現在、主な既婚者マッチングアプリの累計会員数は100万人を超え、3年ほど前まで10億円規模だった市場も5倍の50億円市場まで成長しています。

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会社員・小山智也さん(仮名・45歳)も、既婚者マッチングアプリを通して婚外恋愛の道へと足を踏み出した一人です。


婚外恋愛を始めたのは「妻の更年期によるレス」

「5歳年上の妻とは、仕事で知り合いました。自立心が強く、バリバリ働くタイプの彼女は、たくましさもあって、きっと支え合えるパートナーになれると思いました」

結婚生活は順調でしたが、次第にふたりはすれ違っていったそうです。

「お互い仕事が大事だったので、子どもは最初から持たない方針でした。彼女は思考も論理的で仕事でも大手企業の管理職、人としてとても尊敬しています。仕事の相談はよくするのですが、そのせいか、どこかビジネスライクのような家庭ではありました」

妻が40歳を過ぎたころ、夫婦関係にさらなる転機が……。妻に更年期の症状が現れたのだとか。

「夜の営みを痛がるようになってしまいました。無理に求める気にはなれず、それまでも月に1回あるかないかではありましたが、完全なレスになりました。でも、正直、寂しさは積もりました。やっぱり、人間って誰かに求められたいじゃないですか。男としても、一人の人間としても」

何も変わらない日常に妙に焦りを感じていたところ、「セカンドパートナー(プラトニックな婚外関係)」の記事を見つけた小山さん。「自分のパートナーが欲しい」と感じた事をきっかけに、’20年頃に初めて既婚者専用マッチングアプリをスタートしました。

男性として、誰かに賞賛されたい、認められたい

「アプリでは、始めてすぐに手応えを感じて、20人以上と会いました。やはり女性優位の世界なので、最初はとにかくいろんな人に会ってみよう、と。
条件は場所くらい、顔写真も送らず、会ってからのお楽しみにしていました」

そんな中で出会ったのが、友美さん(仮名・当時40歳)だったと話します。

「体だけの関係が、半年ほど続いたかな。やがてお互いの生活が忙しくなり、自然と会う回数も減っていきました。深い話をしなくても、お互いにわかっていたんだと思います。『そろそろこの関係も潮時かな』って」

体の関係を軸にした割り切ったつながりですが、婚外恋愛という世界を知るうえで大きな経験となったとのこと。その後は3年くらい仕事が忙しく、「真面目期間」を過ごしていた小山さん。しかし、また婚外恋愛の世界に足を踏み入れることになります。

忙しく働いた結果、社会的な安定を得た一方で、心の中には言葉にできない空虚さが広がっていたと語ります。

「中高年の悩みというか、ミッドライフクライシスに陥りまして……。男性として、誰かに賞賛されたい、認められたい。でも、家庭でも職場でも、そういう感覚ってなかなか得られないんですよね。体だけじゃなく、心がすごく乏しかったんです。
そこで、仕事も落ち着いてきたので、最初とは別の既婚者マッチングアプリを始めてみました」

「1時間お茶だけで会う」心で繋がっている彼女

そして、現在お付き合いをしている派遣社員で2児の母・沙織さん(仮名・当時37歳)と出会ったそう。

「男として誰かに認められたい」不倫をやめられない45歳男性、妻の“まさかの行動”にも動じなかったワケ
小山さんと沙織さんのやり取り。日頃からLINEはマメに送り合っているそう
「彼女、すごく共感力が高いんです。人の心情の機微をつかむのがうまい。すぐに、居心地がいいなって思いました」

会う頻度は週に2回、多い月には10回以上。1時間くらいお茶をするだけのことも多いといいます。体の関係もあるけれど、月に2回程度なのだとか。

「沙織さんには子どもがいるし、僕も忙しいから、長時間一緒にいれるわけじゃない。でも、短い時間でもすごく癒されるんです。体のつながりもありますが、精神的なつながりの方が大きいですね。一緒にいて、“この人と再婚しても面白そうだな”って思うようにもなりました。メンタルが弱いところも、逆にかわいく思えちゃうんです」

実は沙織さんは、自身、過去の婚外恋愛で深く傷ついた経験を抱えていたようです。

「前の彼氏との別れも、誰にも言えず、一人で苦しんでたみたいです。自然と守ってあげたいという気持ちが芽生えています。
この年になると、ただ体の関係だけじゃ満たされない。心を支え合える相手がいるって、すごくありがたいなとしみじみ感じました」

「家庭には明らかにマイナス」離婚の話を出したことも

婚外恋愛は「家庭には明らかにマイナス」と小山さん。

「沙織さんにもらった香水を見つかってしまったり、妻にバレかけるたことも何回かあって。慌てて『会社に美容男子がいて……』って言い訳したら、『このブランド、30代女子が好きなのだよ』って返されました。わきが甘かったな、と思いましたね」

「男として誰かに認められたい」不倫をやめられない45歳男性、妻の“まさかの行動”にも動じなかったワケ
写真はイメージです
さらに、沙織さんとお茶をした時の明細も落としてしまったそうで……。

「『この時間、仕事してるって言ってなかったっけ?』って問い詰められて。 苦し紛れに“さみしくてデートクラブに行った”って言ったら、『本気の相手がいるよりかはマシだわ』って」

奥さんはプライドの高さから、あえて大きな問題にはしなかったと話します。そして、小山さんの突き放すような態度から、驚くような行動に出始めたのだとか。

「急に誘って来るようになったんです。セックスレスになり始めた当初であれば嬉しかったと思いますが、今となっては……。ただ、拒めば疑われてしまうので、受け入れています。表面上では夫婦仲はよく見えるかもしれませんが、たしかに亀裂は広がっています。若い頃のように『未来を一緒に作る』という感覚は、もうありませんね。
かわされてしまいましたが、一度、離婚の話も出したくらいです」

「心に空いたスペース」誰にでもある

沙織さんと出会うまでに小山さんは73人とマッチング、13人とデートをし、うち2回以上会ったのは4人。

「子どもがいない、年収も安定している、自由な時間がある、この3条件が婚外恋愛市場では、強力な武器になると実感しました」と自身を分析する一方で、アプリ特有の人間関係の脆さも感じたといいます。

「やり取りしてた十数人が、ある日を境にパタッと誰からも連絡こなくなるとか、普通にあるんですよ。1日返信しなかっただけで、ブロックされたこともありました。人間関係の希薄さっていうのかな。本当に、その時その時の気持ちに合うか合わないかだけ。いい意味でも悪い意味でも、割り切りがすごく効いてる世界でした。

結婚しても、仕事で成功しても、心のどこかに空いてるスペースって、たぶん誰にでもあると思うんです。それをどう埋めるか、どう折り合いをつけるか。今は、そういう時代なんじゃないかなって思ってます」

<取材・文/綾部まと>
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