今回は、美容エディター・ベストコスメ審査員の吉田瑞穂さんが、肌の老化の原因と対策、そして気軽に取り入れられる「肌管理」の方法を解説します。
肌をつくるのは遺伝と環境、そして加齢
「美肌になる方法を教えて」。周囲から何百回もいただくのがこの質問です。結論から言うと、美肌になるか否かはそもそもの肌質が問われ、肌質は「遺伝」します。次に気候やライフスタイルなどの「環境」が影響します。実際、人種間で表皮の厚さや水分量、メラニン量に差がありますし、肌のバリア機能や皮脂分泌量も遺伝が関与しています。そこに環境の影響が加わります。一年中雨か曇りの寒い地域と、カラカラに乾いた砂漠に近い場所では肌の水分量やメラニン量が違うことは想像がつくでしょう。
肌質は、遺伝と環境に大きく支配されますが、もうひとつ大きな要素が加わります。それは「加齢」です。年齢を重ねるにつれ、シワやたるみ、シミが現れてくるのは、個人差、人種差はあれど皆同じです。肌質自体を大きく変えることは難しいものの、加齢による肌の悩みはスキンケアや美容医療が介入する余地が大いにあります。
肌質に悩み続けた過去
2024年には50歳以上人口が過半数となると言われたこの日本で、私ももうすぐその仲間入りをします。私は肌質にまったく恵まれませんでした。思春期には顔中のニキビに悩まされ、20代に入ったと思ったらアトピー性皮膚炎の診断が下され、ようやく肌が落ち着いてきたと思ったらシミやたるみが。

私は大きく若返りたいとは思いません。ただ、小綺麗に老いたい。そのためにも人生100年時代と言われる今、スキンケアや美容医療による見た目のコントロールは必要だと考えます。
肌を美しく維持するコストは、人によっては高価に映るでしょう。価値観や優先順位の違いによるもので、どちらが正しいというものではありません。しかし、私は高価な宝石の輝きで肌を飾るよりも、肌そのものに投資したい。
実際、高いジュエリーは持っていませんし、投資対象は自分自身(美容と健康、そして学習や旅などの経験)。これが費用対効果としていちばん高いと実感しています。
「小綺麗に老いる」ために
肌管理をするにあたり、まずはその手立てを考えねばなりません。先ほども言ったように、私が目指していることはあくまでも「小綺麗に老いること」です。そのためには、肌はなぜ老化するのか、それを防ぐ手立ては何かを考える必要があります。さらには老化が肌のどこで起こるのかを知り、狙いを定めてアプローチすれば大きな成果を上げることができるでしょう。そして最も大切なことは続けられるかどうか。どんなに高価な化粧品を投入しても、痛みをともないながら効果的な治療を選択しても、継続できなければ意味がありません。それぞれ検証してみましょう。
なぜ肌は老化するのか? その要因と対策

① 光
② 炎症
③ 酸化
④ 糖化
⑤ 血行不良・代謝不良
⑥ 女性ホルモン・成長ホルモンの低下
⑦ 骨や筋肉の萎縮
ストッパーを意識したケア
先ほど挙げた「7つの老化トリガーとストッパー」を意識した、私が実践するケアを紹介します。私は面倒くさがりのうえ、合理主義者なのでスキンケアはミニマムに設計しています。
皮脂は油汚れなのでオイルクレンジングが適し、皮脂とたんぱく質が複合化した汚れである角栓はトリスヒドロキシメチルアミノメタン(通称・トリス。花王、カネボウ化粧品が応用)や、プロテアーゼ、リパーゼなどの酵素で落とすことができます。
私はポイントメイクが濃いめ。角栓ができやすく荒れやすい肌質のため、クレンジングは植物オイル主体の低刺激のオイルやバームタイプを使っています。ざらつきが目立つときは、酵素洗顔したり、角栓を圧出します。しっかりとすすいでも汚れが落ちきっていない気がしたら、洗顔を重ねるのではなく拭き取り化粧水で軽くなでたり、美容オイルを綿棒に浸して拭き取りピンポイントで落とします。
朝の洗顔料は泡立てるのが面倒なので、泡立てないクレイタイプか、泡で出るスプレーホイップタイプを使っています。
ビタミンC、トラネキサム酸、レチノールの三大成分がカギ
与えるスキンケアでは、①光、②炎症、③酸化、④糖化、⑤血行不良・代謝不良で挙げたトリガーを抑制する、ストッパー成分を網羅できていればよいと考えています。そのミニマムかつベターな成分が、ビタミンC、トラネキサム酸、レチノールの三大成分です。高濃度でのびが良いという理由で剤型は美容液がベストです。
