厚生労働省が2025年6月4日に発表した人口動態統計によると、2024年に生まれた子どもの数は68万6061人だったそうです。一人の女性が生涯に産む子どもの数を示す合計特殊出生率は1.15で、過去最低を更新。
つまり、今は超少子化の時代です。

ヒヤッ!電車から降りようとしたらベビーカーから赤ちゃんが…「...の画像はこちら >>
 だからというわけではないですが、ベビーカーの親子がいたら守ってあげたいし、困っていることがあったら助けてあげたい! そんななか、ヒヤっとする場面を目撃しました。

降車するベビーカーから子どもが滑り落ちた

 混雑する電車から降りようと、ベビーカーを押すママ。しかしホームに降りる際、車体が前に傾きすぎて子どもが滑り落ちる……という事故に遭遇したのです。幸い、その子に怪我はなかったようでホッとしましたが、だとしてもあれは危なかった。

 そういえば、かつて井の頭線沿線の駅で、あるポスターをよく見かけたものです。

ヒヤッ!電車から降りようとしたらベビーカーから赤ちゃんが…「安全な降り方」呼びかける京王電鉄を取材
京王電鉄 啓発ポスター
「車掌目線で失礼します。ベビーカーの前輪がサッて出てくるの・・・実はヒヤッ!とするんです。」

「ベビーカーは前から降りると脱輪する危険があります!」

「前輪から降りると車掌から見づらく発見が遅れることも!」

「電車を降りるときは保護者の方が先に降りると安心安全です。」

 これらの文章とともに、ベビーカーの前輪が電車とホームの隙間に挟まった写真が載ったポスター。覚えていますか? 2021年ごろ、かなり話題になりました。

 あれから4年が経過しましたが、ベビーカーをうしろ向きにし、後輪から降りる“バック降車”は今もそれほど浸透していない印象です。

 果たして、現在も“バック降車”の啓蒙は行われているのでしょうか? そして、ベビーカーを押す親子にとって“バック降車”は最も安全な降車方法なのでしょうか? そもそも、ベビーカーはどのように電車から降りたら安全なのでしょう? 気になる点について、京王電鉄に取材しました。

4年前、“ベビーカーの降り方”のポスターをつくったきっかけ

ヒヤッ!電車から降りようとしたらベビーカーから赤ちゃんが…「安全な降り方」呼びかける京王電鉄を取材
地下鉄 ベビーカー
――約4年前、ベビーカーを利用する人たちに注意喚起を促すポスターを作ったきっかけを教えてください。

「井の頭線の乗務員で構成されている、主体的に業務改善や提案の取り組みを行うグループが発案しました。ご利用されるお客さまがより安全・快適に乗車できるよう検討をした結果、本ポスターの制作に至りました。
子育て世代の乗務員から、『ベビーカーの降り方』について話題があがったことがきっかけです。

 ベビーカーをご利用のお客さまが前輪から降車する様子が多く見られたため、より安全にご利用いただくための活動として、利用方法(降り方)の一つである『うしろから降りる』という方法を提案しました」(京王電鉄・広報担当者、以下同)

――ベビーカーの事故・転倒の事例は確認されていますか?

「お客さまが降車される際、ベビーカーの前輪が車両とホームの隙間に挟まってしまう事例があります」

 ベビーカーを押す形で前向きに降車し、前輪をホームに引っ掛けてしまうママやパパはたまに見ます。そうなると、ベビーカーが転倒してしまう可能性もあるでしょう。結果、前のめりになって投げ出されるのは乗っている人……つまり、子どもなわけです。それは、絶対に避けたい!

ベビーカーはどのように電車から降りたら安全なのか

ヒヤッ!電車から降りようとしたらベビーカーから赤ちゃんが…「安全な降り方」呼びかける京王電鉄を取材
ベビーカー・電車
――改めての質問ですが、ベビーカーを利用している場合、どう降りたら安全なのでしょうか?

「電車の降車に限らず、ベビーカーをご利用時に段差から降りる際の手順として、以下の流れをご案内しております」

①うしろ向きになって後輪から降りる
②前輪を浮かせながらうしろに下がる
③前輪を着地させる

「この3段階の手順が、ベビーカーに乗られたお子さまの転落の危険性を減らす一つの方法だと考えています」

――でも、電車内が混雑しているときはどうすればいいのでしょう? ベビーカーの向きを変え、うしろから降りる方法がスペース的に難しい状況もありますが……。

「ベビーカーご利用のお客さまが電車をご利用の際は、ご本人と周囲の方のお互いの配慮や理解が必要です。混雑時に限らず乗り降りの際には、ご利用される方同士でお声掛けをいただければと思います」

――要するに、ベビーカーを利用していない周囲の人も“バック降車”の重要性は知っておいたほうがいいのかもしれませんね。

――ところで、京王電鉄ではポスター等で啓蒙していた“バック降車”をベストな方法と認識しているのでしょうか?

「ベビーカーの前輪から降車することが必ず危険に直結するという注意喚起ではなく、状況によってより安全にご利用いただくための活動として、降り方の一つである『うしろから降りる』という方法を提案しています。

車内・ホーム上の混雑具合や駅の形状、ベビーカーをご使用のお客さまご自身の状態に応じて、安全な降車方法をお選びいただければと思います」

現在は、車掌が任意の車内アナウンスで“バック降車”を啓蒙中

ヒヤッ!電車から降りようとしたらベビーカーから赤ちゃんが…「安全な降り方」呼びかける京王電鉄を取材
電車・駅員
 ベビーカーを利用している親子にとって、「うしろから降りる」は安全な降り方の一つです。しかし、あまり浸透していない印象があるのも事実。4年前に話題になった注意喚起のポスターも、今はめっきり見かけません。

――現在も、京王電鉄では降車方法「うしろから降りる」の啓蒙活動は行っているのでしょうか?

「ポスターの掲出は行っておりませんが、井の頭線内でベビーカーをご利用されるお客さまが多い土休日の時間帯においては、車掌がお客さまの状況を鑑みて任意で車内アナウンスを行っております」

 どんなアナウンスが行われているかというと、以下の文言です。

「ベビーカーをご利用のお客さまにお願いいたします。
ベビーカーで電車に乗り降りをする際は、お子さまが前のめりにならないよう、乗る時は前向き、降りる時はうしろ向きでご利用くださいますとより安全です。お子さまの安全と事故防止にご協力をお願いいたします」

 筆者も、このアナウンスは聴いたことがあります。でも、乗客の反応を見るとほとんどの人は聴き逃している気がする……。

 可能ならば今一度、注意喚起のポスターを掲出しても良いと思います。さらに、ベビーカーの販売店が購入者に「うしろから降りる」の降車法を教えてあげるぐらいでもいい気がします。

 ベビーカーを前向きにして歩いているということは、親より子どもを先に行かせているということ。危機管理の徹底を心がけたいです。

<取材・文/寺西ジャジューカ>
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