大手インフラ企業で働いている安城利一さん(仮名・45歳)は、異業種交流会で知り合った妻と結婚して9年。
不妊治療を終えた後から完全なレスに
「私は基本的には一途な人間で、婚外恋愛についても後ろめたさや罪悪感を持っていました。社内にも不倫をしている同僚がいましたが、その人にも疑問を抱いていたくらいです」その考えが変わったのは、単身赴任による別居がスタートしてからとのこと。離れて暮らしていくうちに、妻は自分とは道を違えた存在だと、実感することが増えていったといいます。
「同い年の妻はバリキャリの専門職です。互いに仕事に熱中しているため、完全に双方が独身状態になっています。私が自宅に戻っても妻が出張をしていたりで、ここ3年は月に1回会うか会わないかですね」
物理的だけでなく、心の距離もすっかり開いてしまった夫婦。寂しさはもちろんありました。だからこそ、今後の人生を共に歩む、新しいパートナーの存在を求め始めたのです。しかし、そもそもそこまで夫婦の仲が冷え切ってしまったのはなぜでしょうか。
「不妊治療がきっかけです。5年ほど頑張ったのですが、子宝には恵まれず、お互いに仕事に没頭するようになりました。体の関係も不妊治療を終えた後から一切ありません」
思い描いていた家庭を築いている彼女に惹かれた
もともと安城さんは、ほっこりとした温かな家庭像を理想としていたのだそう。1か月半ほど前にマッチングアプリを通じて知り合った不倫相手は、1歳年下で結婚歴20年になる専業主婦の彩子さん(仮名・41歳)。
今は主にLINEでメッセージのやりとりをしながら愛を育んでいる様子。とはいえ毎日のように朝昼晩のやりとりをしているそうで、頻度はかなり高い。月2回のペースで直接会ってのデートもしているのだとか。
「私が彼女の居住エリアまで行っての日帰りデートです。子どもが学校から帰る時間には帰らないといけないので、もっぱらランチがメインですね。もちろん体の関係も含まれています」

婚外恋愛がきっかけで実家との交流も復活
彩子さんは現在、安城さんの実家にほど近いところに住んでいます。デートの度に地元に戻るようになったことで、実家に帰る口実ができたと安城さんは語っていました。
本来であれば夫婦で紡いでいくべきであった「心癒される関係」を、不倫相手に見出してしまった安城さん。
「向こうの家庭のこともあるので、すぐに再婚することは望んでいません。ただ、彼女の子どもが巣立ってから、自由になったタイミングで第二の人生を、とは思っていますよ」

もしも子どもができていたら……妻との関係は違っていた
では、安城さん自身は妻との婚姻関係をどうするつもりなのでしょう。その点を指摘すると、安城さんはバツが悪そうに苦笑いをしていました。「そもそも、離婚するしないの話し合いすらできていない状況なんです。互いに向き合うこともせずに、ずるずると書類上の夫婦を続けているだけ。妻がどう考えているのか、ひょっとしたら私と同じように別の男性がいるのか、私は全く知らないんですよ」

「もしも子どもができていたら……妻との関係は違っていたと思います。私も婚外恋愛なんて考えに至ることもなかったでしょうね」
時には、夫婦関係さえも変えてしまう不妊治療。夫婦の仲は修復可能なのか、それとも離婚の決断をするのか。安城さん自身もまだ分かっていないようです――。
<取材・文/もちづき千代子>
【もちづき千代子】
フリーライター。