たとえば、レチノールは角質の代謝を促進する機能がありますが、似た機能をもつグリコール酸や乳酸などを使うことがあります。その際、レチノールはお休みします。同じ機能をもつ成分を複数塗ることでその機能が強化され、肌負担になる可能性があるからです。
⑥女性ホルモン・成長ホルモンの低下、⑦骨や筋肉の萎縮は、スキンケアで著しい効果を求めるのは難しいでしょう。美容医療や内服治療が視野に入ってきます。⑥に関しては、私は先日初めてホルモン値検査を受けました。漢方を処方していただくところから始めようと考えています。⑦に関しては50代に入ってこめかみが気になってきたらフィラーを検討したいと思っています。
楽に続けられる「快楽習慣」美容に絞る
化粧品、美容医療以外では、老化の8割が光老化である以上、紫外線カットは通年行います。SPF値やPA値が高く、近赤外線やブルーライトまでカットする日焼け止めを通年塗りますが、物理的遮断が最も効果的なので、夏は日焼け止めに加えて小さな日傘を持ち歩き、サングラスをかけます。
インナーケアはサプリメントに頼りすぎず、脳が欲するものに従って食べることを重視しています。というのも、本能的に欲するものは、不足している栄養素であることが多いからです。過食するときを振り返ると、主に2つが原因であることが多いです。
ひとつはストレス。食べることがストレス解消の代償行為である場合は、別のリラックス方法を模索することを考えましょう。もうひとつはお付き合いです。ヒトは社会的動物である以上、食事を介しての社交は避けられません。私は会食がある場合は、朝・昼食を控えて調整します。ダイエットのためではなく、消化器の酷使を回避し、肌荒れを避けるためです。
野菜、たんぱく質の順に食べ、きちんと炭水化物もいただきます。
外食ではそこまでこだわりませんが、家では白砂糖の代わりにオリゴ糖、サラダ油の代わりに米油、ゴマ油、オリーブ油、食塩の代わりにミネラルの含まれた海塩を使っています。お酒はお付き合いもあるので適度に。肝臓に負担をかけないように(サプリメントを摂りすぎないのもそのため)水分をしっかりと摂ります。
会食以外は基本的に19時以降は固形物を食べないようにしています。これも消化器の負担を抑えるためです。
自分が心地よく、無理なく継続できる「運動」を
カナダのマクマスター大学(マーク・ターノポルスキー教授/小児科学)によれば、運動が肌の老化を食い止め、肌年齢を若返らせることに寄与していると発表しています。
また、軽い有酸素運動を取り入れるため、毎日1時間の散歩、週一回のテニスをしています。軽く脈が上がる程度の有酸素運動はミトコンドリアの活性化に役立ちます。温めケアは通年で、毎日必ず湯船に浸かるほか、サウナに定期的に入っています。
運動が大事なのは、実は顔も同様です。スキンケア、美顔器、美容医療も効果的ですが、顔のトレーニングはいつでもどこでもできて、リフトアップに寄与します。たっぷり保湿をし「口角を上げる」「頬を引き上げる」「あごを上げて舌を突き出す」「目をかまぼこ型に細めて眼輪筋を鍛える」「舌を上顎にべったりつける(ミューイング)」は思い出したらするようにしています。
あらゆることを試してはストレスを溜めて何度も挫折、遠回りした結果わかったことは、「効果的かつ効率的なのは、自分が心地よく、無理なく継続できることだけ」ということです。これは美容だけでなく、仕事や伴侶など人生の選択でも言えることかもしれませんね。
【吉田瑞穂】
よしだみずほ。2001年、大手通信キャリア勤務を経て美容記者・編集者として独立。数多くの雑誌、広告、会報誌の企画構成に携わる。ベストコスメ審査員。2004年より美容コンテンツ制作チームmuseを設立。編集、執筆活動と並行し製品開発やコピーライティング、PR 戦略を含む美容プロデューサーとして活動。70台超を所有する美顔器のスペシャリストとして多くのメディアに出演。プライベートは夫と娘、犬とともに東京に暮らす。趣味は、絵、旅、サウナ、都市伝説。初著書『美肌投資』好評発売中
【女子SPA!編集部】
大人女性のホンネに向き合う!をモットーに日々奮闘しています。メンバーはコチラ。X:@joshispa、Instagram:@joshispa