「20代後半で、髪の毛の半分以上が白髪になりました」。愛くるしい笑顔の姫さんは、現在52歳。
SNS総フォロワー数22万人の人気インフルエンサーです。

奇跡の52歳が語る「20代から白髪です」。イジメと心の病で白...の画像はこちら >>
配信しているのは、美容や日々のコーディネート、夫婦の日常、等々。なかでも支持を集めているのが、トレードマークの白髪スタイル。色を抜いているのではなく、地毛が白髪なのです。

52歳、今がとても楽しい

その姫さんが、6月に初のフォトエッセイ『52歳、今ようやく人生が始まるの』(KADOKAWA)を出版しました。

奇跡の52歳が語る「20代から白髪です」。イジメと心の病で白くなった髪を、誇りに思えるまで
『52歳、今ようやく人生が始まるの』(KADOKAWA)姫(著)
 今でこそファッショナブルに人生を謳歌している姫さんですが、20代で重度のパニック障害と不安障害を発症したそうです。病気が原因で髪のほとんどが白髪になってしまい、「20代後半から50歳まで、光の当たらない真っ暗闇の中で、ただ生きているだけのような人生」を送ってきたといいます。

壮絶なイジメや自己否定を克服し、姫さんはどう生まれ変わったのでしょうか。

希望を絶たれた日々

短大時代にモデルにスカウトされ、芸能活動の経験もある姫さん。モデル業を引退したあと、居心地のよかった職場で、突如イジメにあってしまいます。

でも、辞めるのは悔しくて頑張ってしまったのです。頑張り過ぎて、病気になってしまうほど。

夜眠れない。呼吸がうまくできない。
職場の全員から無視され、けいれんで倒れても誰にも助けてもらえない日々。精神科で「パニック障害」「不安障害」と診断されても、姫さんが20代の当時はまだ病気の認知度も低く、「甘え」と見なされることも多かったそうです。

病気のことをご両親に告げるのも、相当つらかったに違いありません。いつ症状が出るかわからず、外出もままならない、何よりも心身が苦しい。その思いを誰にも理解されないのですから、孤独感もつのってくるでしょう。

医師から処方された複数の薬も、効果の強いものばかり。回復の兆しは見えず、薬だけが増えていく。やがて、髪の毛が半分以上白髪になってしまいました。

コンプレックスを克服できたわけ

奇跡の52歳が語る「20代から白髪です」。イジメと心の病で白くなった髪を、誇りに思えるまで
52歳、今ようやく人生が始まるの
自分の気持ちを吐き出すために始めた詩作が、音楽活動につながり、やがて夫となる「殿ちん」と出会います。殿ちんのおかげで少しずつ症状は改善しますが、状況は一進一退。白髪もそのままで、当時は隠すことに必死になっていました。

ブリーチに金髪。コンプレックスをカバーするための工夫が、「素敵ですね」という誉め言葉となって返ってきたのは、姫さんにとっても意外だったのかもしれません。
しかしその驚きがうれしさに変わり、姫さんは気づきを得ました。「コンプレックスだと思っていたことが、『特別な私』を演出する強みになった」と。

人には皆、何かしらコンプレックスがあると思います。どうしたってマイナスにとらえてしまいますが、他人様の目には素敵に映っているかもしれないのです。病気も、身体的な特徴も、つらさや苦しみと対峙して、努力を重ねた末の産物だとしたら。全部をまるごと愛してあげたくなりませんか。

そこから本当に輝く笑顔と、人生が幕をあけるのではないでしょうか。

白髪でよかった、そう思えるまで

奇跡の52歳が語る「20代から白髪です」。イジメと心の病で白くなった髪を、誇りに思えるまで
52歳、今ようやく人生が始まるの
20代は、まだ白髪とは無縁な年代。ブリーチや金髪も、おしゃれとして楽しむのが一般的ですが、姫さんの場合は異なりました。

「白髪になってしまった自分の髪の毛が嫌いすぎて」という悲しい本音が根底にあって、しかも毎日、鏡で悲しさと見つめ合わなくてはなりません。

毎月のように白髪染めをして、頭皮もボロボロになりました。紆余曲折を経て、「頭皮につかないよう黒が残っていた部分もブリーチして真っ白に。そこから金髪にするように」という美容師さんの提案を受け入れます。


「透けるような金髪」は美しくもありましたが、姫さんご自身は好きになれなかったそうです。

白髪をカミングアウトしたのは、コロナ禍がきっかけでした。久しぶりに美容院に行ってブリーチした時、髪の毛が半分ほど切れてしまったのです。苦楽を共にした髪の毛が、限界を迎えてしまったのでしょうか。「白髪の地毛で生きていくしかない状況」を、姫さんはどう受け止めたのでしょう。

「もう隠したりごまかしたりしなくていいんだ」というストレスから、姫さんは解放されたといいます。正真正銘、まっさらな自分で生きられる。解放感と清々しさは、本書に掲載されている写真で、あふれるほど伝わってきますよね。

私だから語れること

奇跡の52歳が語る「20代から白髪です」。イジメと心の病で白くなった髪を、誇りに思えるまで
52歳、今ようやく人生が始まるの
「私自身、まだ病気が完治したわけではなく、落ち込むことも泣いてしまうこともあります」という姫さんですが、「人生を、自分自身を変えられるのは自分しかいない」と考えられるようになったのは、「殿ちんとInstagramのおかげ」でした。

姫さんだから。特別だから。私なんか無理。


そう思う気持ちも、怖気づく気持ちもわかります。でも、行動する前からあきらめるのはもったいない。姫さんも葛藤を抱えて、悩み抜いて、一歩を踏み出したのです。誰しもが生きていく中で、つらさ、苦しさ、悲しさを乗り越えているはず。そこから自分なりに編み出したこたえは、必ず誰かの助けになります。

何かをやりたい、発信したいと思ったら、少しずつ前進してみませんか。コンプレックスもすべて、輝く歴史になって、あなただけの誇りになるのだから。

屈託のない自由な姫さんの写真や、きらきら光る言葉からは、そんなメッセージが聞こえてくるのです。

<文/森美樹 写真/『52歳、今ようやく人生が始まるの』より>

【森美樹】
小説家、タロット占い師。第12回「R-18文学賞」読者賞受賞。同作を含む『主婦病』(新潮社)、『私の裸』、『母親病』(新潮社)、『神様たち』(光文社)、『わたしのいけない世界』(祥伝社)を上梓。東京タワーにてタロット占い鑑定を行っている。
X:@morimikixxx
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