稿するTikTokを開設した理由を教えてください。Uplanet:Instagramのアカウント(@nami.u.m)は3年くらい前からつくっていて、「せっかくだから、なにか上げようかな」と溜まっていた子どもたちの絵を公開したのが始まりです。最初は2人いる姉の絵も載せていましたが、一番下の子(息子さん)は描く量が多いので、TikTokのほう(@uplanet5)はすべて息子の絵の投稿になっています。
――なかでもインパクトがあったのは、小6のときのランドセルにクジラを描いた動画でした。なぜ、息子さんはまるでキャンパスみたいにランドセルに絵を描いたのでしょう?
Uplanet:気がついたら、白いペンで描いていたんです。学校や私から許可があったわけでもなく、いつの間にか描き始めてたので、「えっ?」と思いました。「大丈夫?」「学校で注意されない?」みたいな(笑)。
「悪いことしてるなあ」と思いつつ先生に見せつけた

息子さん:デカいから。
Uplanet:大きなものに憧れがあるのかもしれないです(笑)。
――このランドセルを背負って通学した気分は?
息子さん:やっちゃったな、みたいな。
――ハハハハ! やっちゃったな(笑)。
Uplanet:でも、このランドセルを背負って行った日、家に帰ってきてからは「褒められた」と喜んでいました。
息子さん:まあ、堂々としてたから。「悪いことしてるなあ」って思いつつ。
Uplanet:先生にも褒められたの?
息子さん:うん、見せつけた。
――見せつけて褒められた?
息子さん:うん。
家のロフトに無断で描いた絵がバレたらパパに怒られるかも……

――壁に描かれたクジラの絵の動画には驚きました(笑)。息子さんのために、壁に絵を描くことも許していらっしゃるんですね。
Uplanet:いや、許していないです(笑)。気がついたら描いてました。
――家の壁に絵を描くことは、今までに何度かあったんですか?
Uplanet:ちっちゃい頃は小さく鉛筆で描くくらいだったのですが、今回はクレヨンで大きく描いていたのでびっくりしました(笑)。テレビで壁画を見たらしく、「壁に大きく描きたい!」と思っちゃったみたいです。
――ただ、我が子があんな素敵な絵を描いていたら、「ちょっと……」とは思いつつも嬉しくないですか?
Uplanet:ただ、夫はまだ気づいていないんです。「パパに知られたら怒られるかもよ」とは言いました(笑)
――ヤバいですね……。これ、記事にしちゃって大丈夫ですか?
Uplanet:たぶん、大丈夫だと思います。ネット記事を通じて知ったら、もう諦めるでしょう(笑)。
傘、スウェット、水筒……絵を描くとお気に入りになる

Uplanet:傘や水筒、手提げ、下着、Tシャツ、エプロン、あとスウェット……。「古くて、捨てても構わないものなら描いてもいいよ」という感じで、少しダメージがあるものに描くみたいです。
「まあ、バレないかな」と

Uplanet:絵を描いたものはよく着ていますね。また、それをみんなから褒めてもらえるのが嬉しいんだと思います。
――ランドセルや水筒など「これに描いてみたいな」と思ったら深く考えず、すぐそこに描いちゃうのかな?
息子さん:一回は考えるんだけど、「まあ、バレないかな」みたいな。
――バレるって(笑)! でも、結果的にカッコよくなってるから問題なしだと思います!
息子さん:どうも!
これまで描いてきた「全部」がお気に入り

息子さん:「すごいね!」って、意外とみんな軽い反応で。
――これまで描いてきたなかで、特にお気に入りの作品は?
息子さん:う~ん、でも全部好きだから(笑)。
高い絵の具を惜しみなく使ってみたい

息子:一番の……なにがあるかな。ランドセルと、馬も好き。
――今後、こういう作品を描いてみたいという構想は?
息子さん:高い絵の具をそのままいっぱい“ベタ~”って。水とか使わないで、高い絵の具を惜しみなく。
――なるほど、油絵っぽい作品を描いてみたいということですね!
アートに興味を抱くようになった理由は?

Uplanet:ちっちゃい頃に陶芸の習い事をしていたので、その影響もあると思います。あと、私も絵はすごく好きで小さい頃から美術館に連れて行くことが多かったですし、おばあちゃんの趣味が水墨画なので、絵が身近だったというのもあるかもしれません。
――素晴らしいなと思ったのは、息子さんがいろいろな道具を使っている点です。絵の具、クレヨン、筆ペン、ボールペン、墨……さらには、スクラッチアート(真っ黒なスクラッチ面を専用のペンで削り、下から出てくるカラフルな線で絵を描くアート)にまで挑戦したり。これらは、彼が自分の感性でやっているんでしょうか?
Uplanet:ダイソーに行くのが好きなんです。画材とかも売られていて、「これ欲しい、あれが欲しい」といろんな表現を楽しみたいようです。一つの表現だけだと、つまらないんでしょうね。
「嫌にならず表現できれば、それは本人にとっても気持ちいいこと」

Uplanet:あとは、柴崎春通先生のいろんな色を使ったクレヨンアートや、ナオトキタムラ先生の動物の絵など、画家の方のYouTubeで見て影響を受けているのだと思います。
――気の早い質問ですが、息子さんが画家やデザイナーの方向に進んでいく可能性はありそうですか?
Uplanet:やりたい気持ちが強ければ、できるかもしれないですよね。ただ、こないだ『ブルーピリオド』(芸大・美大を目指す若者たちを描いた映画)を見ながら「ガチでやるのは大変な世界だね……」なんて話も2人でしたので(笑)。だから、趣味でもずっと描いていければいいなって思います。嫌にならず表現できれば、それは本人にとっても気持ちいいことなので。
――だからこそ、ランドセルが学校で褒められたのは息子さんにとってすごく良かったなと思いました。
Uplanet:そうですよね、下手したら怒られちゃうかもしれないので。絵ってすごくおもしろいものだし、本人がこれからも描き続けてくれたらうれしいなと思います。大きくなると周りの目や意見が気になり始めて自由に描けなくなっちゃうかも……と思うと、ちょっと寂しいですよね。
でも、皆さん褒めてくださって、それが本人にも自信になったようなのでありがたいなと思います。
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ランドセルに“跳ねるクジラ”を描いた息子さんは、この4月から中学生になっています。
美術の道は厳しいでしょうが、これからも絵は描き続けてほしいと願うばかり。TikTokを見ながら、彼の今後の人生を陰ながら応援したいと思います!
<取材・文/寺西ジャジューカ>