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現在、大きな社会問題になっている中高年のひきこもり。内閣府は今年3月、「こども・若者の意識と生活に関する調査(令和4年度)」を発表。15~64歳のひきこもりが推計146万人だと発表しました。
推計115万人だった19年の前回調査からわずか4年で30万人増えたことも驚きですが、それ以上に衝撃的だったのが女性のひきこもりの割合が大幅に増えたこと。特に40~64歳の中高年では女性のひきこもりが52.3%と男性を上回っていたのです。
一人娘はパワハラで退職後、8年間ひきこもったまま
札幌在住の主婦・三村瑛子さん(仮名・71歳)は、3歳年上の夫と先日40歳を迎えた一人娘の絵美さん(仮名)と3人暮らし。しかし、もうかれこれ8年近く仕事をしておらず、家に引きこもったままだと言います。「以前はコールセンターで働いていましたが上司からパワハラを受けていたらしく、何の相談もなしに会社を辞めてしまったんです。
『しばらく休んでからまた働くから」と話していたのですが、半年経っても1年経っても仕事を探してる気配はありませんでした。私や主人がもう少し尻を叩いてやればよかったのかもしれませんが、何も言わずに見守ることを選んでしまったんです。結果、娘は未だにひきこもったまま。私たち夫婦の判断は間違いだったのでしょうか……」
本人にも問題意識はあるが、一歩踏み出す勇気がない
ただし、いくら娘でもとっくに成人している社会人で子供のようにあれこれ言うわけにもいきません。瑛子さんもそのことは理解していますが、娘さんはすでに40代。まだ先のことだと思っていた8050問題(80代の親が50代の子の生活を支え、経済的・精神的に困窮する社会問題)はもはや他人事では済まされない状況です。
正社員は無理でも、再び働けるようになってほしい
一番ひどかったころはお風呂とトイレ以外は自室にこもり、食事も部屋の前に置いていたとか。これに比べればかなりの前進ですが、ここからさらに一歩を踏み出すことができずにいるようです。ちなみに娘の絵美さんは、10代のころにもひきこもりを経験。中学時代、いじめが原因で不登校となり、なんとか高校には進学しますがほとんど学校には通えず1年生で中退。改めて通信制高校に入り直しますが卒業後に進学した専門学校も途中で辞めてしまったそうです。
社会人になってからはアパレル販売員の仕事をずっと続けていたものの、店舗の閉鎖という不運もあって30歳のときに退職。次に就いた仕事が問題のコールセンターでした。

社会復帰を考えた場合、やはり8年という職歴の空白期間は大きなネック。現在は各地でひきこもりの方を対象とした就労支援があるとはいえ万全はいえません。
娘には幸せになってほしいが、待ち受けるのは厳しい現実ばかり
「娘とは他愛のない世間話はできるけど、本当にしなければいけない話はまったくできていません。私も夫もいつまで生きられるかわかりませんし、一人っ子だから頼れる兄弟もいない。40歳という年齢を考えると結婚も現実的にはかなり難しいでしょう。主人は娘が将来なるべく困らないようにと74歳の今も体に鞭打って駐車場の警備員の仕事をしています。老後は旅行でもしながらのんびり暮らしたいと思っていたのですが、どうやらそれは無理そうです」
親も本人もこのままではダメだと理解しているようですが、一方でどうすればいいのか身動きが取れなくなっているのも事実です。
今年5月、厚生労働省は高齢化や長期化が進むひきこもり問題に対処するため、初のマニュアルを策定する方針を固めました。実態が見えにくいからこそ国や自治体が主導して支援の枠組みを作っていくことが必要なのかもしれません。
<取材・文/トシタカマサ>
【トシタカマサ】
ビジネスや旅行、サブカルなど幅広いジャンルを扱うフリーライター。リサーチャーとしても活動しており、大好物は一般男女のスカッと話やトンデモエピソード。4年前から東京と地方の二拠点生活を満喫中。