今回は、ひょんなことから恐ろしい目に遭ってしまった女性のエピソードをご紹介しましょう。
神社で夏祭りを楽しんでいたら尿意が
城田加奈子さん(仮名・30歳/契約社員)は、彼氏の悟史さん(仮名・29歳/メーカー勤務)とお付き合いを始めて2年目。ある休日、悟史さんと街ぶらデートを楽しんでいたらちょうど神社で夏祭りをやっていました。「ホント偶然だったのですが、つい浴衣姿の人々や盆踊りにわくわくしてしまい、急きょ出店でイカ焼きや焼きそばを買って夕食にすることにしたんです」
お祭りの楽しい雰囲気につられたふたりはビールも進んでしまい、ほろ酔い状態で射的やヨーヨー釣りなどを楽しんでいると、加奈子さんはトイレに行きたくなってしまいました。
「ですが、トイレには長蛇の列ができていて。その時にふと、さっき前を通った公園に公衆トイレがあったのを思い出して、慌ててそっちに向かったんですよ」
切羽詰まっていた加奈子さんは、悟史さんにLINEで公園のトイレまで行ってくる旨を伝え、早歩きでトイレに入りました。
鍵が開かない! 公衆トイレに閉じ込められて
「そして無事に用を足してホッとしながらトイレのドアを開けようとしたら……さっき普通に締めたはずの鍵が、固くなっているんです。押しても引いてもどうやっても開かなくなってしまって、血の気が引きましたね」
「怖くてたまらなくなり、すぐに悟史に電話をしたのですが、なぜか何度かけてもブツッと切れてしまって。助けてとメッセージも送りましたが悟史からなんの連絡も返ってこず不安な気持ちばかりがどんどん膨らんでいったんです」
焦りと暑さで汗だくになり、消耗する一方
加奈子さんはなんとか鍵を開けようと、手が痛くなるほど力を入れて開錠を試みましたが、焦りと真夏の暑さで汗だくになり、消耗する一方でした。
するとその時「加奈子? いるの?」と悟史さんの声がしました。
やっと出られると思いきや……?
「やっと私を探しにきてくれたんだ! と嬉しくなり『悟史! 閉じ込められちゃったの! 開けて!』と助けを求めたんですが、なぜか何度叫んでも悟史にはまるで聞こえていないようなんです。『いないの? どこ?』と声がどんどん遠のいていってしまい……これは普通じゃないぞと全身鳥肌が立ちゾクゾクが止まらなくて」
ドアの上の部分は空いているし、ドア越しにこんな大声を出しているのに聞こえないなんてどう考えてもあり得ないことでした。加奈子さんは「もしかしてこれは霊現象的な何かかも?」と恐怖でパニック状態になり、たまらずドアに体当たりしました。
するとその物音で「え、やっぱり加奈子いるの?」と悟史さんがようやく気がついてくれたそう。
「やっと悟史と話をすることができ、改めて鍵を触ってみたらさっきまであんなに固くてどうやっても動かなかったのに、スッと簡単に開いて拍子抜けしましたね」
彼氏も加奈子さんに何度も電話をかけていた
悟史さんに聞くと、加奈子さんからの着信は一度もなく、メッセージも遅れてまとめて届いていました。悟史さんも加奈子さんに何度も電話をしたそうですが、毎回ブツッと切れてしまったそう。
加奈子さんはただ「本当に怖い思いをして大変だったね」と労ってほしかったし、100歩譲ってたとえ夢だったとしても、親身になって話を聞いてほしいと思いました。
「耐えられない」彼氏との別れを決意した理由
「これからも何か説明のつかない出来事や、悟史にとって解せないことが起こった時に、こうやってなあなあにされるのかと思ったら耐えられなくて。結局別れてしまったんですよね」悟史さんは心霊やオカルト的な現象をまるで信じておらずむしろ毛嫌いしていたため、激しく衝突してしまったのだそう。
「私もそこまで心霊現象を信じる方ではなかったのですが、あの経験はちょっと、ただの偶然では片付けられなくて。真実を知るのが怖くてあの公園とトイレのことを検索することすらできずにいるんですよ」とため息をつく加奈子さんなのでした。
<文・イラスト/鈴木詩子>
【鈴木詩子】
漫画家。『アックス』や奥様向け実話漫画誌を中心に活動中。好きなプロレスラーは棚橋弘至。著書『女ヒエラルキー底辺少女』(青林工藝舎)が映画化。