「こんな広告、子どもに見せたくない」──そんな多くの声がきっかけとなり、先月、大きな前進が報じられました。「日本電子書店連合(JEBA)」に加盟する電子コミック大手11社が、全年齢向けのサイトで性行為や裸、胸などが描写された電子コミックの広告を出稿しないことに4月末に合意したというものです(2025年6月4日、読売新聞オンライン)。


このニュースにSNS上では「やっと動いてくれた」「安心できる環境に一歩近づいた」といった喜びの声が多数見られました。

もう我慢しない! 勝手に出てくる“過激なエロ広告”、本気で減...の画像はこちら >>
とはいえ、ホッとしたのもつかの間。日本電子書店連合に加盟していない業者や、電子コミック以外の分野では、まだ過激な広告が見られるのが現状です。

今回の合意は、多くの苦情を受けて、JARO(公益社団法人 日本広告審査機構)が日本電子書店連合に伝えたことが大きな後押しとなりました。インターネット上に残る性的広告の問題について、私たちにできることは何でしょうか?

JAROの事務局長・川名周さんに、苦情をより効果的に伝えるためのポイントや、JAROの役割についてお話を聞きました。

性的広告への苦情は「スクリーンショット」も添えて

性的な表現を含む広告の出稿に関する「日本電子書店連合」の決定が6月4日に報じられたのをきっかけに、広告についての意見や苦情を受け付けるJAROの役割が、広く世に知られることに。以降、JAROへ寄せられる苦情は性的広告に関する苦情を含め増加しているといいます。

私たちが広告についての「声」をJAROに送るには、電話・FAXや郵送の他に、JAROのサイト内にある「広告みんなの声 送信フォーム」を使うこともできます。

もう我慢しない! 勝手に出てくる“過激なエロ広告”、本気で減らす「正しい伝え方」とは
パソコンを触る女性
問題となっている「インターネット上の性的な広告」に関する苦情をJAROに送る際には、どんなことを意識するとよいのでしょうか。

可能であれば、表示された広告のスクリーンショットを撮って、送信フォームに添付していただけると、どの広告に関する苦情かが明確になります

JAROは広告をモニタリングしているわけではなく、寄せられた声をもとに対応しています。そのため、いつ・どこで見た広告か、また広告主がどこかなどの情報があると、スムーズに広告主へ伝えることができます。

インターネットのバナー広告などは、次に同じサイトを見ても同じ広告が表示されるとは限りません。
そのため、目にしたときの情報を記録しておいていただけると、的確な対応につながりやすくなります」(川名さん、以下「」内同)

JAROの「広告みんなの声 送信フォーム」には、広告の画像を3つまで添付することができます。

今後の課題は? 対応が難しい企業も

性的な広告に関して、今後はどんな課題が残されているのでしょうか。

「今回は、日本電子書店連合が傘下の11社に苦情について通知し、全年齢向けサイトでの出稿の一部停止を決定してくださいました。一方で、連合に加盟していない電子コミック企業に関しては、今もなお苦情が寄せられています。今後は、非加盟企業の対応が大きな課題になってくると思います

JAROでは広告主へ苦情を情報提供し、問題が業界全体にわたる場合は業界団体にも伝えます。また、広告主だけではなく、広告配信プラットフォームなどの媒体側と、連携・協力することもあります。ですが、JAROが民間の自主規制団体である以上、「強制力を持って是正を命じる」ということはできません。苦情の情報提供を受けてどう判断するかは、広告主次第だといいます。

「業界団体が『読売新聞の報道にあったような性的広告は全年齢向けサイトには出稿しない』という取り決めをしても、その団体に加盟していない企業が広告を出し続けているという問題が残ります。

特に海外企業の場合、苦情を伝えても返答がない、あるいは『日本法人に広告に関する権限がない』と対応を断られるケースも少なくありません。その場合は、一方的に苦情について伝えるだけで終わってしまうこともあります」

適正な出稿をする事業者がしわ寄せを受けないように

これからのJAROの役割について、川名さんはこう話します。

もう我慢しない! 勝手に出てくる“過激なエロ広告”、本気で減らす「正しい伝え方」とは
スマホの広告
「今の状況が続けば、広告を見たくないと感じる人が広告全体をブロックしたり、広告を表示させないような有料サービスを選ぶようになるかもしれません。そのような状況は広告業界にとっても、産業界全体にとって望ましいことではありません

我々は民間の自主規制団体として活動をしています。
もし、性的な広告に関する状況がこのまま改善されなければ、自主規制では収まらず、将来的には国によって公的な規制が導入される可能性も出てきます。

そのようなことにならないように、業界が力を合わせて自主規制をしていくことが大切だと考えています。適正な出稿をしている事業者がしわ寄せを受けるような状況にならないよう、これまで通り活動を続けていきます」

「性的で不快な広告」は医療機関や健康食品でも

「また、今回は電子コミックと、オンラインゲームの業界団体に苦情についてお話をしましたが、性的な表現の広告が問題視されている業界は、医院・病院や健康食品(保健機能食品以外)など他にもあります。

例えば、医療機関の動画広告で『男性器の名前を連呼している』、健康食品の広告で『女性の裸や下着姿、男性器のイラストなどが表示された』というご意見がありました。これらについても広告主に情報提供を行いました。引き続き、情報提供をしていきたいと思っています」

もう我慢しない! 勝手に出てくる“過激なエロ広告”、本気で減らす「正しい伝え方」とは
コメント
今回は、消費者からの苦情が積み重なったことが、性的な広告に関する問題を動かす第一歩となりました。健全な環境を守るためには、私たち一人ひとりが「ちょっと気になるな」「これって大丈夫?」と思った際に、しっかりと「声」を届けていくことが大切なのかもしれません。

<取材・文/都田ミツコ>

【都田ミツコ】
ライター、編集者。1982年生まれ。編集プロダクション勤務を経てフリーランスに。主に子育て、教育、女性のキャリア、などをテーマに企業や専門家、著名人インタビューを行う。「日経xwoman」「女子SPA!」「東洋経済オンライン」などで執筆。

編集部おすすめ