血管を構成する細胞がガン化する「血管肉腫」は、犬に見られやすい悪性腫瘍ですが、まれに猫も発症することもあります。
一般的に血管肉腫は予後があまりよくないと言われていますが、猫の血管肉腫は症例が少ないため、予後が不明。
愛猫くのくんと暮らすyunaさん(@___06413)も、そのひとり。くのくんは、2025年2月に血管肉腫であると診断されました。
突然、「網戸登り」を披露した成猫をお迎え
くのくんとの出会いは、2012年の秋。すでに成猫だったくのくんは突然、おうちに現れ、網戸越しに家族を見つめたり、“網戸登り”を披露したりするようになりました。その後は、頻繁に庭で姿を見るように。人間への警戒心はなく、家族は玄関を開けると家の中へ入ってくるほどの人懐っこさでした。
「家の中で、毛づくろいまでしていました。うちでは飼えないねと家族と話していたので、『入ったらダメよ~』と言いながらお外に出してバイバイする日々が数週間、続きました」
しかし、くのくんは諦めずに何度もアプローチ。その熱意に負け、家族はくのくんのお迎えを決意しました。
「お家に招き入れた瞬間、座布団の上で爆睡。何の違和感もなく、家族の一員になりました」
「完全室内飼い」のハードルに悩んで…
動物病院では、高齢ではない成猫であると判明。ただし、幼少期からあまりよくない環境で野良猫として育ってきた能性が高く、生まれつき瞬膜が少し出ているなど、目に障害がありました。ただ、重篤な病気は患っていなかったため、家族は安堵したと言います。
ところが、何度、奮闘するも室内飼い計画は失敗……。外に出られないと、家のドアを破壊する、意味もなく徘徊する、四六時中鳴き続ける、ご飯を食べなくなるなど、明らかにストレスを感じている行動が見られるようになったのです。
悩んだyunaさんは、獣医師に相談。すると、「もともと野良猫でしたら、お外でもいいんじゃないですか。周囲の環境もよく、元気よく過ごしているのであれば、それが一番」とのアドバイスをもらい、精神状態を守る暮らし方をさせようと決めました。

幸いおうちの周辺は車通りが少なく、自然豊か。ご近所さんは事情を説明すると理解してくれ、撫でたり名前を呼んだりと、くのくんをかわいがってくれています。

突然できた「左目頭のできもの」から出血が止まらなくなった
穏やかな日々が一変したのは、2024年10月。突然、くのくんの左目頭に赤いできものができました。すぐに近所の動物病院へ行くも、「見たことがない症状であるため、病気ではないと思う」と言われ、目薬を点して様子見することに。ところが、できものは次第に大きくなっていったため、yunaさんは別の動物病院へ行きました。

だが、12月下旬、できものはさらに大きくなり、出血も見られるようになりました。出血する頻度は日に日に短くなっていき、2025年1月には拭いても血が湧き出てくるほどに……。

左目頭のできものは“血管肉腫”! 手術を乗り越えた現在は…?
採取した組織を検査した結果、左目頭のできものは「血管肉腫」であると判明。腫瘍が深いところまで根づいていたことや発症部位が目であったことから、腫瘍を完全に切除することはできませんでした。「でも、見た目は血管肉腫の発症前のようになりました。
現在は月1通院し、レントゲン検査。家族は、これまで通りの生活を続けさせてあげることで、くのくんがストレスを溜め込まないように配慮しています。

血管肉腫は早期発見が難しく、腫瘍が破裂・出血し、危機的な状況になって初めて判明することも多い病。“一瞬の迷い”が命取りとなるのが、血管肉腫の恐ろしさです。
だからこそ、yunaさんは飼い主側が「何かおかしい」と直感したら、まずはすぐ動物病院で相談してほしいと訴えます。

血管肉腫は発症部位によっては、試験的開腹(※病気を診断するために行われる開腹手術)をしないと組織検査ができない場合もあり、飼い主側は葛藤することもありますが、できものが本当に腫瘍なのか、はたまた悪性か良性なのかを知ることは今後の治療法を決める上で重要になってきます。

<取材・文/愛玩動物飼養管理士・古川諭香>
【古川諭香】
愛玩動物飼養管理士・キャットケアスペシャリスト。3匹の愛猫と生活中の猫バカライター。